表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
326/349

太陽と金星 3

「なんでユートゥーに会いたがったの?」

 車の中で、車窓を眺めるまつろわぬ星神に尋ねた。彼はわざと触手を蠢かして遊んでいたが、ふと静かになる。

「太陽の子の世界に帰れるか、相談したかったんだ」

「え!」


「オーバーリアクションだなぁ。オレはこの世界にとって用済みなんだよ」

「悲しい…」

「悲しい?!」その言葉を聞いた天津甕星と有屋が揃って驚愕した。


「何でちゅかぁ〜?辰美ちゃん、オレに情でも移っちゃったんでちゅかぁ?」

「だって悲しいじゃん!いなくなるなんて!」

「貴方ねえ。コイツは町を引っ掻き回してきた悪神なのよ?」

「私には何もしてこなかったし」

「はあ…よく分からないわ」


 呆れ果てた秘書に、ゲラゲラと悪神は笑った。「サイコーだね!辰美ちゃんは!」

「そうだなー。忘れないでくれよ、違う世界に行っても」




 ペンションのドアを叩くと、ゆっくりと鍵が開く音がした。

「待っていたわ」

 ドアを開けると、彼女は出迎えてくれる──が、二人に紛れ込む天津甕星を露骨に嫌悪した。

「神威ある偉大な星。アポをとってからきなさい」

「いやぁー、オレぁ携帯電話持たない派なんでねぇ〜」

「気に入らない。何なのよ」


 すると彼はヘラヘラしながらもしっかり扉を掴み、詰め寄った。

「町を出るから最後にお話でもどう?」

「…嘘じゃない?」

「うん」

「分かった。積もる話もあるでしょうから、上がりなさい」


 敵意を隠さず歓迎すると別荘の奥へ行ってしまった。仲の悪さに辟易するが、天津甕星は気にしていない。

「あーあ。カッカカッカ、怒っちゃってさぁ」

「もうちょっと穏便な言動をしなさいよ…」

 ヒヤヒヤしている有屋に同情する。別荘に入ると小綺麗に掃除され、春木専用のデスクもあった。


(緑さん大丈夫かなぁ)


「さあ、お茶でも飲みましょう」

「ジャア、遠慮なく!」

 フォークを使わず鷲掴みにしてショートケーキを貪る天津甕星を、彼女はジロリと嫌悪した。


「やっぱ甘味ってのはいいなぁ!人間は罪なモンを作ったよ」

(ああ…私が餌付けしなければ)

 アイスやお菓子、ジュースをあげていた記憶が甦る。彼は甘い食べ物に魅力されているらしい。


「テーブルマナーがなってないわね」

「野郎にマナーなんてイラネーだろうが」

「神霊たるもの紳士的でいて欲しいけれどね」

 蛇のような長い舌で指についた生クリームを舐めとる様子に更に苛立っている。

「あまつ──」

「最高神。お前に話したい事がある」

 甘味を堪能していたはずの悪神はいきなり神妙な顔で言った。


「…何?」

「オレはお前の唯一の肉親であり、唯一の敵対者だ」

 彼らは黙り、睨み合った。しかしそれを先にやめた山の女神は呆れたと息を吐く。


「世迷言ばかり言ってないで、たまにはマトモな」

「本当だ」

「神霊に血縁関係があると信じているの?貴方だってだいたい、他の時空から来た侵略者じゃない。私はこの町で誕生した地球神よ」

「いいや」彼は否定し続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます。

こちらもポチッとよろしくおねがいします♪


小説家になろう 勝手にランキング


ツギクルバナー


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ