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 ワーカーギルドに教えられた店での赤毛の少女 ライアを紹介された。

 先程、店員の反応からどんな人が来るのかと身構えていたが、いたって普通の女の子が出てきたのでスレイたちはいささか困惑した。


「皆様。こちらの部屋にどうぞ」


 店員に隣の部屋に通されたスレイたちは、椅子に座り店員から少女ライアについての説明を受けることになった。


「それではお客様のご要望をご確認しますが、まずは竜人族と魔眼保有者と言うことでしたね」

「えぇ、それでその子はどっちなんっでしょうか?」

「はい。この子は竜人族であり、ご要望の魔眼の保有者でもあります」


 竜人族で魔眼保有者、欲しかった情報がすべて揃った。

 まさかすべての条件がそろったワーカーが見つかるとは思わなかったスレイは、口角を少しだけつり上げて嬉しそうに微笑んだ。


「まさか欲しかった人材がこうもすんなりと手に入るとは想いませんでした」

「竜人族というだけでもかなり特殊な上、魔眼保有者は稀有な存在ですからね。それで、どうされますか?」

「もちろん契約させていただきます」

「かしこまりました。少々お待ちを」


 スレイがライアとの契約を進めることを伝えると、女店員が嬉しそうに微笑みながら奥の部屋から一枚の紙を持ってきた。


「それではこちらへ、この子との契約の内容をお書きください。それとワーカーに対する禁止事項もありますのでそちらの確認も怠らないでください」


 スレイは契約の内容を書くに当たっての禁止事項の項目をよく見てみると、書いてあるのは性行為の強要や犯罪の強要など、ごくごく当たり前のことだった。

 それを読み終わったスレイはサラサラっと契約書に内容を書き最後に契約のサインを書いて店員に用紙を渡した。


「それではご確認します。内容は魔眼と竜人についての情報ですか」

「はい。それで構いませんか?」

「えぇ、ライアは構わないわね?」

「……うん。平気」


 ライアも契約書にサインを書くと店員に促され、手を出すと契約の証としてスレイとライアの右手の甲に契約の紋章が浮かび上がった。


「これで契約は完了です。それじゃあライアとの契約金として金貨五枚と、契約達成時には金貨二十五枚となっています」

「それじゃあこれが契約金です」


 スレイは懐に忍ばしていた財布の中から金貨を五枚取り出して店員に差し出すと、金貨が本物であることを確認した店員がライアに荷物を持ってくるように言いつけている。


「えっと、何で彼女は荷物を取りに?」

「なぜって、あぁ!お客様ワーカー契約は初めてでしたね。もうしわけありません、ワーカーは原則契約者様と一定以上の距離を離れられませんので」


 詳しく聞くと距離の制限以外にも契約者は契約したワーカーの生活の保証もしなければならないそうだ。

 つまり契約が完了するまでの宿代や生活費はすべてスレイが支払わない。


「なんか、結構な出費になりそうだな」


 金については今まで稼いできた貯蓄とは別に、旅の資金もあるのであまり気にすることでもないかもしれないが、現状で冒険者として依頼に行けないのに出費がかさんでいくことを心苦しく思っていると、ノクトが優しく慰めてくれた。


「お兄さんのために必要なんですから、お金のことは気にせずに」

「ノクト………ありがとう」


 ノクトの優しさにほっこりとしたスレイが感謝の言葉を述べていた。


 しばらくしてリュックを背負ってる帰ってきたライアが戻ってきた。


「……準備できた」

「あぁ。それじゃあいこうか」

「……ん。女将さん。行ってきます」

「行ってらっしゃい。無事役目を果たしてきな」


 バイバイと手を振って店を後にするライア、その姿を見送る転移の目に涙が溜まっているのをスレイは見逃さなかった。


 ⚔⚔⚔


 無事に契約を終えたスレイたちは、一度宿屋に帰ろうとしたのだがユフィたちに断られた。

 何でもライアに必要な生活用品を買いに行こうということになったが、どう見てもショッピングに行きたいのだろうとスレイは思ったが口にせず胸のうちにしまった。

 さて、そういうわけで買い物に行くことになったのだが、その前にライアがこんな事を言った。


「……私、お金そんなに持ってないよ」


 ワーカーは原則お金を持たないそうで、多少店の手伝いなどでもらったお小遣いがあるそうだがそれで足りるとは到底思えず、ライアが心配そうな顔をないでいる。


「いいよいいよ。全部スレイくん持ちだから」

「はっ?」


 そんな話を全く効いていないスレイは耳を疑って聞き返そうとしたが、ユフィは意に返さずに続ける。


「安心して買い物しようね~」


 これは聞く耳持たないときの顔だと思ったスレイは、手持ちの財布の中を確認してみる。

 手持ちの金貨はライアとの契約金で減ってもまいくらかの余裕はあるが、全員の買い物となると心持たないが大丈夫だろう。


「いいけどさ、今手持ちそんなに持って無いから高いのは勘弁してよ」

「分かってるよ~それじゃあみんな!行っくよぉ~!」


 意気揚々とユフィが拳を突き上げ、少し遅れて顔をひきつらせたリーフとノクトも拳をあげる。

 謎のテンションに着いていけていないライアも、ユフィに言われて首をかしげながら握った拳を突き上げる。

 契約の都合上ライアと離れることの出来ないスレイが大きなため息をつきながら先をゆくユフィたちの後を歩いていくのだった。


 ⚔⚔⚔


 あれから二時間ショッピングを存分に楽しんだユフィたちは、休憩がてらカフェに入りライアと話をすることにした。


「まぁ、今更ながらだけど自己紹介でもしようか。ボクはスレイ・アルファスタだ」

「私はユフィ・メルレイク。スレイくんのお嫁さん、になる予定です」

「ノクトです。ノクト・ユクレイア、元シスター見習いで今はお兄さんのお嫁さんになる予定です」

「リーフ・リュージュです。お二人と同じようにスレイ殿のお嫁さんになる予定です」

「……全員、スレイのお嫁さんになるの?」

「あぁ……ってか、今の自己紹介にその情報は絶対にいらないと思うんだけど?」


 スレイがユフィたちの方をジと目で見ていると、三人がえへへッと笑いながらこちらを見ていた。

 その顔を見て可愛いと思ってしまう辺り、彼女たちに惚れているから仕方ないと思いながらライアの方を見ながら話を戻した。


「えっと、一応ボクが君と契約しているけど、契約の内容は理解しているよね?」

「……うん。魔眼と竜人について教える。でも何で?」

「スレイ殿、話すよりも見てもらった方がいいと思うのですが」

「そうだね……っても人も多いし、仕方ないこれでいいか」


 スレイは左目に巻いていた包帯を外して魔眼を見せ、同じように右腕の手袋を外して右腕の手の甲に竜の鱗を顕現させた。それを見たライアは、驚いたように目を見開きながらスレイを見ていた。


「……スレイって、もしかして竜人族なの?」

「いいや、ボクは人間……だったって言ったらいいかもしれないけど、一応人間族だよ」


 竜の因子を受けて後天的に竜人に近い身体を得ただけのため、どう説明していいか悩んだ。


「少し前にとあるドラゴンからこの魔眼と竜の因子を貰って、竜人に近い身体になったんだ。それで、その力を制御出来ないからこうして竜人族の君に力の使い方を教えてもらいたかったんだ」

「……いいけど、魔眼って受け継げる物なの?」

「ボクに魔眼をくれたドラゴンがかなり特殊なドラゴンってことだけ言っておく」

「……ふぅ~ん、いいよ。教えてあげる。その代わりちゃんとお金はもらうから」

「あぁ、ちゃんと渡すから、よろしくね」

「……ん。よろしく」


 スレイが差し出した右手をライアは握った。


 ⚔⚔⚔


 宿屋に帰るとライアのための部屋を一室取ろうとしたが、一人部屋が空いていないと言われた。

 代わりに二人部屋が二つ空いていると言われたためユフィたちがそちらに移った。

 部屋の移動を終えたあと、宿の裏手にある大きな庭でスレイたちは集まっていた。


「……それじゃあ、どっちから教えてほしいの?」

「それじゃあ魔眼から……というか、魔眼を何とかしてもらえないとそろそろヤバイ」

「……スレイの魔眼ってどんな魔眼なの?」

「魂視の魔眼、目に写るすべての魂の色を写し出す魔眼だよ」

「……私のは死視の魔眼」


 なんとも不吉な魔眼だな、そう思ったスレイに同調するかのようにユフィがライアに訊ねた。


「死視って、ライアちゃんの魔眼って人の死が見えるの?」

「……ん。見えるって言うのは語弊、人が死ぬ前になると勝手に見える」

「なんとも不便な魔眼ですね」

「……そういうわけでもない。この魔眼、断片的だけど未来も見える」

「未来?本当に見えるの!?」

「……ん。なんなら今やってみてもいいよ」


 ライアがユフィたちの顔を見ながらそう訊ねると、ユフィたちが見たい!っと言い出したのでライアが頷きながら左目の魔眼を発動させた。

 どうやら魔眼のコントロールが出来るようになると目の色も変えられるようになるらしい。

 ちなみにライアの目の色が普段は灰色だが、魔眼を発動させると黄金に変わるらしい。


「……えっと、そこの黒髪の子」

「ノクトですよ。ちゃんと覚えていてください」

「……ごめん。そのノクトがこれから黒くなる」

「なにそれ?」


 ユフィたちがライアの言ったことに疑問を覚えながらノクトの方を視る。

いったいどう言うことだ?スレイもそう思いながらの自分でも不思議そうにしているノクトを視ていると、突然空が暗くなりポツポツと何かが降ってくる。


「うわっ!?なんだ、これスコールか」

「わぁー、退避、退避ぃ~」


 瞬間的に降り注いだ雨を一身に受けたスレイたちは慌てて宿屋の中に入ったが、短い間ではあったが雨の中にいたので今のでも十分に服が湿ってしまった。


「ライア殿、出来れば雨が降るのなら事前に言ってもらいたかったんだですね」

「……それは無理、私の魔眼はただ結果が見えるだけ、過程は分からないし、簡単なことですぐに変わるかもしれない……でも今は当たった」


 どう言うことだろ?そう思いながらふとノクトの方を見ると、全身から黒いオーラを放ちながらユフィとリーフの胸元を睨み付けていた。

 二人とも今のスコールのせいで服が身体に張り付いてしまっている。

 そのせいで身体のラインがハッキリと見えてしまっているせいで、ノクトは自分の身体と違いから黒いオーラを放ってしまっている。


「なるほど、黒くなるってのは闇ノクトになるってことか」


 未来を視ることのできる魔眼。

 かなり便利なんじゃないのかと思ったが、やはり死を視ることが前提の魔眼がいいはずもない。

 窓から外を見ると先程の雨降り続けているため、魔眼の制御を終えたら竜人の身体の使い方を教えてもらおうと思っていたが、これでは晴れても地面がひどそうなのでそれは次にしよう。

 そう思いながらスレイがユフィたちの方を見ると、まだノクトが闇化しており、さらにライアが自分の胸とノクトの胸を比べて小さく微笑んだりするものだからより闇は深くなった。

 呆れながら大きなため息を一つ吐いたスレイは、まだ身体を乾かしていなかったので空間収納から五人分のタオルを取り出して全員に渡し、風魔法に熱を込めた熱風で服などを乾かしている。

 服も乾いたところで、スレイたちは部屋に移って抗議を再開した。ちなみに部屋にはノクトとライアの部屋でやることにしたのだが、なぜかユフィとリーフもやって来た。


「それでライア、魔眼の制御はどうやるの?」

「……そんなの簡単、眼の意識を集中させて力の流れを感じてみて」

「行きなり難しいことを言ってくれるな」


 方法も聞いて実践するしかないので、取り敢えずスレイは左目に巻いている包帯を外し、左目を開きながら意識を集中させてみる。

 身体の中に存在する魔力を感じるような感覚で目に意識を集中させている。身体の中の力を感じるのは、普段から魔力や闘気を感じているのでかっては同じだろう。そう考えながら左目に流れる力に触れた。


「うん。何となくだけど、力の流れがわかった気がする」

「……早いね。それじゃあそれを押さえてみて」

「わかった」


 今感じたばかりの力を抑えだしたスレイは、力を最小限にまで押さえ込んだのを確認してゆっくりと目を開けてみると、今まで見えていた色が消え去り右目と同じようにいつもの視界になっていた。


「これは、ちょっとキツいな」

「……すぐに馴れる。馴れれば意識しなくても眼の力を押さえられる」


 気を抜けばすぐにまた色のある世界に戻ってしまいそうだが、魔眼の扱いに関しては先輩であるライアがそういうならそのうちにましになるのだろう、そう諦めながら目の力をおさえ続ける。


「……ん。そのまま続けていれば、すぐに身に付くと思う。たぶん」

「けっこう曖昧なんですね」

「ライア殿の時はどうだったのですか?」

「……私はうまれたときからだから、魔眼の使い方は身体で覚えてる」

「後天的に魔眼は開眼しないらしいしねぇ~」

「……ん。スレイが異常」

「「「そうそれ!」」」


 なぜか最終的に自分を異常の一言で片付ける発言をした四人の言葉を聞いて、さすがにこれは容認できない。

 そう思ったスレイが笑顔のまま四人を睨み付けると、ユフィたちがすがるような視線でライアの方を見るが魔眼の力を使って未来を視たようだが、首を横に降った。


「ライアさん、どうにかなりませんか」

「……ムリ、怒こられるだけ、おとなしくしよう」


 ただ視えたことをそのまま語ったライアの言葉通り、スレイがユフィたちにお叱りの言葉を送ったのだった。


 それから一週間程の時間を駆けてスレイは魔眼の力を制御することに成功した。

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