家具を買いに行こう
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買ったばかりの家に入ったスレイたちは簡単に掃除をした。
一応ギルドの方で定期的に掃除は行われていたそうだが、細かいところには埃が残っていたのと部屋の中様子をもう一度確認しておくためであった。
掃除を始めて数時間、一通り掃除を終えたスレイたちは、休憩も兼ねて談話スペースに集まっていた。
「ふぅ、時間はかかったけどこれで一通り部屋の掃除は終わったな」
「そうですね。あとは部屋割りと家具を買いに行く必要はありますね」
「……ねぇ、その前にご飯食べたい」
控えめに手を挙げるライアがお腹を押さえるとぐぅ~っと音を鳴らした。
ずっと作業をしていたせいで忘れていたが、今いったい何時なのだろうと思ったスレイたちはあたりを見回しているが、この部屋に時計などあるはずもなかった。
懐から懐中時計を取り出したスレイが時間を確認し、辟易とした顔をした。
「うわぁ、もう二時過ぎてるよ」
「じゃあお昼にしなきゃだけどこの家、魔石が何もないから火もつかえないんだよね」
さっきまで空き家だったのでこの家のライフラインを支える魔石はすべて撤去されている。
当たり前だがスレイたちの持っている魔石ではダメなので、新しい魔石を買いに行かなければならない。
「仕方ないから昼は外で食べて、魔石や必要なものを買い揃えに行こうか」
「あと、ご近所に挨拶もしておきたいですね」
ご近所付き合いは必須、それに近くは商店街なので顔を覚えてもらって置いて損はないので、買い物ついでに済ませようということになった。
さて、ここで一つ問題があった。
「買い物するのはいいんだけど、家具を買い揃えるならかなり掛かるけど、みんな所持金いくらあるの?ボクは後白金貨五枚と金貨と銀貨が数枚くらいなんだけど」
「私、金貨が数十枚くらいなら手元にあるよ~」
「前に鎧の修繕費用を多目に出したので私もそれくらいはあります」
「えっと……銀貨が数枚ですね」
「……私も同じくらい、だけど銅貨が多いからノクトよりも少ない」
家具を買い揃えるにも結構な金が必要になる。
手持ちだけで足りるかと思ったが、今日中に全部買い揃える必要もないので、今日のところは人数分のベッドと多少の家具を買うくらいならどうにかなりそうだと考える。
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買わなければならない物をリストアップしたスレイたちは、街を散策するついでに近所のお店に引っ越しの挨拶をするために立ち寄った。
始めはスレイが黒いローブを着ていたせいで少し距離を取られたが、話しているうちにわだかまりも溶けていき、最終的には黒いローブのいけ好かない奴から、別の国からつい最近こっちに引っ越してきた若夫婦という評価に変わってくれた。
評価についてはあまり気にしないスレイだったが、さすがにローブの色だけで判断されてしまってはいやなので、適正な評価を獲得出来たことに安心した。
その店で売っていた野菜やら果物、それとパンなどを結構買ってしまった。
一応夕食は自炊をするつもりだったので、買えて良かったのだが、多少………いいやかなり多く買いこんでしまったためスレイは深く反省していた。
「これからお店で家具とか沢山買わなくちゃいけないって言うのに、なんであんなに買っちゃうのかな~?」
「………面目次第もございません」
ユフィからだけではなく、ノクトたちからも厳しい視線をもらったスレイは、それを甘んじて受けていると周りからの視線が痛いが、なんだか同じような事が多いのでもう慣れてきてしまった。
「でもまぁ、いっぱい買ったおかげで街のこと教えてもらったんだし、それで手打ちには……はい。なるわけないですよね、ごめんなさい」
ユフィたちの冷ややかな目を見て、スレイは小さくなりながら頭を下げていた。
近くの定食屋で昼食を取ったスレイたちは、ようやく家具などを見に行くことにしたのだが、始めに家具屋に行ったのだがユフィたちがかなり興奮ぎみに見ていた。
「わぁ~こっちのベッドいいな~。あっ!こっちも良いかも!」
「ふわふわしていて気持ちいいです~!」
「やっ、やはり夫婦で使うものですし、これくらいの大きさは必要でしょうか?」
「……今夜、このベッドの上で………ふふふっ」
ユフィとノクトは純粋に自分の使うシングルベッドを見ているようだが、リーフは夫婦使いの大きめなベッドを見ている。
まぁここまでは良いのだが、問題はライアだった。
展示用に置いてあるベッドを見ながら今夜するであろう出来事を妄想しているのか、なにやらなまめかしい吐息を吐いている。
夫婦か同居中のカップルかはわからないがライアの隣を通りかかると、まだ幼い容姿のライアがかなり色っぽい表情をしているせいで男どもが一瞬目を奪われ、次の瞬間には同伴している彼女か奥さんによって足を踏まれたり、脇に黄金のストレートを入れられたりして正気に戻されていた。
それを見て、これ以上は余計な被害者が増えてしまうっと思いライアの隣に移動した。
「なぁ、ライア?こう言うところで変な妄想に耽るにはやめような?」
「……むっ、スレイなんで私がそう思ってるって分かったの?まさか魔眼をつかった?」
「いや、表情から簡単にわかった。ってか、これ以上はこっちが悪いことになりかねないから」
スレイがそういうと渋々と言った具合ではあったが、了承してくれたライアが立ち去ってくれた。
しばらくしてユフィたちが気に入った家具を見つけたそうなので、値段を確認させてもらった。一通り見せてもらったのだが、その中で一つ大きな物があった。
「なにこのでっかいベッド?これ一つで白金貨三枚!?あとグランドサイズって始めて聞いたんだけど、いったい何に使うの?」
「えっ、みんなで一緒に使うから良いかな~って、ねっ?」
「「はい!」」
「……ん!」
ユフィに同調してノクトたちもうなずいているのだが、この大きさのベッドとなると部屋を一つ潰さないと入りそうにないが、どのみち部屋は余っているので問題はないだろう。
そんなわけですべて買うことになったのだが、ここだけでも買った物をすべて合わせると約白金貨四枚に金貨七十枚が消えていった。
一つ一つは高価な物ではなかったが人数分のベッドを揃えた上に、リビングに置くための大き目のテーブルに人数分の椅子を購入し、多少の余裕があったのでテーブルクロスやカーテン、それに談話室におくソファーとカーペットに冷蔵庫等々、この店で揃えられるものはすべて買った。
ちなみにそれら全部を買うと言ったとき、店の店員がかなりの猫なで声で話しかけてきた。
大量の家具を買ったため上客として目をつけられたのだろうが、一度買ったら壊れるまでは使い続けると思うのであまり来ることはないだろうなっと思いながら会計を済ました。
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家具屋を出てからメモに書かれているリストを確認して、次はどれを買いに行こうかっと話し合っていると、ユフィたちがなにかを見つけたのか立ち止まった。
「みんな、なにか見つけたのか?」
「はい!あの、それでですね。お兄さんとは少し別行動をとってもらいたいんですけど……」
「いや、後はそんなに時間がかからないし、ボクも着いていくよ?」
「いえ………それは少し恥ずかしいですし………スレイ殿も恥ずかしいと思いますよ?」
「……というか、男子禁制、スレイは立ち入り禁止」
「そう言うことだから、ごめんね~」
どう言うことだっと思ったスレイがキョロキョロと近くを見回すと、自分の左側に女性専用のランジェリーショップがあることを知り、ユフィたちが言っている言葉の意味を察した。
「わかった。それじゃあボクは家の魔石と調味料なんか買い出ししてくるけど、なにか必要なもの有る?」
「それではポーション用の薬草をお願いします」
「了解。買い物が終わったら、あそこのカフェにでも集合しようか」
ユフィたちの返事を聞いてスレイは一人、買い物をするべく人混みの中に消えていった。
火の魔石と水の魔石、それとポーションを作るのに必要な薬草を買ったのだが流石はマルグリッド魔法国、かなり高品質の品が手に入った。
節約とは言わないが安く買えるというのはありがたい、そう思いながらユフィたちのいる場所に戻ろうと思い歩き始めたスレイだったが、後ろから誰かが着いてくる気配を感じた。
「これは着けられてるな………気配からして数は四人、まさかあいつらか?」
スレイには一応心当たりがあった。
それは役所でスレイが魔法で脅したあの魔法使いたちだったが、あのあとしばらくは拘束されると聞いたのでそれはない。
ならばいったい誰なのか気になったスレイは、人混みを歩きながら路地裏に逃げる。
後ろから追ってくる輩も少し遅れて裏路地に入ったが、そこにスレイの姿がどこにもなかった。
路地の先は行き止まり、そのはずなのにスレイの姿がない。
「どこに行った!?」
「探せ、どこかに隠れているはずだ!」
どこかで聞いたことある台詞だなっとスレイが思いながら竜翼をはためかせ、自分のことを後ろから追っていた追っ手の頭上を見下ろしていた。
追っ手の男たちが着ているローブは全員灰色、魔法使いとしてはかなりの手練れなので逃げたい気持ちでいっぱいではあった。
しかしあれが何者なのかそれとなぜ後を追ってきたのか、その理由に興味があったスレイは行き止まりの先を確認している男たちの真後ろに降り立った。
「すみませんが、誰かをお探しですか?」
「「「「──────────ッ!?」」」」
男たちが息を飲んだが次の瞬間には短い杖を構えていた。
つまりは、攻撃の意思がある。そう感じたスレイはローブの留め金を外し黒と白の剣の柄を握り一気に抜き放った。
このまま来るならなこい、その行きで剣の切っ先を向けている。
「待て!その方は違う!」
ローブの男たちの一人に言われ、短杖を下ろしたがスレイは後ろから追ってきた輩をそう簡単に信じれる訳もなくそのまま剣を抜いたまま構えておく。
あのリーダー各らしき男の顔をどこかで見た気がするが、思い出せない。
「すまないが、君の名前はスレイ・アルファスタで合っているね?」
「さぁ、どうでしょうか?そうかもしれませんし、もしかしたら全く別の人かも知れませんよ?」
「まさか、私が孫の顔を見間違えるはずがなかろう?」
「…………はっ?なにいってるんですか?見ず知らずのあなたに孫と呼ばれる筋合いはありません。次はこっちから質問です。なにが目的ですか?」
先程から魔眼を発動してこの男たちの魂の色を確認していたが、危害を加えようというわけではないらしいのだが、剣を鞘に納めて良い理由では無いので、警戒と牽制の意味を込めて魔法使いたちに剣を向け続けている。
すると年配の魔法使いが、ローブの懐から一枚の手紙らしき物を取り出した。
「………王城からの召還命令が出ている。私はそれを君たちに伝えに来たんだ」
リーダー各の男がスレイの足元に一枚の手紙を投げる。それを一瞬だけ見たスレイは、確かにその手紙にはこの国の焼き印が押されていた。
「残念ですが、私は国に呼ばれるような人間ではありません。ですのでお断りさせていただきます」
「そうか、ではまた会おう」
年配の魔法使いが指示を出すと、引き連れていた魔法使いも何事もなかったかのように去っていった。
魔法使いたちが立ち去ったのを見たスレイは、二本の剣を鞘に納めると足元に落ちていた手紙を広いポケットに仕舞い、やはりローブは合わなかったので、昔着ていた黒いジャケットを取り出して久しぶりに袖を通したスレイは、そのままユフィたちの待っているところに向かったのだった。
もうすぐクリスマス、と言うことで二日後の12月25日にクリスマス特別編と本編の続きを投稿させてもらいます。