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呪い 2

 消防団員と消防車まで出動した上、近所の人たちが野次馬に来ている。大惨事になり、辰美は当然の事ながら事情聴取されていた。


「不審者がいたようです。辰美さんが見ていました」

 かけつけた有屋が脇田に虚実を交え報告している。

「いやぁ。こんな事件…数十年に一度くらいの大惨事ですよ。あ、今夜、自警団が見回りをするそうです。有屋さんは参加されますか?」

「ええ」

「しかし大家さん、重症でしたけど死ななくてよかった。辰美さんも」

「は、はい…」

 善意の心配に罪悪感がのしかかる。辰美は頭を下げるしかなかった。


「有屋さん、辰美さんの心のケアをよろしくお願いします。参ってるみたいなんで…」

「ええ…」

 喧騒の中、大人に手を引かれる子供のように車の近くまで連れていかれた。

 精神的に限界だった。


「エベルムが、ごめんなさい…アタシがあんな…」

 涙があふれ止まらなくなる。泣きじゃくり無様に、有屋に縋り付いた。

「泣かない。麗羅だったら、ヘラヘラ笑ってみせる所よ」

「佐賀島 辰美は泣くの」

「…そう。佐賀島 辰美は泣くのね」

 堪忍した彼女は大げさにため息をつき、しゃがみこんだ。目線を合わせ、言い聞かせるように言う。


「私の事務所に寝泊まりしなさい」





「そういやさぁ、有屋さんの別荘に泊まるはずじゃないの?」

 オートミールを入れた皿に牛乳を流し込みながら、疑問に思った事を尋ねた。


「ああ…別荘で先輩が緑さんの看病をしているから。申し訳ないわね」

「ふーん…」


 あれから緑は昏倒し、目覚めていないという。さして焦る事でもないが儀式をしなければ、最高神の受け渡しはできないと。


「緑さんに最高神の座を受け渡したら…そしたら春木さんはどうなっちゃうのかな」

「…輪廻へ還るのよ」

 暗いトーンだがハッキリと秘書は答えた。

「…。ごめん」

「別に。それが普通なのだから。私が別れを惜しんでいるのが異常なのよ」

「異常じゃないよ。それ…」

 スプーンをテーブルに置き、寂しい気持ちを噛み締めた。脇田さんを思い出し、憂うつになる。


「死んだらヤダよ…誰だって」

「優しいのねえ。辰美さんは?」

「何?」

「麗羅だったら私に酷い言葉を浴びせて、次の日にはケロッとわすれてるのに」

「最低人間じゃん…私はまだ善人ですから!」


 一々麗羅に重ねられるのはゴメンだが今はそれが幸いした。麗羅もきっと悲しい思いをたくさんしたに違いない。

 事務所にあったシリアル食品を食べ、久しぶりに冷房の効いた涼しい部屋で仮眠をとった。辛い時は寝るのが吉だと、ネーハが教えてくれたのだ。

 三時間くらい寝てしまい、辰美は書類整理をしている有屋に声をかけた。


「ちょっと頭ン中整理してくる」

 夜風にあたり、頭を冷やす。ベタな方法だが意外と思考回路の熱が下がって、正常な判断が下せるようになったりする。

「気をつけるのよ。すぐ帰ってくる、いい?」

「わかった」

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