可哀想 1
私は佳幸。都心から少し離れた市に住む、落ちこぼれだ。
嫌いだった。人生を謳歌している奴らが。
金持ちが。自由に生きている奴が。
みんな嫌いだった。
──見水 佳幸はクラスメイトとは絡まず教室の隅にいる、大人しい、人畜無害な女子高生三年生であった。
清楚な容姿をしていたけれど、地頭が悪く、成績は良くなかった。家庭環境も最悪で常に貧窮していた。
クラスメイトからは大人しい行動から、面倒事を押し付けられ、学費やらでバイトに明け暮れていた。
そんな彼女は、裏では援助交際をしてお金を稼いでいた。
私はクラスメイトの佐賀島 辰美を毎日横目で見ていた。それは友愛や恋愛感情でなく、劣等感での執着を持って睨んでいた。
彼女の全てが許せなかった。気に食わなかった。
金持ちで愛想も良く、皆から受け入れられている─ように見えた。
自分の境遇と比べ、彼女の人生をめちゃくちゃにしてやりたいと思っていた。破壊して、あの明るい笑顔を曇らせてやりたい。
日に日にその思いは強くなった。
…けれど、何故、佐賀島 辰美なのかは分からない。他に幸せそうな奴は五万といる。だが佐賀島 辰美だけは許せなかった。
佳幸は辰美の、裕福な家庭を築く父は女遊びが激しく家族を困らせているのを、直ぐに女に手を出す事も。援助交際で得た噂で知っていた。
わざと父に近づき肉体関係を持つ。金もむしり取るつもりだった。
そして佳幸はわざと、辰美の父親は女子高生と付き合っていると噂を流した。
そして馬鹿にし、自分と不倫していると辰美へ言った。愛人になり、家庭をめちゃくちゃにしてやるとも宣言した。
ある日、二人は口論になり、朝の教室で辰美は佳幸を平手打ちしてしまった。佳幸が父にペンダントを買ってもらった事を自慢したのだ。
何も知らない周囲の人々は辰美が悪いと判断した。ただペンダントを自慢しただけなのに、と。
清楚な佳幸の裏の顔を知らないクラスメイトは、辰美の行動が理解できなかったのだ。
それからいじめにまで発展し、辰美の様子を見て、さらに優越感に突き動かされ、追い詰めた。
私は、嬉しかった。クラスメイトが味方してくれた。辰美が苦しんで笑顔を曇らせた事。
皆、騙されて馬鹿みたいに見える。それが愉快で仕方なかった。
私の。
私の記憶を。
「私の記憶を覗き見ないで」
少女が憎悪に顔をゆがませ、言い放った。




