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呪い 6

 異変に気づいた自警団にリネンを保護してもらい、辰美たちも事務所へ向かうことにした。交番勤務の脇田が変死してしまい、混乱が起きているせいか、咎められはしなかった。


(脇田さん…)

 何度か顔を合わせ、台風の際もダム事業者を救ってくれた。田舎町の優しげなお巡りさん。

(心が壊れそうだ…)


「…あたしは水分りの神っていってね。雨を調節する神としても崇められてるんだ」

 陰鬱とした雰囲気を紛らわそうとしたのか、水分が口を開いた。


「じゃあ、あの牛の仮面の人も?」

「あー…コッチがあの人に頼み込んだんだ。淡居と言うんだが、堺の神だから越久夜町に通路を作ってもらってな。淡居も越久夜町に縁があるから特別に…あ、秘密にしてくれよ?これ」


 淡居。一度聞いた名前である。

呪女(のろいめ)とも呼ばれてる。境界を司る神さまだよ、あの人は」

「…」


「早く駆けつけられなくてごめん」

 悔しそうに彼女は歯を食いしばった。

「い、良いんですよっ!アタシは別に…」

「脇田さんが殺されたのを有屋が見つけたんだ。脇田さんがあの女を保護しなければ…。…有屋は辰美ちゃんを失うのを怖がってた。辰美ちゃんも死んでしまったら、アイツ…」

 涙を滲ませ、いきなり抱きついてきた。

「これ以上寂しい思いはしたくねえんだよお!」


「う、ひい!みまくりさんっ?!」

 予想以上に怖がりなのかもしれない。辰美も己をビビりだと自負していたが、彼女に親近感を覚えた。

「怖かったのに、助けてくださってありがとうございます」

「いいんだよっ。あはは…あたし、ダメダメだ〜」

「二人で何怯えてるのよ」

 不意に有屋が声をかけてきた。瞬間移動で駆けつけてくれたのだろうが…心臓に悪い。


「有屋さぁん!」

「有屋!来るの遅いよ!」

  二人に泣きつかれ、彼女は少し驚いたようだった。


「落ち着いて。ほら、ええと、とりあえずお茶でも飲みましょう」

 そう提案すると車で国道沿いにある廃墟となったガソリンスタンドに停車し、持参していた緑茶とクッキーをふるまってくれる。明るくした車内の中で三人でクッキーを食べた。


「甘い物を食べると落ち着くでしょ」

「うん…だいぶ」

 パニック状態になっていた頃よりも頭が休まっている。隣りで緑茶をがぶ飲みしている水分に、彼女は人間味のあるヒトだと感心する。

 神も人のように喜怒哀楽があるのか。

 しばらく有屋に状況把握のため質問される。リネンの悪行に暗鬱としたものになった。


「あ、そろそろ帰らないと怒られちゃうわ」

 水分が腕時計を見やり、焦りだした。


「早く帰りなさい。街が混乱するわよ」

「ああ、じゃあ辰美ちゃん。平和になったらあたしの町に来いよ。案内してやる。田んぼしかないけど」

「いいじゃないですか。米どころです」

「うれしー!じゃ、またね〜」

 ドアを開け、パタパタとトンネルへ走っていった。


「元気でしたね」

「いつも調子がいいんだから…それにしても寂しがり屋とビビりに拍車がかかったわね」

 緑茶を飲みながら彼女は苦言を呈した。

「可愛いじゃないですか」

「…麗羅と出会った時は、輪廻を回って人間として暮らしていたから。水分は根に持っているんでしょうね。というか、トラウマになってしまったのかも」

「そんなコトできるんだ…」

 クッキーをかじり、バターの風味に癒される。しばしこの甘さに悪夢を忘れていたいと、舌の上で転がしていた。

「呪い」はこれにて完結しました。

ありがとうございました。

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