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情動 3

「三ノ宮を歴史から消してしまえば、存在自体を抹消してしまえば?小林家は…自分を取り巻く環境は良くなる。彼はそう考えた」

 手に入れた力を悪用して、越久夜町の歴史を歪ませてしまった。


「ルール違反だわ」

 春木がひどく沈んだ表情で言う。時空改編はもとより、殺害や存在を害する行為は人間がしてはいけない事なのだから。

「一つの物事を、前後を配慮しないで改変してしまえば破綻が生じてしまうものなの。時空というのは」


「ああ、我々宇宙人は殊更気をつける。()()()()()()が好きな連中が、公式声明文を出していたな。…で、結果はミーム汚染により東京が壊滅する、というものだった」

「祖父は悪くありません。三ノ宮一族が悪いのです。私たちを陥れて、父を…母まで自殺させて…」

 一貫して無表情だった緑の顔が憎悪に燃えた。憎しみの光を宿した眼光に、辰美は気圧される。

 こんな緑を見たくはなかった。

(緑さんからしたら、もしかしたら…ずっと内に秘めていた感情なのかもしれない…)


「だがねえ。小林 光路は犯罪者なのは変わりないんだよ」

「…そうね。リネンさんの言葉を否定はできない」


「祖父は古書を読む傍ら、越久夜町が不自然な歴史だと私に言っていました。私だって天道一族の策略だとは思っていましたが、祖父は、三ノ宮家にはそんな素振りをみせずに接して…」

「けれど彼は何度も三ノ宮一族を抹消している。歴史に齟齬が生じると理解した後もね」

 彼の薄汚い側面。三ノ宮一族を消してもなお、彼は笑顔を三ノ宮家に向けていた。嘲笑っていたのかもしれない。


「小林 緑さん、私の持っている情報をさらに知りたいだろう?」

「…まあ」


「なら、人質になってくれないかい?」


「何言ってんのよ?!」

「だったら麗羅、親愛なるキスでもしてくれよ」

「あ?きっっしょ!春木さん、もう帰ろう?」

 真面目に語らう気持ちも失せ、辰美は出口へ向かった。


「天道 春木。私を牢屋から出してくれたらイズナ使いを抹消するのは諦めよう」

「貴方…人ならざる者だからって、大口叩くのもいい加減になさい」

 黄緑色の瞳をぎらつかせ、山の女神は牽制した。しかしリネンはどこ吹く風で肩をすくめた。


「私の方が身分が上だ。場をわきまえろ、神霊風情が」

 日本人としては変哲もない焦げ茶色の黒目が様変わりする。辰美にはおなじみの虹色の──「アナタも坐視者(そぞろみるもの)?」


「貴様の力を封じるのも、町を消すのも赤子の手をひねるくらい簡単だ。山の女神よ」

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