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初めての夜と初めての弱音

明けましておめでとうございます!

今年も本作品をどうかよろしくお願いいたします。

 楽しかった夕食もおわり、食べ終わった食器やグラスなどの後片付けを分担して終わらしたスレイは、談話室でリーフと一緒に食後のお茶をしながら明日からの予定を確認していた。


「じゃあ、明日は一日暇にするのですね」

「まだ色々と買うものも有るし、来たばっかりの国だから街の中を探索したいからね」

「そうですね。この部屋ももう少し物が欲しいですね」


 一応談話室にしているこの部屋だが、今あるのはソファーと小さいテーブルだけなので観葉植物や置き時計などがほしいところだ。

 お茶を飲みながらこの部屋に合いそうな家具はなにがいいか話しているスレイとリーフ、そこに着替えとタオルを抱えたノクトがやってきた。


「リーフお姉さん、お風呂が沸きましたのでみんなで一緒に入りましょう」

「あっ、はい。用意したらすぐに向かいますので、先に入っていてください」


 ルンルンっとスキップしながら風呂場に向かっていくノクトを見送り、残りのお茶を飲み干したリーフは空いたカップを片付けようとする。


「片付けはやっておくから、先に行きなよ」

「ありがとうございます」

「良いよ………あっ、片付け終わったら自分の部屋にいるから」

「わかりました。では、行ってきます」


 リーフを見送り空いたカップをキッチンを洗ったスレイは、自分のカップに新しいお茶を入れて自分の部屋に戻った。


 部屋に戻ったスレイは本をみんなが出るのを待っていた。

 しばらく本を読んでいたスレイはかなりの時間が経ったと思い懐から懐中時計を取り出し時間確認する。


「だいたい一時間位か」


 どこの世界でも女の子は風呂が長いのだと思いながらも本の文字に視線を落とすと、部屋の扉がノックされた。スレイが返事をすると、扉越しで声が帰ってきた。


「スレイくん、私たちもうあがったから次どうぞ」

「あぁ、わかった。………ってかユフィ、なんで扉越し?部屋に入りゃいいのに?」

「ううん。大丈夫だよ~。それじゃあ、私は行くからゆっくり入ってきてね~」


 それだけを言い残してユフィは去っていった。

 なんだかユフィが急いで扉の前から去っていった気がしたスレイは、気になって外に出てみたがユフィの姿はもうそこにはなかった。


「えっ、もういない」


 いくらなんでもいなくなるのが早いと思ったスレイは、もしかしたら転移魔法でも使ったかも知れない。

 なぜさっさと立ち去ったのかはあとで聞いてみることにしようと思いながら風呂場に行ったスレイは、いつものようにライアの侵入撃退用のアラクネとユフィから借りてきたゲートシェルを配備しておく。

 ゆっくりと湯船に使っていたのだがいつもならば入ってすぐにライアが襲撃してくるはずなのだが、今日に限ってその襲撃もなかった。


「なんか、逆に落ち着かないな」


 もしかしてどこかに隠れてる?そう思ったスレイがアラクネを操作して脱衣徐の中を調べてみるが、やはりどこにもいなかった。

 ユフィたちがライアを止めてくれてるのか思い、みんなに感謝しながら久しぶりにゆっくりと湯船に浸かることが出来た。


「あぁ~、さっぱりした」


 風呂からあがり服を着たスレイは濡れたままの髪は纏めずに部屋に戻ると、扉に一枚の張り紙がしてあることに気がついた。

 紙を剥がして見ると字はライアの文字だった。


 ──寝室にて待つ、逃げることは許さないのでそのつもりで


 果たし状かなにかなのか?そう思ったスレイだったが、行くにしてもタオルやらなにやらを置いていきたかったので、部屋に入ろうとした瞬間、ガツン!っと言うおとが響いた。


「んがっ!?痛ってぇええ!?んだよこれ!」


 鼻を強く打ち付けたスレイは部屋を塞ぐように張られているシールドを見ながら、ユフィかノクトの仕業だなっと思いながら部屋には入れなくなった。


「くっそ、タオルくらい入れさせてよ」


 タオルをリビングの椅子にかけたスレイは、紙に書かれていた部屋の前に着たスレイは、先ほどのことがあったので用心してアナライズを使った、

 特に魔法がかかっている訳ではなかったので安心して中に………入れるわけがなかった。


 入った瞬間に何かあるのかもしれない、そう思ったスレイは中にはいるのも慎重になっていた。


 そろ~っと部屋の中に入ったスレイがまず驚いたのが、部屋の中の灯りがすべて消されていたのだ。


 初めに入ったとき、暗いな、そう思ったスレイが手探りで魔石灯のスイッチを探して着け、明るくなった部屋を見てスレイは驚いた。

 何故ならば、ベッドの上ではかなり際どいネグリジェを着て、なぜか自分にラッピングが施されている。ってかそれはどうやったんですか!?っと驚かずにはいられなかった。


「それじゃあスレイくん。覚悟は良いかな?」


 うん。いったいなにされるんだ?そうスレイが少し混乱ぎみにそう思っているが、実際にはわかっている。

 これから何をされるのか、何をするのかもわかっている。

 だが、これだけは言わせてもらおう、こんな峰麗しい美女、美少女の恥じらいの顔はなかなかそそる物がありヤバイ。何が

 ヤバイかと言えば、普通に色っぽい、と言うよりもめちゃくちゃエロい。


 服装については先に言っておいた通りもれなくネグリジェなのだが、ユフィとリーフがめっちゃエロい。

 何がエロいのかというと普段は服や鎧の上からでも分かるほど立派な双眸をお持ちになっているのだが、今がかなりラフな格好なせいかいつも以上に大きく見えている。

 少し動く度に形を変えてしまっている。

 それを見ているだけでも理性と言う防波堤が決壊しそうになのに、それだけではなくハードな運動のお陰で見事に引き締まったプロポーションた。

 なのに女性らしい丸みを帯びたボディー、もう見ているだけで理性が崩壊寸前になっているスレイだったが、ここにいるのはユフィとリーフだけじゃない。


 次にノクトとライアなのだが、この二人にはユフィとリーフのような立派な物は持ち合わせていない。並みかそれよりも少し小ぶりだが、この二人には胸ではなくほどよく引き締まった瑞々しい肢体だ。

 触れれば柔らかそうな太もも。

 少しでも触れば折れてしまうのではないかと思うほど細い手足。

 普段なら見ることの出来ない肢体が見えていることにかなり興奮するはずなのに、ノクトが恥ずかしそうに胸を隠すようにしたりモジモジと足を動かしたり、いつもならどんどん攻めてくるライアが妙にしおらしい表情で視線を動かしている姿を見て、スレイは生唾を飲み込んだ。


 長い時間が経ったっと思ったそのとき、ユフィたちが手を広げた。


「スレイくん。私たちの準備はできてるから。ねっ?こっちに着てもいいんだよ?」

「おっ、お兄さん、その……いっ、痛くても我慢しますけど……できるだけ優しく……してください」

「スレイ殿、何分初めてですので至らぬところがあるかもしれませんが、よろしくお願いします」

「……スレイ、早く来る。もう我慢できないから……お願い」


 もう無理、スレイは産まれて初めて自分の理性が壊れる音が聞こえた気がした。

 手を広げて自分のことを見ているユフィ、ノクト、リーフ、ライアの方に引き寄せられるように近寄っていったのだった。

 この夜、スレイはみんなとより深く繋がったのだった。


 ⚔⚔⚔


 時間は深夜の三時を過ぎた頃、すやすやと静かな寝息が聞こえる暗いな部屋の中で一人の人物が起き上がった。

 起き上がったのはスレイだった。

 スレイはベッドの下に脱ぎ散らかした服を手早く着ると、静かな寝息を立てているユフィたちを起きないように部屋を抜け出す。

 部屋には戻らずにリビングで酒を飲んでいた。


「……………身体が、めっちゃ痛ってぇ」


 スレイは上半身だけ服を脱いで左肩に出来ている傷跡を見ていた。

 肩にはなにかに噛み千切られたような跡が出来ているのだが、これはさっきライアに喰われたのだ。

 なぜかは分からないが行為の最中に突然噛まれ、そのまま肉を食い千切られた。

 今は竜の回復力で治ってはいるがちょっとだけライアのことが恐ろしく感じたが、怪我はこの一ヶ所だけなので良かった。

 傷口を治療していたスレイはふとこの家の中を見て微笑んだ。

 家族との幸せなど時間、それをこの場所で作っていく、そう考えた瞬間、頭の中をある人の顔がよぎり、それと一緒にこんな声まで聞こえてきた。


 ──お前のようなでき損ないが、他人を幸せになど出来るわけがないだろうが!


 聞こえてきた幻聴は、何年も聞こえることのなかったあの人の声だった。


「───────────ッ!?」


 ゾワッと嫌な汗が吹き出し、バクバクッと心臓の鼓動が乱れる。

 思い出したくもない相手のことを思いだし、急に息苦しくなッたスレイは喉を押さえていると、今度はめまいの様なものに襲われ、バタンッと座っていた椅子ごと地面に倒れてしまった。


「うぐっ、ふぅ、ふぅ……ふぅふぅッ!はぁ……はぁ……ッ」


 口許を押さえながら床に手を付いてうずくまったスレイは、ずっと頭の中で巡っている嫌な記憶を追い出した。

 強く、強く何度も頭の中で必死に追い出そうとしているスレイだったが、どう頑張っても消えてくれない。


 ──消えろ……消えろよ…………もう消えてくれ!もうボクの中から消えてくれよ!!──


 頭の中を塗りつぶすように何度も何度も消えろっと願い続けるスレイ、そこに優しい声が聞こえた。


「スレイくん!?どうしたの!」

「どこか具合が悪いんですか!?でしたらすぐにノクト殿を起こしてきます!」


 乱れた呼吸をなんとか整えたスレイが顔をあげると、うずくまったスレイのことを心配そうに、っと言うよりもかなり焦った表情をして除き込んでいたのは、ネグリジェではなくいつもの寝巻きに着替えたユフィとリーフだった。


「───ごっ、ごめん……うるさくて起こしちゃったのか」

「違うよ!そんなことよりも、どうしたの?様子が変だよ?」

「気分が、と言うよりも表徐が優れないようですが、何があったんですか?」

「………なんでもないよ」


 スレイは取り繕ったような笑顔でユフィとリーフにそう言うと、二人の視線が一気に険しくなると揃って大きなため息をつかれた。


「スレイ殿、あなたは嘘が下手すぎますよ……それに、私もユフィ殿も、ここにはいませんがノクト殿もライア殿も、みなあなたの妻となる身。嘘や隠しごとはやめてください」

「そうだぞ~、家族にとって隠し事をされるってことがとっても悲しいって、スレイくんが一番よく知ってることなんじゃなないのかな?」


 ユフィの言っていることは正しい。隠し事はイヤだ。

 そんなことはスレイ自身が一番知っていたことのはずなのに、それと同じことを自分でやっていることに気がついたスレイは、自然とポロポロっと目の端から涙が溢れていくのに気がついた。


「ごめん。ユフィ、リーフ………ごめん、ごめん」


 突然泣き始めたスレイを呆然とした表情で見ていたユフィとリーフは、なにも言わずにスレイの背中を擦った。


「辛いことがあったのでしたら聞きますよ?」

「スレイくんはいっつも、私たちのためにっていって弱音も吐いてくれないもんね」


 二人にかけられた声を聞いたスレイは、うつむいたまま小さく話し始める。


「………さっき、ボクの……地球での父さんのことを思い出したんだ。しかめっ面で、ボクのことを見下したそんな目をしながら、こう言われた気がしたんだ。お前のようなでき損ないが、他人を幸せになど出来るわけがないだろうが、ってさ」


 スレイの言葉を聞いてリーフは驚きの表情のまま固まり、ユフィはというとどう答えていいものなのかと、困った顔をしながら言葉を探していた。


「ボクの父さん……っていっても、地球でのなんだけど現役の警察官で……えっとまぁ、国に支える仕事しててさ、家には帰らない、帰ってきても仕事して本当に絵に描いたような仕事人間でさ。ただ一緒に暮らしてるってだけの赤の他人、そう言われてもおかしくはないような家族だったんだ」


 スレイはヒロだった頃からあまり家族については話したことはなかった。

 ユフィは転生者であることをみんなに話してから、少しずつミユであった時の話をしていた。

 リーフは初めて聞くスレイの転生前の話を聞いて言葉を失っていた。


「一緒に遊びに行くこともほとんどなかったし、ボクの誕生日だって無駄だって祝われたことがないんだよ」


 スレイの話しを聞いて、リーフ息を飲んだ。

 初めて聞くスレイの過去の話しに声がでないのだ、そしてユフィは昔を思い出して悲痛の顔を浮かべていた。


「そんな父さんだけど、ボクのことを一人前に育てたかったのか、小さい頃から色んな勉強をさせられてさ、そのせいで友達は出来なかったし、遊びたいって言うと、お前にはがっかりだ、お前なんていなければいい、って口癖見たいに言ってきたんだ」


 口に出して言葉にする度にスレイは自分の心が傷ついていくのを感じた。


「あの世界で生きてきたボクはずっと、ボクはいらない人間なんだ、ボクがやってることは意味がない、誰にも必要とされない、そう思って生きてきたんだ。いや、今もそうなのかもしれない………」


 前にユキヤから、お前は変わった、そう言われたが根本的な部分はなにも変わっていない。


「あの人の言う通りだよ、やっぱりボクはでき損ないだ」


 スレイは自分の顔を覆いながらうっすらと笑いを浮かべる。


「人として当たり前にできることが出来ない。ボクは誰かを愛することは出来ても、ボクがボクのことを好きになれない。さっき、父さんの声が聞こえたとき、ずっと頭の中から消えろって思ったけど……本当は違ったんだ。認めたくなかったんだ………その言葉が事実だって認めたらボクはみんなの側にいられなくなる」


 パチン!軽快な音が聞こえるとの同時にスレイの頬に痛みが走った。

 顔をあげたスレイの目の前には、目尻に大粒の涙を貯めたユフィとリーフがいた。


「さっきから聞いてたらスレイくん、さっきからなんなの?ボクはいらない人間?人としてはでき損ない?だから私たちの側にいられない?ふざけないでよ!」

「考え方なんて人それぞれです!私にも自分で嫌いなところがいくつもあります……ですが、今のあなたは違う!ただ過去の亡霊に囚われているだけです!」


 ユフィとリーフが今にも泣きそうな顔でスレイに言葉を投げ掛ける。


「これからは私も側にいる………だから、もうそんな寂しいこと言わないでよ」

「人は言葉にしてくれないとなにもわからないんです。それに、泣きたいときは我慢しないでください」


 二人の言っている言葉を理解したスレイは、ポロポロと涙を流し始める。


「ごめん……ユフィ、リーフ」

「違いますよ?」

「こういうときは、ありがとうって言わなくちゃ」

「あぁ………ありがとうユフィ、リーフ」


 その夜、スレイは初めて自分の弱さをすべて吐き出し、ユフィとリーフはそんなスレイが泣き止むまで側にいたのだった。


 ⚔⚔⚔


 次の日の朝、目を覚ましたスレイは自分を見下ろしている二つの影があった。


「お兄さん、何でこんなところで寝てるんですか?それもお姉さんたちと」

「……朝起きていないのすごいショックだった。なにか言うこと無いの?」

「………………ごめんなさい」


 正座させられたスレイは静かにノクトとライアに頭を下げたのだった。

このあと昼の一時頃にもう一話投稿する予定です。


ブクマ登録ありがとうございます

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