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恋、想ふ日は  作者: 小花衣 杏佳
9/10

終章

最終話です。

お付き合いいただき、ありがとうございました!!


最終話なのに短くてごめんなさい。

白露が桜の君と再会を果たしたのは、翌年の春。

昨年と同じ、桜の君と初めて出会った時のように、桜の花が満開の美しい日だった。


内大臣邸に呼ばれた白露は、より一層、凛々しく美しい青年へと大きく成長していた。


「白露様」


懐かしい声が白露の名を呼ぶ。

その女人は、この日を表しているような、見事な刺繍が施された桜色の婚礼衣装を着ている。


「桜の君」


白露がそう呼ぶと、女人は艶やかに微笑んだ。

御簾が少しばかり開き、繊手が手招きする。


「こちらにいらして」


「仰せのままに」


桜の君は一昨日見た時よりも、ずっとずっと美しく、輝いていた。今日の逢瀬が終わり、三日の餅を食べれば晴れて二人は夫婦となる。


瑞々しい薔薇のように赤い唇に口づけを落とし、桜の君を優しく腕にかき抱く。


春の夜は短く、長い。


桜の花は夜の闇に浮かび上がり、周りの正気を奪ってしまうほどに美しい。


風が吹く。


甘やかに渦を巻いた桜の花びらが、夜の闇に消えて行く。


白露は、自らの桜をこの上なく愛おしむ。


例え、散る時が来ても。


白露はこの桜を忘れることはない。


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