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引導 2

 アパートから離れた少しの場所に不自然な雑居ビルがある。越久夜町には似つかない、都会的なビルだった。

 もしかしたらエベルムはそこに潜伏しているかもしれない。途中で拾った木の棒を剣代わりに、敷地内に入る。

「エベルム〜?」

「なんだ」

「あ!」

 廃材の影で黒焦げになり、彼はやっとの事で座っている状態だった。


「ああ…お前か」

「…まだ生きてんだね」

「宇宙人は死ににくいんだよ」

 冗談か本音か、彼は薄笑いを浮かべた。それがまた痛々しい。こんな容態になってまでも取り繕う笑顔など見たくもなかった。

「天道 春木のやりたいようにさせれば、町は壊れる。加えて双子の神話を話せば…」

「ユートゥーが来てくれる?」

「そうだ」

「…来てくれるかな」

「なんだよ」

「麗羅さんも、来てくれてないよ」

「そりゃあ、来なければならないような事を何もしてないからだろ」

 辰美は弱りきったエベルムを哀れんだ。


「それってさ、見捨てられてるんじゃないかな」

「お前さ…友達いないだろ」

「いないよ。私は最初からひとりぼっちだった」

「ハッ。ボッチなりに言動考えろっての」

 悪態をついた彼ははたと耳をすまし、周囲を気にする。何かが囁いている。


「見つけた。見つけた」

「見つけた」

「見つけた。バケモノ」

「バケモノ」

 化け物。ばけもの。バケモノ────


 たくさんの声が四方から聞こえ、ざわめいている。獣臭さが辺りを覆う。

 宇宙狩猟の猟犬群が物音を立てず、二人を包囲していた。

「アナタたち…」



「食う」

 食う、食う。食う。食う。食う。



 思考を感じさせぬ敵意がエベルムに集中する。

 唸りと荒い息遣い。野犬に囲まれるよりもおぞましい。彼らは野犬より一回り大きく、牙もやけに鋭い。


「おい、逃げろ。俺を背負ってけ」

「はあ?!」


 人使いの荒さに怒った瞬間だった。巨大なオオカミが──アレテーがエベルムを噛み砕いた。際どい音がし、悲鳴が上がる。血を滴らせ彼は苦痛に顔をゆがませた。

「やっと始末できたぞ!同胞に成り代わり、穢したバケモノよ!」


「アレテー…なぜ越久夜町に…!」

「お前が弱ったおかげで、外の世界と繋がったのだ!さあ、同胞よ!食い散らかせ!」


 遠吠えがあちこちで響き渡った。様々な犬種の宇宙狩猟の猟犬群らがいつの間にか辰美たちを囲っていた。

 皆、怒りに唸り、毛を逆立てている。虹色の瞳を光らせてエベルムを睨め付けていた。

 おぞましい獣たちの殺気に竦みあがる。


「チッ。うるせえ犬どもだ…」

「待って!わたしが、私が──トドメをさして、受け止めてあげる!」

「やめろ──」

 宇宙狩猟の猟犬群が堰をきったように彼に襲いかかった。

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