開闢のミーディアム 2
「では蕃神の光者が来ているし、蕃神どもの真似でもするか」
「鬼神さんも蕃神の光者になったんだ!」
彼は頷いてはにかんだ。「まぁね」
「さあ、仙名 麗羅よ。地球の審判員よ。お前は地球の中心を、公認を誰に任せる?」
ユートゥーが改まり、白々しい咳払いをした後問うてきた。
「見水 佳幸。貴方に任せる」
佳幸は終わりたくないと願っていた。そして光路と何か約束しているかのような口ぶりであった。
彼女に地球を任せる。罰を下す訳では無いが、償いながらあの星を守って欲しい。
「では仙名 麗羅。お前はどうする?輪廻を巡るか、無明に還るか?」
「私…には…家族も家もない。見車 スミルノフによって作られた存在。けど、アタシは…仙名 麗羅は!」
息を精一杯吸い込み、宣言した。
「この町で佐賀島 辰美として越久夜町に孵る!」
眩い月光が月の子の瞳孔から漏れ出てるやキラキラと瞬き、爆発した。
「アタシがハッピーエンドだと決めたら、アタシ自身はハッピーエンドを迎えられたんだ!」
「賛成する者は拍手を」
鬼神とユートゥーが拍手してくれる。嬉しくて彼らにお礼を言う。
「あ、ありがとう」
「じゃあ」
月光に包まれ、辰美は帰れると安堵した。しかし一人、宇宙兎は待ってと近寄ってきた。
「最後に、顧兎に、アルバエナワラ エベルムの魂をくれないか?」
ユートゥーが笑みをなくし、陰鬱な様相で言ってきた。
「どうやって渡せばいいんですか?」
「手を握ってくれれば、こっちで何とかするよ」
「分かりました」
半獣の不思議な手は暖かく、ウサギ特有の毛並みがふんわりとしていた。目をつぶりエベルムを脳裏に浮かべる。
「ティエン・ゴウだ!」
──俺は、変わってしまっタのか?
「アルバエナワラ エベルム」
「光を食べるバケモノ」
──自分は誰だ?確か■■■って名前だったはず…
──■■メ?思い出せナイ。
彼はいつしか宇宙語で「アルバエナワラ エベルム」と呼ばれ、指名手配された。
──どこに行っても嫌われ者か。笑えるな。
宇宙にいる生命体から「光を覆い、神を喰らうバケモノ」という意味で罵られた。
なぜならば事の始まりは、エベルムはとある時空で顧兎に近づくために月神を最初に食べたからだ。味を覚えたエベルムは──
──太陽神と月神がいる世界は完全な世界に近く、とてもおいしい。だから異常な執着を持っていた。
──頭の中が掻き回されるみたいだ。まともな思考ができない。俺はどうなるんだ。ユートゥー、お前に会う事はできるのか。
──ユートゥー。
「エベルム、いや、■■■。お前はもう、私を探さなくていいよ」
苦悩していた天の犬は虹色の目を見開いた。




