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呪い 4

「野犬を発見したら、絶対に殺すな。生け捕りにするんだ」

「ホントにあんな生き物がいるんかねえ?」

「イノシシだって巨大な個体がいる。そういうのだろうよ」

 自警団らが近くを通りすぎていく。法被を着ており、皆、武装していた。中には猟友会もいるのだろう。猟銃も手にしていた。


「ふーん。バレたんだ。アイツはいつも馬鹿だね」

 それを盗み聞きしていたリネンはニヤニヤしている。直接話していた場面は目にした事はないが、仮にも坐視者の同胞としての思いやりはないようだった。

「アイツさ、きっと町を壊すよ」

「だったら何とかしてよ!」

「はあ?なんでだい?私に越久夜町の肩を持つ義理はない。麗羅、君が手に入ったんだからね」

「ひどいよ…自分の事ばっか…」


「おいおい。人間は基本、自分の事しか考えていないだろう?だから私は人間が好きだ。醜くて無様だ」

「うう…誰か助けて…」


 絞り出した悲惨な感情に、リネンは殊更満足したようだった。悦楽に歪んだ唇に嫌気がさす。

 ぐい、と引っ張られ、山の斜面を登る。国道と平行しながら、歩く。息を切らしながら脂汗をかく。

 リネンは軽い足取りで自警団がトンネル前で引き返すのを見計らい、降り始めた。

 四ツ岩トンネルの奥は真っ暗だった。ライトはついておらずに、暗闇だけが立ちはだかっている。


  (ひっ…こわい)


 その時だった。

 奇妙な音楽──雅楽に似た、和奏の音がどこからか聞こえてきた。手錠に括り付けられた紐で トンネルへ引っ張られていた辰美は足を止める。


「なんの音?」

「なんだい?何か聞こえるかい」

「不思議な音楽がどっからか…」四方から円陣を組まれたかのように、途切れなく狂った演奏が迫りくる。

 人の気配はしない。──人ならざる者だ。狐狸か?それとも危険な妖怪か?

 ──辰美は無意識に見てしまった。


「ヒッ!」

 能の衣装を着飾った女性が、神憑り的な、半狂乱になりながら舞っていた。能面であるはずの面はのっぺりとした表情の牛であり、髪を振り乱しながら舞う。

 乱れた雅楽の音が国道に響き渡り、辰美は震えた。

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