かこ 4
「起きていたかもな。停電ガ」
「どさくさに紛れて気づかなかった、わ。私も」
二人は愕然として顔を見合わせた。
「停電が起きたからパニックが起きた」
「じゃあ、タコのUMAは誰が」
辰美は当時の記憶がない。その時の情景は全く浮かばなかった。
「スマホ…エベルム、アイツ、スマホ持ってた」
「スマホ?ンだそれは」
「スマートフォンでしょうに。二千十六年にはもう流行っていたけれど」
有屋は折り畳み式の携帯を取り出し、検索した。スマートフォンの記事がある。
「これもカミサママジック?」
「ええ、まぁね」
記事を読んだ竹虎はううむと考え込んだ。
「おれらのやろうとした事は逆効果だったのか…」
「助けを求めるには正解だったかもしれないじゃない」
「クソ犬は何でミームを広めようとしたンだよ?」
「顧兎に会うために…」
町を怖せ、と彼は要求してきた。ユートゥーが来てくれると信じているのだ。
「コト?」
二人の言葉が重なる。
「エベルムの知り合いにそーいう人がいるんだ。ずっと会いたがってるんだって」
「ハァ、アイツにもソーイウヤツが居るンだな」
ニヤニヤと面白いネタを手に入れた、と竹虎が茶化した。それを横目にため息をつき、しかし腑に落ちた様子でこちらを見た。
「その気持ち、私にもわかるわ」
「ああ、確かに。オイラも」
「な、何?!」
(だから!私は仙名 麗羅じゃないって…)
その言葉が口から出せない。彼らには麗羅の思い出がありすぎるからだ。
悲しい。自分には思い出がないのだから。




