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イズナ使いの異聞奇譚「見慣れない少女」

久しぶりに投稿しました

 車庫にし舞い込んでいた自転車が動くか確かめ、荷物かごにバッグを放り込む。まずは遺品の状態と規模を見積もり遺族と話し合わなければならなかった。プロの遺品整理士ではないのだからお客を心置き無く満足させることはできないが、あちらも承知だろう。


 町の外れは山道を少し登り、自然に溶け込みそうな私道の突き当たりにある古民家だった。先に待機していた遺族が自転車でやってきたミドリに苦笑する。恥ずかしいが車は持っていないのだ。

 古民家の中はカーテンが閉まり薄暗い。亡くなったのは冬で、発見されたのに時間がかかったそうだ。いわゆる孤独死である。当人がボケてしまい心配している矢先にすぐ亡くなったのか、はたまた…。


 家族間の込み入った話を聞く気はない。どこの家だって何かしら歪みはあるのだ。

 業者が清掃した後再び埃を被り、まとめられた荷物を見やる。既に整理されていて助かった。


 見積もりと遺族との相談が終わり、やっとこ肩の力が抜ける。送って行くと言われたが遠慮しておいた。やはりまだ営業は慣れそうにはない。


 帰り道あれほど汗だくになって()いだ坂はなんとも味気ないものに変わる。木々の濃ゆい匂いを含んだ風が体を冷やす。ペダルをゆるゆると意味なく動かしながら、ゆっくりとした速度でくだる。

 ふと人の気配に自然と視界がさ迷う。


 道祖神の前で青白い肌を晒した少女が佇んでいた。足元には野良猫が何匹か集まり、何かを食べている。可愛らしい夏服の制服と若々しい木々の新緑が視界に映える。

 見慣れない制服だ。


 独りで山道にいるなんて。危なっかしいにも程がある。

 幽霊。馬鹿げた言葉が脳裏を過ぎり苦笑する。イズナを可視できるこの眼は幽霊や他の怪異を見定める力を持ちえていなかった。それが普通なのだ。

 隠された世界を見つめてしまう眼は、反対に向こう側の住人に見つめ返されてしまう。


 おっかないモノはイズナだけで十分だ。

 少女はちらりとこちらに気づき、猫を撫でるのかしゃがみ込んだ。

 老人やお節介な者なら声をかけるのだろうが、自分はそんなお人好しじゃあない。少女の存在を忘れようと、自転車を漕ぐことに集中する。坂を下っていると頭上で騒がしい音がした。

 ヘリコプターだ。警察の物かとチラリと垣間見る。(民間機…?)


 警察のカラーは印象に残る、一目でわかるように。ここは標高の高い山間部ではないにしろ遭難者が出る。登山者が無名な山を登ることもある。ここらでは珍しくないのだ。しかし予想を裏切った。どこの者か判別のつかないヘリコプター。

 バタバタと耳障りな音を立てながらどこかへ飛んでいく。緑は物好きなやつもいるものだと、帰路を急いだ。

 

感想まってます!

2019/12/26 題名を「イズナ使いの異聞奇譚」に変えました。

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