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今後の対策

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 この日、生まれてはじめて父方の祖父と対面したスレイは、なんとも言えない居心地の悪さを感じていた。

 場所はレジスタンスが隠れ家としている小屋の中の一室でスレイとフリード、そして祖父のバン・アルファスタの三人が今後のことについて改めて話し合っていた。


「「「………………」」」


 話し合っていたのだが、フリードとバンがお互い顔を見ずにそっぽを向いているせいで全く話が進まない。


「えぇ~、あぁ~……とりあえず、何か話さない?」


 重苦しい沈黙に耐えかねたスレイが堰を切るとそっぽを向いたままフリードが話しだした。


「おい親父、あんた今まで何してたんだよ?」

「愚息を止めるために仲間を集めていたに決まっておろう」

「そうじゃねぇよ!あいつがあんなことをする前になんで何もしてやれなかったって言ってんだ!」


 最もの意見だとスレイは思いながらバンの方を見ると、バンは椅子を蹴倒しバシンッとテーブルを叩いて叫んだ。


「うるさいわいこの放浪息子が!元を正せば長男であるお主がこの街を出ていったせいではないか!」

「オレのせいだって言いてぇのか?」

「そうじゃ!お前さえ出ていかなければあやつがこんなことを起こすこともなく、今もこの街は平穏になっておったわ!」


 なんと身勝手な事を言う爺だろうと、スレイは思わず言い返そうとしたがそれよりも先にフリードが叫んだ。


「あぁ?オレが出ていったのはあんたのせいだろうが!」

「わしが何をしたと言うんじゃ?」

「忘れたとは言わせねぇぞ!あんたはオレがガキん時、なにかあるとオレやお袋を殴る蹴るの暴力ばっか!!お袋が出ていったのもそのせいだろうが!」


 バンの胸ぐらを掴んだと同じように立ち上がったフリードが一気に叫びだした。


「あいつがなんであぁなったのか、今ならよく分かるぜ!あいつを歪めたのはあんただ!」

「実の親に向かって何たる言いぐさじゃ、この不良息子が!」


 掴んだ手を振り払ったバンは、見苦しく言い訳を並べて事あるごとにフリードのことを罵倒した。

 なんだかはじめに聞いていた話とは随分と印象が違うと思いながらも、少し昔の記憶が蘇ってしまったスレイはどうにか話を修正しようとした。


「ちょっと、父さんも、えっと……おっ、おじいちゃんも、いい加減にして」

「悪いがスレイ。こいつには言っておかなきゃならねぇんだ!ちょっと黙ってろ!」

「黙るのは貴様じゃ!大体なんじゃ、貴様のような愚か者がわしの知らぬところで父親になんぞになりおって!まともに育てられてはおらぬではないか!」

「あんたに育てられたオレやグレイと違って、全員まともに育ってるよ!」

「育ってはおらぬではないか!見てみぃ貴様が育てたせいでスレイまでもが冒険者なんぞになってしまっておるではないか!」

「スレイは関係ねぇだろ!それに、こいつは自分で夢を追いかけて冒険者になったんだよ!」

「何が夢じゃ!アルファスタの家を失ってまで負う夢などあっていいわけないんじゃ!フリード!命令じゃ、お前の子供らを即刻わしの養子として引き取るぞ!」

「「はぁ!?」」


 なんでそうなるんだと、スレイとフリードの声がシンクロする。


「いい加減にしろよクソジジイ!あんたのそれがグレイを変えたってのがまだわかんねぇのか!」

「親に向かって何という口の聞き方じゃ!表に出ろフリード!!」

「上等だクソジジイ!現役の冒険者なめんなゴラッ!!」


 どこまでも予想の斜め上を行くバンが剣を取ると、先程の言葉についにブチギレたフリードも立ち上がって応戦する構えを取り、各々が手にした剣を抜こうとした瞬間、遮る影があった。


「二人共ストップ!ストップッ!今そんなことで喧嘩してる場合じゃないだろ!」


 このままでは埒が明かないと思ったスレイが仲裁に入った。

 もちろんスレイ自身はフリードに味方をしたいのだが、こうなってしまっては仕方がない。双方どうにかし矛を収めてもらいたいのだが、すでにそのレベルの話はとうに過ぎてしまっていたようだ。


「止めるんじゃねぇスレイ!このクソジジイは確実に殺す!」

「父さん!それはまた後にして!」

「黙っておれスレイ!この不良はわしが修正するんじゃ!」

「じいちゃんもいい加減に黙って!」


 スレイが仲裁に入るも二人の口論はヒートアップしていきもはや止めることは不可能。

 そしてついにそのときは訪れた。

 フリードからすれば長年続いている親子喧嘩に終止符を打つべく、バンは愚かな息子の性根を叩き直すべく剣を抜いてやり合おうとした。


「もういい、たたっ斬る!」

「……あのっ」

「貴様なんぞ死んでしまえフリードッ!」

「……だから」


 もはらや止められない二人の口論はついに剣を抜いての切合に発展しようとしたのだが、そんな二人よりも先にプッツンきた人物がいた。


「いい加減にしろって言ってんだろうが!そんなに殺り合いたいんだったらなぁ!ボクが二人まとめて相手してやる!かかってこいやゴラァ!まとめてぶっ殺してやる!!」


 我慢の限界だったスレイがぶちギレながら二人に向かって魔道銃を発泡した。


⚔⚔⚔


 それから、突然響き渡った激しい激闘の音を聞き付けてやってきたユフィとリーフ、そしてクレイアルラの三人と、この隠れ家の提供者でありレジスタンスの一員であるおじさんが駆け付けた。

 その場で観たのはスレイとフリード、そしてバンの三人による激しい激闘を繰り広げるの姿であった。


 結局、駆け付けたユフィたちによって取り押さえられたスレイたちは、第三者の立ち会いのもと話し合いが再開することになった。

 ちなみに無気力になったスレイはというと、なぜか絶賛ノクトの膝の上で横になっていた。

 なぜこうなったかというと、ノクトがなにか元気になる方法がないかと考え、ついでになにか恋人らしいことがしたいことがしらいとユフィに相談したせいだ。

 相談を受けたユフィ曰く、前にスレイくんがこうなったときに膝枕をしてあげたら元気になったよ。という言葉を信じてスレイを膝の上に寝かして髪の毛を撫でている。

 ちなみにその提案をしたユフィは、ミーニャを連れて魔法の特訓が出来そうな場所を探すために山の散策に出掛けてしまった。


「えへへ~お兄さんがわたしに甘えてくれてますよ~」


 ただ無気力になっているだけなので甘えているわけではない。

 スレイもこの状況なため誰もその事にツッコミを入れずにいたが、なんとも幸せそうな顔をしながらスレイの頭を撫でているノクトの横でもじもじとなにか落ち着きがなく二人の様子を見ているリーフの姿があった。


「ノクト殿~、私もスレイ殿を膝枕したいので変わってください」

「もう少しいいじゃないですか」

「ですが……おや?」


 リーフが樹の影からこちらを見ているリーシャとパーシーの姿を見つけ、立ち上がったリーフが二人の側に歩み寄って、目線を合わせるようにしゃがんで話し出した。


「どうしたんですか、そんなところで」

「あのねおにーちゃん、お元気ないからしんぱいなの!」

「リーシャちゃんはお兄ちゃん想いの良い子ですね。パーシーくんもですか?」

「ぼくはリーシャちゃんを守ってるの!」

「それは立派な心がけですが、パーシーくんはまだ子供なんです。無理をしてはいけませんよ。いいですね?」

「は~い!」


 どうせなので二人を連れてスレイとノクトの方に戻ると、なぜか立ち上がったスレイがいた。


「スレイ殿……もう平気なのですか?」

「あぁ、心配かけてごめんね。もうへいきだから」

「そうですか……ちょっと残念ではありますね」

「……じゃ、じゃあ次があったら頼んでもいいかな?」

「!はい!」


 リーフが嬉しそうになったのを見てスレイは笑いながらリーフの頭を撫でてから、話し合いに戻ると二人に声をかけると、空間収納から六連式ミサイルポット型魔道銃 カペラを取り出して肩に担ぎ、対物ライフル型魔道銃 アトリアを背中に背負い、二挺一対サブマシンガン型魔道銃 カルトス&ポルックスを左右にかけて準備完了!だけど、行く前の挨拶だけは忘れてはいけない


「じゃあちょっと()()()()に行ってくるね」


 良い笑顔とは裏腹にあからさまに話し合いに行く装備ではない、カチ込みにでも行くようなその装備にノクトとリーフが揃って


「「いったいなにしに行くきですか!」」


 二人からの息の合ったツッコミを受けたスレイは、なぜか親指を立てて良い笑顔のまま答えた。


「えっ、話し合いだよ」

「違いますよね!あからさまに話し合いではなく、果たし合いの間違いですよね!」

「なにいってるんだい、ちゃんと話し合いに行くっていってるじゃん」

「じゃ、じゃあ、その物騒な魔道銃はなんなんですか?わたし担いでるのや背中の始めてみたんですけど」

「ん?次に父さんたちが喧嘩始めたらまとめて吹き飛ばしてやろうかなって、ほんとはこっちが良いかなっと思ったけど魔力が溜まるまでに時間がかかるからこれをね」


 っと、ノクトに話ながらスレイは空間収納から身の丈ほどの魔道銃、バズーカ型魔道銃 サルガスを持ちながら話をしていると、しばし二人が絶句したように顔を固まった。

 少ししてからなにを思ったのか二人が顔を見合わせて、そして同時に頷きあうとノクトが杖を構えて、リーフが身体に闘気を纏い両手にはナイフが握られていた。準備を終えた二人が同時に動いた。


「お兄さん、まだ早まることはありません!──アースバインド!」

「うぉ!何すんのノクト!?」

「スレイ殿!まだ間に合いますからそれを置いてじっくり話し合いましょう!」

「いやいや、危ないってリーフ!?」


 ノクトがアースバインドを発動した瞬間、スレイは真上に跳ぶと同時にリーフも跳び上がり両手に握ったナイフで、両脇に吊るされているサルガス&ポルックスの肩かけのベルトを斬ろうとした。

 スレイがそれを察して手元に風を作り出し身体の向きを代えてリーフのナイフをかわし、そこで魔法の使えないリーフはこのまま空中には跳び続けれないそう思ったが違った。


「逃しませんよ!」

「うをっ!?何その飛び方!?」


 リーフは闘気を使い足元に闘気の力を爆発させ、その威力によって空中にとどまり続け、またしても魔道銃のベルト部分を狙ってくる。

 リーフの攻撃をかわすのに集中しておると地上から魔力を感じたスレイがそちらを見ると、どうやらノクトが魔法を発動させているようだった。


「大人しく捕まってください!───アイス・ローズ!」

「危なッ!?──シールドッ!?」


 ノクトが氷魔法で作り出した薔薇と茨の鞭がスレイを捉えるべく放たれると、それをシールドで防ぎながら地面に降り立つと、降参の意思を表すように両手を上げた。


「タイム、タイム!二人とも行きなりどうしたの?何で行きなり攻撃してくるの?」


「お兄さんがそんなものを持って行こうとするからです!」

「スレイ殿がそんなものを持って行こうとするからです!」


 それからはノクトとリーフによる説教じみたお話を聞かされることとなったスレイ。


「えっ、これどういう状況なのかな?」


 その時、ミーニャと共に山の中を探索していたユフィが戻ってきて、驚いた表情で訪ねた。


「ユフィお姉さん!良かった、聞いてくださいよ!」


 戻ってきたユフィにノクトが事情を説明すると、すぐに納得した。


「なるほどね。つまりスレイくんが武器を持っておじさんたちの話し合いの席に行こうとしたから、二人は武力行使で止めようとしたってわけだね」

「そうなんです!ユフィお姉さんもなんとか言ってください!」

「まぁ~二人の言い分もわかるんだけど、スレイくんの言いたいこともわかるかな」

「わかってくれるかユフィ!それじゃあ行っても──」

「ダメに決まってるでしょ!剣くらいは許すけどそんな重武装は没収します!──アイスロック!」


 瞬時に氷漬けにされたスレイは動けない隙をついて三人がかりで魔道銃を全て取り上げられてしまった。


「ちょっとユフィさん、これはなんでも酷すぎません!?」

「酷くありませぇ~ん」

「ユフィ殿。念のため剣も預かりませんか?」

「うぅ~ん。それはダメかも」


 剣まで預かろうと言う意見はユフィが却下した。

 意外なことに二人共どうしてかと理由を聞く。


「おじさんはみんなもわかると思うけどかなり強いし、あのおじいさんも剣の心得はあるみたいだから、剣まで取り上げちゃうとスレイくんが危ないよ」


 バンの方はまだなんとかなるかもしれないが、フリードを相手取った場合無刀でやり合うなど死に等しいと言ってくれたためどうにか剣を取り上げられずに済んだ。


「ありがとうユフィ。じゃあ行ってくる」

「あっ、待って。やっぱり心配だからリーフさんついて行ってあげて」

「えぇ。承知しました」


 話し合いの場所に戻る条件としてリーフの同行を約束されたスレイは、自分はみんなに欠片も信用されていないのかとちょっと泣いてしまった。

 部屋の前で大きく深呼吸してからドアノブに手をかけようとした瞬間、ノブが回され扉が開いた。


「あらスレイちゃんにリーフちゃん、どうしたのそんなところで」

「お義母様、なぜこちらに?」

「ルラからヘルプが入ったのよ。あの二人のせいで」


 こっそりと部屋の中を覗いてみると、未だにあの二人がやり合っていたのでそっと扉を締めた。


「それでお話は終えられたのですか?」

「えぇ、どうにか終わりましたよ」

「先生……なんかお疲れですね?」

「スレイが暴れだした理由がよくわかった。そう言っておきましょうか」


 半眼を開いて薄く笑うクレイアルラ、その表情から今の今まであの二人をなんとか押さえ込んで話を進めていたのだろうと、その時の光景を思い浮かべながら察したて同情の眼差しを送るのだった。

 そんな二人を休ませるために、外に用意した椅子に座らせ──フリードとバンはもちろん不参加──ついでなのでみんなで話を聞くことにした


「それでお義母様、どうするのですかこれから?」

「マリーたちは村に返すつもりよ」

「そうか、だが大丈夫なのかゲートは使えないとか言っていたはずだが」

「結界はあの街の中だけです。先程確認しましたがここではゲートが使えます」

「そうね~、ここに居ても~私たちは足手まといにしからならから~大人しく帰りましょうか~」


 言葉では納得してるようだが、その表情はとても悔しそうだった。友人が大変なときに手助けが出来ない、そんな思いがマリーにはあった。


「じゃあ母さんたちも村に帰るんだ」

「いいえ私はこっちに残るわ」


 ジュリアの言葉を聞いてスレイは眉を潜める。


「母さんの呪いはといてるから、もうここにいる必要はないんだよ?それなのに」

「スレイちゃん、私だってフリード・アルファスタの妻、ジュリア・アルファスタよ。夫のお家事情なら最後まで側で見届ける義務があるわ。それにフリードさんも説得はしてる」

「………………………わかった。父さんも納得してるっていうなら良いけど、無理しないでよ母さん」

「言われなくてもわかってるわよ。それじゃあマリー、娘たちのことを」


 頼むわね、ジュリアがそう言おうとしたとき、その言葉を遮るようには


「お母さん!私も残るよ!」

「ミーニャ……でもね、あなたたちは狙われてるのよ。ここは危険なの」

「わかってる……でもお母さんやお兄ちゃん、お姉ちゃんたちが戦ってるのに私だけ安全な所になんていたくないよ!」

「……お義母様、ミーニャちゃんはわたしが守ります!」


 真剣なミーニャの顔に押されていたジュリア、そこにノクトの援護が加わった。


「わたしは援護の魔法が得意です。ミーニャちゃんを守ることは出来ます」

「でもねノクトちゃん」

「平気です!これでも冒険者の端くれですし、ミーニャちゃんはお友だちです。守らせてください」

「……わかったわ。それじゃあリーシャちゃんだけ……も、無理なのよね」

「うん!リーシャもいっしょにいる~」


 リーシャの無邪気な答えにジュリアが大きなため息をついている。


「それで、家のことはどうするって?」

「それにつきましては、彼らに任せるつもりですよ」


 彼ら?スレイたちがクレイアルラの言葉に疑問を覚えている。


「あたしらさ」


 聞き覚えのある声にスレイは振り替えると、浅黒い肌をしたダークエルフ シャノンがそこにいた。



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