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開闢のミーディアム ~人ならざる者が見える辰美の視点~  作者: 犬冠 雲映子
悪い魔法使いと越久夜町編《人ならざる者が見える辰美の視点》
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赤眼のカラス 4

 アパートに帰って玄関のドアを閉める。あの後参拝して、普通に帰ってきた。人ならざる者に遭遇(そうぐう)する事もラッキーな出来事も、何事もなく帰路に着いた。

 カラスの大群もあれから嘘のように消え去り、もくもくとした雲が流れていく。本当に長閑(のどか)な町だ。


 ドアによりかかり、一息ついた--ふいに左手が激しく痛む。骨から、体の内側から何かが悲鳴をあげている。


「い、いたいっ!」

 右手で押さえつけ、痛みに(うずくま)る。ヒリヒリと皮膚がやけるような不穏な熱さが走った。

「なんなのよっ!」

 慌てて、転がるように電気をつけると手が獣びてきていた。鋭い爪に薄いクリーム色の毛並み。薄らと肉球らしきものも出来ている。

 五本指だけれど、これは犬の手?


「それはまずいな」

「は!」

 いつの間に部屋にいる犬人間にびっくりするも、彼は何の気なしにシンクに腰掛けていた。灰色びた毛並みが蛍光灯に反射して、実態感を醸し出している。

「それは俺と同じく天の犬になってしまう予兆だ。」

「えっ」

「いづれそれが進めば、こんな風に毛むくじゃらになっちまうんじゃないかなあ?」

 毛並みを整えながら、彼は言う。


「どうすれば止まるの?!」

「それにはこの時空をハッピーエンドにするしかないのさ。」

「ハッピーエンドって、ゲームとかじゃないんだからそんなの無理だよっ」

「上位の者にしたらあんたらの世界はゲームかジャンク扱いだろうよ。」

「………な、なによそれっ!」辰美の罵倒を犬人間全くもって気にしていない。その様子にモヤモヤするも、何もできそうになかった。

「私はそういうの、あまり好きじゃない。誰かの人生が遊び道具になるなんて、そんなの--」

「へえ。意外だな。」

 心外そうに犬人間は言う。


「だいいちっハッピーエンドって誰の終わりなのよ?私?それとも--」

「越久夜町に住む主要人物だ。神や、人ならざる者……それと人間。お前に関わってくる人物は必然的にストーリーに選ばれている。それが特別かなんてのは関係ない。時空の流れを形作る歯車でしかないのだよ。」

「……意味不だけどさあ。はあ、分かった。誰も不幸にならなければいいんでしょ?」

「そうとも受け取れるな。例えばの話、提案だがね。皆を満足させるのはどうだ?」

「えっ、どうやって?」

 目を丸くした辰美へ彼は告げる。


「お前に関わってくる人物は皆、なにかしら不満や歪みを持っている。それを解消してやるとかな。それがハッピーエンドへの近道かもしれんぞ?」

「あたしはそういう人柄じゃないんだけど」

「役に徹するんだ。犬っころになりたくなければな。」

 手を見せびらかし、彼は皮肉屋な顔つきで笑った。

「わ、分かったわよ!役に徹してやるよ!」

「お、覚悟ができたか。偉いぞ〜」

「バカにしやがって!」


 はぐらかされたり、バカにされるかと辰美は構えた。だが犬人間は真顔で、神妙な顔つきで言い放った。


「それとな。越久夜町の時空を存続させるんだ。」

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