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開闢のミーディアム ~人ならざる者が見える辰美の視点~  作者: 犬冠 雲映子
(1) 瞑瞑裡の鼠《パラレルワールド再分岐前夜》
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瞑瞑裡の鼠 「瞑瞑裡の鼠」

 月光を反射して何かが移動している。猫しては形が歪で、リスにしては大きすぎた。

 目を凝らし正体を見破った。ネズミだ。それもハツカネズミのような可愛らしい部類ではない。都市部に住み着くスーパーラットである。

 そのネズミは電線を伝っていく。そいつはハクビシンより大きくブクブクに太っていた。異様な雰囲気にヒロミは察する。ヤツが悪さをしている術者だと。


「あいつだ。」

 突如生垣から現れた狸も尽かさずネズミへ威嚇した。ついにやってきたのだ。

「あれが悪い魔法使い?」

 辰美が眉を潜め問うた。拍子抜けしているのは、脳内では魔道士を想像していたのだろう。


 悪魔を体現したかの如く、ネズミの眼孔(がんこう)はくぼみ奇妙な光を宿していた。その目はあらぬ何かを見据えどこかへ向かおうとしている。

 化けネズミを狸たちが殺気立った熱視線で追う。あちらはスポットライトを浴びているのも眼中にないようだ。


「おーい!」

 辰美がネズミへ声をかけた。

 素っ頓狂な行動にその場にいた者は腰を抜かした。なんてことを!これじゃ自ら尾っぽをだし喧嘩をしかけ―

 小汚い獣が動きを止める。ゆっくりと確実にこちらの存在を認識してしまった。わずかに空気を嗅ぎ、悟ったのであろう。


「ギェーッ!」不協和音を発しネズミが牙を向く。あれは本当に呪術師なんだろうか?ぎょろりと眼球がヒロミを捉えて放さない。敵か―都合よく現れた餌とでも認識しているのか?

 背筋に悪寒が走る。あれはヒトではない、獲物を狙う獣の気色だ。

 ネズミは再び短く鳴いて鼻をひくつかせ、こちらの出方を伺っている。仕草こそはどこにでもいるネズミであった。


「忠告はしたはずだ。まだ、諦めぬというのか。」

 狸が我慢ならぬと静かに問いただした。


「愚かな人間よ、お前のしようとしていることは町の鎮守(ちんじゅ)が許さない。」

 沈黙を守り続けるだけの「人間」へわずかな苛立ちを募らせた。黙秘やもはや聞く耳を持たず。ひくひくと鼻を動かし未だにこちらをじっと見つめている。


「あの時はどうも!」辰美(たつみ)が場違いなトーンで話しかける。真の意味で状況を把握していないのだ。悪い魔法使いがどんな行いをし、失われた技術を行使する危険人物であると。


 ネズミが耳障りな咆哮を上げ、体を丸くした。背中から大量の羽虫が湧き出、軍団になって飛びかかってきた。

 少女の魂を貪り食うつもりだ!

「ど、どうしよう!」


 頭が真っ白になりかける。「あ、あ…!そうだ!」

 幸いなことに町に出向いた時の服装と-夢札(ゆめふだ)を所持していた。本来夢札は争いごとには無縁な代物である。幸を授けるに相応しく戦いにはまったくもって機能しないのだ。

 ヒロミは咄嗟に夢札にかけられた魔法を無効化する。上書きをするために。

「あの子を守ってっ!急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう!」

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