終章
最終話です。
お付き合いいただき、ありがとうございました!!
最終話なのに短くてごめんなさい。
白露が桜の君と再会を果たしたのは、翌年の春。
昨年と同じ、桜の君と初めて出会った時のように、桜の花が満開の美しい日だった。
内大臣邸に呼ばれた白露は、より一層、凛々しく美しい青年へと大きく成長していた。
「白露様」
懐かしい声が白露の名を呼ぶ。
その女人は、この日を表しているような、見事な刺繍が施された桜色の婚礼衣装を着ている。
「桜の君」
白露がそう呼ぶと、女人は艶やかに微笑んだ。
御簾が少しばかり開き、繊手が手招きする。
「こちらにいらして」
「仰せのままに」
桜の君は一昨日見た時よりも、ずっとずっと美しく、輝いていた。今日の逢瀬が終わり、三日の餅を食べれば晴れて二人は夫婦となる。
瑞々しい薔薇のように赤い唇に口づけを落とし、桜の君を優しく腕にかき抱く。
春の夜は短く、長い。
桜の花は夜の闇に浮かび上がり、周りの正気を奪ってしまうほどに美しい。
風が吹く。
甘やかに渦を巻いた桜の花びらが、夜の闇に消えて行く。
白露は、自らの桜をこの上なく愛おしむ。
例え、散る時が来ても。
白露はこの桜を忘れることはない。




