太陽の世界 3
異なる宇宙からきた人物と話している。意外と同じ価値観を持っている。日本語を話している。
「元は家族なんだからさ、同じ。この宇宙は。地球があって、星があって、神々がいて…同じなんだよう」
「そっかあ。むやみやたらに怖がる事なかったのね…」
しかし彼は神妙な顔もちで首を横に振る。
「双方の違うところはね、死と再生の世界──幸せを押し付ける世界。殺戮の世界。太陽の子は輪廻がない。死んだら、そのまま。代わりに、再生せずに新しい存在が生まれる。常に新品の宇宙」
使い古された宇宙。
どちらがいい?
(私には関係ない話…でも、天津甕星もあの鳥みたいな人にしてみれば重要で、必要な話)
「天津甕星は帰りたくない?太陽の世界に」
「…今は帰りたくなぁ」
「へえ、意外」
彼ならばすぐさま帰りたいと、この世界は嫌だと、顧みない印象があった。だが神威ある偉大な星はどこか懐かしむように、外を眺めた。
「ちょびっとだけこの町を気に入ってるんだぁ」
「…そっか」
「辰美ちゃんもいつか分かるよ」
諭されて辰美は何も言えなかった。ふとポケットに異物があるのを思い出し、彼に見せる。
「あ、そういえば!童子式神がこれをくれたんだ」
星があしらわれたひし形の髪飾りを取り出し、見せつけた。童子式神曰く、星神の一部という事だ。
「これは…」
目を見開き驚愕し、ひったくられる。「オレの魂の欠片」
「天津甕星に渡してって」
「…そうか。…良かったよ、アイツが持っててさぁ」
髪飾りを握りしめると、彼はスクッと立ち上がった。
「ちょっくら行ってくる」
「ど、どこに?あっ…。…」
微かに動揺した辰美の問いかけもつゆ知らず、部屋を出て行ってしまった。
「太陽の世界」はこれにて完結しました。




