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お説教

ブクマ登録ありがとうございます。

 意識を失ってしばらくしてスレイは自分のお腹が圧迫されている感覚を受け目を覚ました。


「うっ、なんか重い」


 いったい何が乗ってるんだ?そう思いながら身体を起こして見ると、お腹の上で白髪の幼女が寝ていた。

 使徒の戦いのときにも力を貸してくれた幼竜、頑張りすぎて疲れて寝てしまった。可愛らしい寝息を立てていた幼竜の頭を撫でようと左手を伸ばしかけ途中で止めた。


「あっ、ホントに治ってる」


 ここに来てスレイはようやく、自分の左腕が再生していることに気がついた。

 マジマジと新しく生えた腕を見ていたスレイは、二の腕の辺りに切断されたときの傷口がくっきりと残っている事に気がついた。

 再生された腕の感触を確かめるために軽く動かしてみると、少し感覚が麻痺しているようだが斬られる前と比べても何ら遜色がない、普通の腕のように感じた。


『良かった、目を覚ましたのですね』


 声をかけられた方を見ると霊体のアストライアと人型のヴァルミリアが腰を下ろして座っていた。

 ヴァルミリアはスレイのお腹の上で眠っている幼竜を抱き上げると自分の膝の上に寝かせたのでスレイは身体を起こした。


「アストライアさま、それにヴァルミリアさまもご心配をお掛けしてしまったようですね、ごめんなさい」

「構いません、それでスレイ、腕と目はどうですか?おかしいところはありませんか?」

「腕は、感覚が麻痺しているみたいです………目に関してはよくわからないんですけど、なんかずっと靄みたいのがまとわりついている感じです」


 正確に言うと人の輪郭に薄っすらと靄のような物がある感覚だった。

 説明するとヴァルミリアが近づいてきて一言、失礼と告げてから目の辺りに手を当てる。


「問題はなさそうですね。私はユフィたちを呼んで来ましょう」

「お願いします………ってか、みんなはどこに?」

「あちらですよ」


 ヴァルミリアがユフィたちの方へと視線を向け、つられてスレイもそちらへと視線を向けると何やらノクトとリーフにコンコンっと何かを問い詰めれていた。

 距離があって聞こえないが何か嫌な予感がした。

 ヴァルミリアがユフィたちに声をかけると、ユフィがこちらにやってきた。


「良かった、スレイくん目が覚めたんだね」

「あぁ………それで、いったい何を話してたの?」

「うん。私たちのこと………その、転生者だってこと」


 ユフィの説明を聞いたスレイは、その話かっとスレイは納得すると同時に目を伏せた。

 確かに後でその話をすることにしたがその役目をユフィにさせてしまったことに、少し罪悪感を覚えた。

 リーフとノクトの方を見ていると困惑しているのだろう。

 出会ってからこれまで、あまり時間が経っていないのにこんなことを聞かされたら仕方ない。

 このまま二人が居なくなっても文句は言えない、スレイとユフィが同じことを考えていると、リーフとノクトがスレイとユフィの顔を見て告げる、


「お兄さん、お姉さんから話しは聞きました」

「うん………ごめん、ずっと黙ってて。怒ってるよね」

「いえ、私たちは怒ってるって訳じゃないです」


 そうなのかとスレイが二人の顔を見ると、小さくうなずいてくれた。


「ただ、なんと言いますかお二人のこと、どこか別の世界の人間なんじゃないかなって、思っていましたのでどこか納得しいると言うのが本音ですかね」

「わたしも、同じようなところです。それに、神様や使徒なんていう化け物とも戦ってるんです。今さら転生者って言われたくらいじゃ驚きもしませんね」

「うわぁ~、リーフもノクトもかっこいいな」


 っとはいえ二人から普段どんな目で見られていたのか気になったスレイとユフィだった。

 だけど、二人から拒絶されるようなことがなかったことがわかり、どこかホッとしてしまったのも嘘ではない。


「そんなことよりも、わたしさっきから気になってるんですけど」


 ズイッとノクトがスレイのことを覗き込んできたので、身体を後ろに引いてしまった。


「えっと………どうかしたの?」

「いえ、ヴァルミリアさまのお話では竜人に近くなると聞いていたので………同じですよね?」


 言われてみればとユフィとリーフもスレイのことを覗き込んでいた。


「見た目はいつもと同じですね。どこが変わったんでしょうか?」

「確か、竜人ってドラゴンみたいな角と翼があるんじゃなかったっけ、スレイくん生えてないの」


 興味が出てきたのかユフィ、ノクト、リーフの三人がペタペタとスレイの身体をまさぐり出した。


「いや、あのくすぐったい……ってか、やっぱり変化ないよな」


 みんなに身体を弄られても目立った変化が見られないが、こうしてなくなった腕が生えている時点で異常ではある。


「まぁ変わってないなら変わってないでそれでいいし、羽や角何てあったら生活に支障を来すって」


 そう話しているとユフィたちの目が驚きを表すかのように見開かれた。


「えっ、なにどうしたの!?」


 急にそんな顔をされたスレイのビックリして驚いていると、同じように驚いているらしいアストライアがスレイに話しかける、


『スレイ、その角はどうやって出したのですか?』

「はっ、角?」


 アストライアからそう言われたスレイは頭に手を触れると、こめかみの辺りになにか固くてすべすべとしたものが生えていることに気がついく。

 バッとスレイが頭から生えているそれに手を触れたまま、ユフィたちの方に視線を向けると、三人がコクコクと首を縦に降りながらユフィが空間収納の中から手鏡を取り出すと、それをスレイの方に向ける。


「おぅ、これは………うそん」


 鏡に写った自分の姿を見てスレイは驚いた。

 こめかみから後ろに伸びるようにまっすぐと生えているのは、宝石で例えるならオパールのような輝きをしているまさしく角だった。


「おぉ、まさしく角だ………変な感じ」


 普段そこに無い物があると言うのはかなり不思議な光景だ。

 そう思いながら頭に生えた角を触っていると、以外と固いな何て考えながら触るのをやめると、ユフィたちが物珍しそうに見ている。


「みんなも触ってみる?」

「触る!」

「触ってみたいです!」

「申し訳ありませんが失礼します」


 今度はユフィたちが物珍しそうにペタペタとさわり始めた。

 触られるのって以外にくすぐったいんだな、っと感じていたスレイだった。


「あの、どういう訳か角にも感覚は有るらしくて以外とくすぐったい──いって!?だれ角噛んだの!?」


 スレイが今までに感じたことの無い痛みを感じ、ユフィの持っている鏡を覗きこみ角を噛んだ張本人を見ると、背中から小さな羽を使って飛んでいる幼竜がスレイの頭に生えている角を噛みついている。


「コラ!やめなさい!」

「うみゅ」


 ヴァルミリアが幼竜をしかりつけて放してくれたが、よく見てみると角にくっきりと歯形が残っていた。

 触っただけだがこの角がどれくらい固いかはしっているので、その角に歯形が残るほどの噛み付きって、どんな顎の力をしているのかと驚いているとヴァルミリアが幼竜の頭を叩き頭を下げさせた。


「すみません、この娘には後でキツく言っておきますのでどうか許してあげてください」

「良いですよ。それより何で噛みついたの?」

「………………お腹へったの、ごはんたべたい」


 そういえばとお昼がまだだったなとスレイたちは思いだし、一度帰った方がいいなっと思いながらスレイたちは立ち上った。

 帰ったら事情を説明しなくちゃな、そう思ったスレイとユフィだった。


 ⚔⚔⚔


 ゲートを使って帰るとフリードとクレイアルラが出迎えてきた。


「よう遅かったな。あっちでしけ込んでたか───って、そんな感じじゃないな」

「スレイ、その傷。それにその腕はッ!スレイッこっちに来なさいッ!」


 即座に腕のことを見抜いたクレイアルラがスレイを呼び出すと、もはやボロキレと見間違うほどボロボロのシャツを剥ぎ取られ傷の確認を始める。


「あっちはルラに任せるとして、ユフィちゃん。何があったか話してくれるか?」

「はい、全部お話します」


 フリードに問い詰められ今までのことを洗いざらい全て話したユフィ。

 女神アストライアとの出会いやこの世界を作った神の目的、神の使徒との戦いのことなどをすべて。もちろん二人が別の世界からの転生者である事実は伏せてある。


「ふむ、神様にそれの手足として動く神の使徒、それと今まで戦ってきたと」

「ハッキリいうと、そんなことが有るのかと言われたら疑うしか無いわね……って言いたいけど、あんなの見せられたら信じるしかないわよね」


 フリードとジュリアは、リーシャとミーニャ、幼竜とヴァルミリアの四人と一緒にいる女神 アストライアの姿を見ながらそう呟いた。


 ユフィたちがフリードとジュリアにこの話をする前にアストライアには実体化してもらった。

 説明するなら紹介の必要があったからだが、いかんせん今のアストライアは実体を持っていないので現れた当初レイスだと思われるバニッシュを発動された。

 それでも消えなかったことで慌てだした二人を宥めてから説明をした。


「オレとしては、息子たちをそんな危険な戦いに身を投じさせるのは気が引けるんだが……」

「私もよ……えぇっと、アストライアさまでしたね」

『はい……なんでしょうか』


 ジュリアに呼ばれて側に近寄ってきたアストライアを見ながら、ジュリアはゆっくりと話始める。


「アストライアさま、事情はユフィちゃんたちから聞いて理解しましたし、息子たちが自分の意思で戦いに身を投じていることも理解しました」


 本当は心の何処かで納得し辛いことがあったが、それでも今はそれを胸のうちにしまったジュリアは真っ直ぐとアストライアのことを見つめる。


「……ですが、これだけは約束してくださいあの子を、いいえこの子達をみんな死なせないで。それが約束出来ないならあの子達の代わりに私たちが戦うわ」


 お腹に子供がいるのにいったい何を言っているのか、話を聞いていたユフィたちが慌て始めると、ジュリアの横顔を見たフリードがなにかをわかったらしくそっとユフィたちを止める。


『正直に言いますが、ハッキリいって命の保証はできません……ですがこれだけは言わせてください、私はあの子達を死なせたくはない、そのためなら力を使い私は消えても構わないと思っています』


 アストライアの本心からの言葉を聞いたジュリアとフリード、そしてどうしてこんな質問をしたのか理解できていないユフィたち。


「すみませんアストライアさま、どうしてもあなたの言葉からその言葉を聞きたかったので……良いわよねフリードさん?」

「あぁ、オレもそうだな、まだまだガキで頭に血の上りやすい奴ですけど、どうかよろしくお願いします」

『頭をあげてください、本来頭を下げなきゃいけないのは私なのですから』


 なぜかジュリアとフリード、そして女神 アストライアの二人と一柱による謝罪合戦がが始まってしまった。

 そこに上の部屋で身体検査を行われていたスレイとクレイアルラがそろって戻ってきた。


「あぁ~疲れた、って何してるんですか?」


 頭を下げあってきている両親と女神様を見たスレイは思わず声を上げて後ずさった。


「ちょうどよかったわスレイ。ちょっとこっちに来て座りなさい」

「えっ、どうして?」

「いいから正座しなさいッ!」

「はッ!はいッ!!」


 ジュリアが声を上げるとその迫力に負けたスレイはジュリアの前で正座した。

 今までなにも話さずに危険なことに身を投じてい事についてジュリアからお説教を受けることになった。


 ⚔⚔⚔


 久しぶりのジュリアからのお説教から解放されたスレイは、ようやく昼食にありつけれた。


「この歳になって親からマジで説教されるとは思わなかった……ってか母さん、血圧上がるとお腹の子の胎教に悪いよ」

「うるさいわぇ~、ユフィちゃん!ノクトちゃん!その子のお皿下げちゃって!」

「了解しました~」

「わ、わかりました」


 ピシッと敬礼したユフィと、さすがにかわいそうと思いながらもジュリアの命令には逆らえないので仕方がなくしたがったノクト、二人が仕方なくお皿を下げようとしたのを見て、椅子から立ち上がったスレイがお茶を飲んでいたジュリアに頭をさげた。


「ごめんなさいお母さん、許してくださいおろかな私めにお昼をお恵みください」

「仕方ないわね、リーフちゃん食べさせてあげて」

「了解ですお義母様!」


 恥ずかしいと思いながらも、スレイはリーフに料理を食べさせてもらっている。

 使えないのは左手だけなのだが、せっかくだからと言う訳のわからない理屈をこねられ、いつものように定番化してきたじゃんけんで勝ったリーフが、こうして食事の介添えをして食べさせてくれてるのだが、正直にいって恥ずかしくてしかたがない。

 ちらりとスレイが横を見ると、ミーニャと幼竜がこちらを覗き混んでいた。


「スレイ殿、あ~ん」


 差し出された魚の切り身を無言で租借するスレイにリーフは不満そうな顔をしていたが、なにが悲しくて幼い妹の前でこんな羞恥プレイを受けなければならないのかと思っていた。

 そんなスレイの横でお茶を飲んでいたユフィが、部屋に戻っていたクレイアルラが下に降りてきたのを見て声をかけた。


「あのルラ先生、お疲れ様です」

「ユフィ………すみませんが私にもお茶を」

「はい」


 ティーポットからお茶をカップに注いだユフィは、クレイアルラがお茶を飲んで一息ついたのを見てから声をかける。


「あの、先生。スレイくんの左手どれくらいで治るんですか?」

「そうですね………様子を見る限り問題はありません。神経の麻痺の方もすぐに消えるでしょうが、医師としてはしばらく経過を見たいところです」


 やっぱりそうか、そうスレイが思いながら左手を見ていると、クレイアルラがコホンっと一回咳払いをしたのでスレイが視線を向ける。


「あなたはすぐにでも次の大陸に移りたいんですよね?」

「使徒がいつ来るかわからない以上、長く留まるわけにはいきませんから」


 一箇所にとどまる方法もないことはないのだが、現状ではその手段が取れないためどこかにゆっくり腰を落ち着けるのはもう少し先のことになるだろう。


「そうですね……仕方ありませんが、数日は逗留してもらいます」

「わかりました」

「それと、旅に出ている間も身体に異常を感じたらすぐにでも私のところに来るように、これは守ってください」

「はい」

「それともう一つ、しばらくの間はこれを身に付けておきなさい」


 クレイアルラから渡されたのは包帯だったが、一度ほどいてみると包帯の布になにかの術式が書き込まれている。それをスレイが見ていると、ユフィが横からかっさらい術式を読み解いている。


「固定化の術式と治癒の術式、他にはよくわからないですけど」

「本来は移植後に巻き付ける包帯でしてね、移植した肉体の拒絶を防いだり、他種族からの移植では身体を侵食されることもあるのでそれを防ぐための物です」

「あの、この腕は移植した訳じゃ無いんですけど?」

「わかっていますが、竜の腕因子は強力ですからね。力に慣れるまでは付けておいてください」


 クレイアルラがスレイの左腕に巻いている包帯を外し、今渡したのと同じ包帯をスレイの腕に包帯を巻いた。


「本来なら特殊な魔法薬でペイント施すのですが、手持ちがないので出来るまではこれで我慢してください。それと竜人化も極力避けるように」

「竜人化って、これのことですか?」


 スレイが頭に角と背中に翼、そして尾てい骨の辺りに尻尾を出現させた瞬間、ユフィ、リーフ、クレイアルラの三人から拳骨を受けた。


「なっ、なにも………三人で殴らんでも」

「言ったそばから竜人化するバカがいますか!」

「すみませ───イってぇえええ―――――――ッ!?」


 今度は尻尾から今までに感じたことの無い強烈な痛みを感じたスレイは、椅子の隙間から垂らしている尻尾を持ち上げて上に乗って噛みついている幼女を睨み付ける。


「あのさぁ、前から思ってるんだけど、何でボクの角やら尻尾をやたら噛みたがるの?」

「うぅ~ん……美味しそうだから?」


 疑問に疑問を返すのはやめてほしい、ボクは補食対象なのか?、そんな二つの疑問がスレイの頭の中に浮かび、どちらを言ったらいいのか分からずに、無言になってしまった。


「ハイハイ、そんなことしてないでご飯食べちゃいなさい」


 ジュリアに言われて不満ながらもスレイは食事を再開するのだった

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