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竜人の少女

文章、ストーリー評価ありがとうございます。

 クレイアルラに開いてもらったゲートを使いヴェーチェアの首都リプルスに降り立ったスレイたちは、町の中に入るために入門審査の列に並んでいた。


「うっへ~、すっごい列だなこりゃ」

「ざっと視たところ、町の中には入るまでには一時間ほどでしょうか」


 リーフが冷静にそんなことを言っているが、聞いたところで列が短くなる何てこともないのでおとなしく並んでいる。


「なんかさぁそろそろ来るんじゃないかな」

「来る?何がですか?」

「決まってるじゃん。スレイくんのいつものアレ」


 ユフィの言ういつものあれというのは、こう言うところでは決まって変な輩になにかに絡まれるという変なジンクスだ。


「ちょっとユフィ。絡まれることをいつものアレって言わないでよ」

「だっていつものことじゃん。さてさて、今回はどんなのがかかるかな~」

「ユフィ、キミ絶対楽しんでるでしょ」


 スレイがユフィにジト目を向けていると、そこはいつものお約束と言わんばかりに絡んでくる輩がいた。


「おいそこの白髪の、おめぇいい女連れてんじゃねぇか?一人寄越せよ」


 声をかけてきた方へと振り返るユフィたち。当たり前だがユフィはホラ来たッと言わんばかりに笑顔になり、リーフとノクトはそんなユフィを見て引いていた。

 ちなみにスレイはというは、殺気を振りまきながら絡んできた男を睨んでいた。


「はっ?なに言ってんですか?」


 スレイの前に立ちはだかったのはどこかで仕事を終えた冒険者のようだが、来ている装備のせいか山賊か何かに見間違えてしまった。

 しかし毎度のことだがユフィたち絡みでこういう人相の悪い輩に絡まれることが多い。にも関わらず、それをスレイのせいにされるのはいささか納得がいかないところではあった。


「粋がってんじゃねぇぞ坊主。ホラさっさとのきなさいよ」

「その娘ら俺たちでかわいがってやるからさ」


 スレイを押しのけてユフィたちに手を伸ばそうとした男の手を掴み取った。


「嫌に決まってんだろカス野郎どもが、そんなに女が欲しいならその盛の付いた猿みたいな顔なんとかしろよ」


 腕を掴んだ男を投げ飛ばしたスレイは、いい笑顔を浮かべながら親指を真下に下げる。


「殺すぞガキがッ!」


 ぶちギレたらしい悪漢たちが腰に下げていた剣やらナイフを抜いてスレイに向かってきた。

 これで正当防衛が認められる。

 そう思ったスレイは懐から魔道銃を抜くと、素早い動作でマガジンを抜きゴム弾を装填してある物へと交換すした。

 迷うことなく一番速く切り込んできた男の額を撃ち抜いた。


「言っておきますが、最初に仕掛けたのはあなた方だ。死なない程度には痛めつけますよ」


 額を撃ち抜かれた男はキレイな空中一回転を披露し顔面から地面へとダイブすると、倒れた男にダメ押しでもう一発撃ち込む。すると男は変な声を上げて気を失った。


「次、だれですか?」


 襲ってきた男たちを制圧したスレイは慣れた手付きで黒鎖で縛り上げる。

 同じことを何度もしているおかげで、その動作にもなれてしまったスレイは作業をしながらユフィたちに話しかけていた。


「なぁ~。今回はボクじゃなくてユフィたちに非があったんじゃないかな?」

「えぇ~、私たちなにもしてないよ~」

「お兄さん、それはひどいですよ!」

「そうです!すべてはスレイ殿の体質ではありませんか!」


 ユフィ、ノクト、リーフの三人がなんとも不満そうな顔をしながらそう答えた。


「あんたら、一回マジでボクについて思ってること話してくれないかな?今のでかなり不安になったんですけど」

「「「面倒ごとに巻き込まれる特異体質の持ち主」」」


 婚約者三人からそんなことを思われていたスレイは、さすがに悲しくなって四つん這いになって落ち込んでしまった。


「やっぱり今回はユフィたちのせいでしょ?」

「だからなんでですかお兄さん、わたしたち今なにもしてませんでしたよ?」

「なにもしてるって、そりゃあみんなが美人だし可愛いからだからだよ。みんな人目で分かるひどの美少女なんだから、あんな悪漢たちに狙われるって分かってるでしょ?」


 その悪漢たちを縛り終わると同時にユフィたちの方を見ると、三人が三人とも顔を真っ赤にしてそっぽを向いてスレイと顔を合わせようとしない。

 いったい何をしてるんだ?そう思ったスレイは三人の顔を覗き込もうとすると、恥ずかしがってか顔を見せようとしない。

 これは面白そうだと思ったスレイは、立ち上がって顔を覗き込んだ。


「あれぇ~。もしかして照れて───あっ、すみません、冗談です。ごめんなさい」


 三人をからかおうとした瞬間、ユフィとノクトから魔方陣の展開された杖を突きつけられ、リーフからは抜き身の剣の切っ先を向けられ、身の危険を感じたスレイは早々に降参の構えを取るのであった。


 ⚔⚔⚔


 照れて怒り狂った三人をなだめながら列を進んでいくのを待ち入国審査を終えた。

 その時に門番に悪漢の引き渡しや事情聴取等に時間がかかり、日も暮れてしまったため先にワーカーギルドは明日にし、今日のところがギルドに寄って提携の宿を教えてもらおうということになった。


「お前のせいだろ!」

「いいや、お前のせいだ!」

「死にやがれ!!」


 ギルドに立ち寄ったと同時に巻起こった乱闘にスレイは遠い目をした。

 今日は嫌なことのオンパレードだと表情が死んでいるスレイに、ユフィたちからのジと目が突き刺さった。

 なぜユフィたちの視線が厳しいかというと、つい先程いつかにようにスレイたちに方に飛んできた人間を真上に蹴りあげたせいだ。気まずいスレイが上を見ると、天井には人間が頭から突き刺さっている。


「あのぉ~、スレイ殿……天井に突き刺さった人は、生きているんです………よね?」

「大丈夫大丈夫、これで死ぬくらいならボクは同じことで二人くらい殺してますから」

「同じこと前にもやってるんですね!?」


 リーフの叫び声が響く中、スレイとユフィ、そしてノクトは同じことを頭のなかで考えていた。

 それはウルレアナでそれもあなたと出会った次の日でやったことですよ。

 何て思いながらギルドの酒場で暴れている冒険者たちが自然と落ち着くのを待っていると、上からやって来たギルドマスターらしい偉丈夫が一喝することで事なきを得た。

 その代わりとしてここにいた冒険者全員が床に正座させられ、一人づつ説教をされることとなった。


「あぁ?なんだ小僧、見ねぇ顔だな?」

「そりゃそうでしょうね、だってついさっきここに来たばかりなので」

「あのぉ~、私たちまったくもって関係ないんですけど」

「そうか、すまねぇな」


 説教は免れたが正座は免れなかったため、慣れないユフィとのリーフ、そしてノクトは足が痺れてしばらくはたてそうになかった。

 それを見ていて、スレイが先程の仕返しに足をつついてやろうか、等と考えていると足が痺れるのを我慢しようとしていたユフィが、スレイの顔を睨み付ける。


「スレイくん、もしも今………変なことしたら"ブルーフレア"だからね?」

「やりませんよ。ってか、さりげなく魔法で脅すのはやめてよマジで」


 実際やろうとしていたので心のなかで冷や汗をかいていたスレイだったが、そこにノクトが生まれたての子鹿のように足を震わせながら問いかける。


「そっ、そんなことよりも………お兄さんは、なぜ………平気なのですか?」

「ん?だって昔師匠から、修行の一環だって言われて小二三時間正座させられたことがあったから」

「常々お話を聞く限り、スレイ殿の師匠は本当に悪魔か何かではないのかと思うときがあるのですが、そことのところはどうなのですか?」

「リーフいい線行ってるけど、あの人は悪魔か何か、なんじゃなくて、正真正銘の悪魔で正真正銘の悪の権化で化け物同然の鬼畜野郎です」


 いい笑顔でスレイはみんなにそう伝えた。

 これは確実に本人に聞かれれば殺されかねないことだが、当の本人はこの七年ほど音沙汰なしでどこにいるのかそれこそ生きているのか死んでいるのかもわからない。

 しかしあの師匠のことなので、どこかで元気にしているはずだとスレイが思っていると、足の痺れから回復したユフィがニヤニヤとしながらスレイを見る。


「スレイくぅ~ん、いまのをルクレイツア先生に知られたら、確実に天に召されることになるよ~?」

「………お願いします。もしも師匠と会っても今の内緒にしていてください。まだ死にたくないんです」


 涙目になったスレイがユフィに向かって土下座をしているという奇妙な現場を目撃したリーフとノクト。

 二人は言葉にしなかったが、本当にスレイは師匠が恐いんだ、そう思ってしまった。


 ⚔⚔⚔


 その日はギルド提携の宿屋に泊まり、その宿の女将にワーカーギルドの所在地を聞いていた。


「なんだい坊や、そんだけ美人揃いなのにまだはべらすのかい?でも残念だね、そう言うことは例えワーカーでも合意がなければ犯罪だから気を付けな」

「だってさぁ~、どうするぅ~?もしも探してる人が女の子だったらイヤらしいことできないよ~」

「ユフィ殿、さすがに飲みすぎですよ。お酒は飲んでも飲まれるなですよ?」


 スレイたちは今、宿屋にある食堂で酒を飲んでいる。

 元々夕食はギルドで済ましてきたので寝るつもりだったが、久しぶりにお酒が飲みたいと言い出したユフィにスレイとリーフが付き合っていた。

 もちろん情報収集も兼ねていたのだが、早々にユフィが酔っぱらってしまいリーフがユフィからグラスを取り上げようとしていた。


「ペースも考えずに飲むから」


 そんなユフィを尻目にエールをちびちびと飲んでいたスレイは、女将の方に向き直ってた。


「それで、ワーカーギルドの場所を教えてもらいたいのと、今日ここに来たばかりなので案内をしてくれり人を紹介してもらえないですか?」

「あぁ。それならユリアちょいと来ておくれ」

「はい!」


 女将さんが厨房に方に声をかけると、厨房から十代後半か二十代前半ほどの女性がやってきた。


「なんでしょうか女将さん」

「ユリア、あんた明日は休みだっただろ?悪いんだがこの子らをワーカーギルドと、少しでいいから町の案内もしてやってはくれないかね?」

「構いませんよ。それじゃあ君たち、明日の八時にここで待っててね。それじゃあ女将さん私まだ片付けがあるので、行きますね」


 用件を済ませるとサッサッと厨房の方へと帰っていってしまった。

 スレイとリーフは厨房へと戻ったユリアの背中を見送ると、酔っぱらったユフィがテーブルの上に突っ伏してしまった。


「おぉ~い、ユフィ~」

「うぅ~、もう呑めにゃい」

「ダメだこりゃ、完全に酔い潰れてるよ。リーフ~、この酔っぱらい運ぼう」

「ですね。ほらしっかりしてください」

「むにゅ~、まだ呑むぅ~」


 酒瓶を抱えて抵抗するユフィをスレイが魔法で眠らせると、ここで飲んだ分を支払うべく財布を取り出す。


「それじゃあ、ボクたちはこの辺でお代はここに置いておきます」

「はい。毎度っと、お釣り持ってくるからちょっとまっててね」


 支払いを終えると潰れたユフィをリーフが背負っていた。


「それでは先に部屋に戻ります、スレイ殿おやすみなさい」

「おやすみリーフ。それとユフィも」

「おやすみ~」


 二人が部屋に戻るのを見送りしばらくしてスレイも部屋に戻って休んだ。


 ⚔⚔⚔


 次の日の朝、スレイは朝食もそこそこに、約束の時間になるまで部屋で黒騎士の修理をしていた。

 記憶の使徒によって見るも無惨に破壊されてしまった黒騎士は、外装は鉄屑と成り果て内部骨格はズタズタに引き裂かれ、もやリペア不可能。作り直した方がましなレベルだった。


「なんか、使徒を相手にすると魔道具が壊されるな……そう言えば壊したと言えば、あれも直さないとな」


 ポーチの中から焼け焦げ歪み、原型を止めていない腕輪だった物だ。

 戦いの際に左腕腕に着けていたので使徒に腕を切り落とされら後にヘリオースで吹き飛ばしてしまったのだが、黒こげになった自分の腕だった物を見つけたときはさすがに複雑な思いだった。


「これだけでも直しておかないと」


 空間収納から追加の金属と魔石を一個取り出すと錬金術で一気に形を形成を始める。長年着けている物なのでデザインは覚えているのですぐに直った。


「うん。こんなところかな」


 腕輪を直したスレイは続けて黒騎士の内部骨格の修復に取りかかろうとしたが、そこでユフィから呼ばれたので修理しようと出していた黒騎士を空間収納にしまい部屋を出た。


 ⚔⚔⚔


 スレイたちはユリアの案内で町の中を案内してもらったのだが、なぜか行くところはすべて洋服屋や食べ物屋、それも甘味どころがメインだった。

 案内してもらっている立場ではあるが、スレイからしたら鍛治屋など冒険者として必要な場所を案内してもらいたかった。

 メンバーに女の子が多いからかこう言った場所を案内してくれているようだ。


「ねぇねぇ!あそこのお菓子屋さんのプリン、美味しそうだよ!」


 お菓子屋に立ち寄ればユフィがショーケースを覗き混みながら、おやつに買っていったり。


「お姉さんお姉さん!あそこのお洋服かわいくないですか!?」


 洋服屋に立ち寄ればノクトがユフィとリーフを呼び寄せ洋服を見始めたり。


「ふむ。やはりたまにはこのようなアクセサリーを身に付けるべきでしょうか?」


 アクセサリー屋に立ち寄ればリーフが髪飾りを見ながらブツブツと何かを呟きだしたり。


 楽しそうなのはいいのだが、プリンにしろ服にしろアクセサリーにしろ、全部材料さえあれば作れる物なので言ってさえくれれば喜んで作る。

 何て考えながら後ろを付いていくスレイは、度々意見を求めてくるユフィたちに声をかけながら町を歩いていく。

 昼に差し掛かる前にスレイたちはワーカーギルドにたどり着いたころ、ユリアには帰ってもらった。

 休みのところをいつまでも付き合わせるのは可愛そうだからだ。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「ワーカーを雇いたいのですが」

「はい、それではこちらの用紙にご記入を」


 一枚の紙を渡されたスレイは、用紙にかかれている内容を読んでいるとユフィたちが一緒になって覗き込んできた。

 四人で渡された用紙を見ていると、性別、年齢、種族などの要項がかかれてあったので、スレイは性別と年齢を書かずに、所属欄に竜人族にマークを入れ、要望の欄に魔眼保有者のことも書いておいた。


「それではお願いします」

「かしこまりました。しばらく時間がかかりますので、お待ちください」

「はい。よろしくお願いします」


 ワーカーギルドの待合室でスレイたちが待っている。十分ほどでスレイたちが受付の人に呼ばれた。


「お待たせしました。ご要望でしたワーカーが見つかりました。こちらの場所におりますので向かってください」


 受付の女性が地図が書かれた紙と紹介状をスレイに手渡した。


 地図を見ながら自分で行け、そう言うことかと思いながらワーカーギルドの外に出たスレイたちは、地図を頼りにその場所に向かった。


 地図に書かれた場所にたどり着いたスレイたちは、掛けられている看板を見上げながらここであっているな、そう思いながら取り敢えず中に入ってみると、中から店員がやってくる。


「いらっしゃいませ、どんなご用件ですか?」

「ワーカーギルドからの紹介できたんですけど」

「はい。紹介状をご確認します」


 スレイは手紙を渡すと中に書かれていた物を凝視する。


「ほっ、本当にこの子をご所望で!?」

「はい」

「かしこまりました。少々お待ちください」


 女性店員が二階に駆け上がっていくのを見て、もしや何か変な人を紹介されたのかもしれない、そう思いながらスレイたちが待っていると、先程の女店員が戻ってきた。


「お待たせしました。彼女がお探しのワーカーです」


 女店員の背後から出てきたのは少し長い真っ赤な髪と、眠そうな目が特徴の少女だった。

 着ている服はあまり上等とは言えず、何度も縫い直されているのか所々つぎはぎが目立ったが、まともな服を着れば確実に人目を引くだろうな、そうスレイたちが思うほどだった。


「……私はライアよろしく」

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