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ポスト・アポカリプスと宇宙猟犬 2

 越久夜町や蛭間野町(ひるまのまち)御厨底町(みずぞこちょう)。その周辺からキッパリと人が居なくなる。

 人類が滅んだ、映画のような世界に辰美はいた。


『愛する家族よ。私はこの星に残ります、お元気で』


 かつてニューヨークと呼ばれた都市で見つけた悲しい手紙。チー・ヌーが英語を翻訳してくれたが、簡素な文だった。

 ある者は故郷を捨て宇宙に行き、ある者は残り死に絶え。ある国は核戦争を起こし、ある国は感染症で滅び──地球は世紀末を通り越し、もはや終わっていた。

 何とも悲しい世界だった。

 地球の神である麗羅が管理している星は、何ともめちゃくちゃだった。


「黙示録の後、というべきでしょうか?」

 物見遊山のチー・ヌーが月世弥と遺物を物色している。「人類は間違ったって言いたいの?」

「さあ、わたくしたちが新生しなかった世界だからじゃないですか?」

 新人類が発生しなければ地球は滅ぶ。彼はそう信じてやまないようだ。


「麗羅さんは…!」

「トライアンドエラーを放棄したのでしょう。地球温暖化、戦争、あるいは地球外からの侵略。全てを排除してみても結果は一緒。人類は滅びる、そう結論されたのでしょう?」

「でもアトラックは発生してないよ」

「それだけは絶対にナシにしたかったみたいですね。残念です」

 集団自殺をした人々の人骨が散乱する教会内を眺め、少年は平生としていた。

 辰美は麗羅がなぜ、自分に責任を押し付けたか分かった気がした。

(疲れたんだ。何もかも)


「そろそろ戻った方がいいんじゃないの?お上が怒るよ」

 月世弥が額に穴が開いた骸骨を観察しながら言った。骸骨に親近感が湧いたのだろうか?


 廃墟化した首都・東京に移動すると、心象風景にあった雑居ビルがあった。崩れかけ、地下にあったトイレがむき出しになっている。


「…あ」

 住所録にイタバシと書かれていた。そうか、この地は麗羅の本拠地。

 様々な記憶が蘇る。この土地で過ごした気持ち、人々。


「麗羅さん…」

 この場所から始まり、終わった。仙名 麗羅の人生は道を外れ、宇宙の一部はおかしくなった。だがこの雑貨ビルの残骸はどの時空に行ってもあるのだろう。

「グルル…」

 頭上から獣の唸り声がして、我に返る。あまりきも巨大で、なおかつハスキーかネブラスカオオカミに似た姿の生物は重厚な唸りをあげていたのだ。

「ヒイッ?!い、犬!」

 鋭い牙が見え、辰美は(すく)みあがった。

「失礼な!我が名はアレテー。宇宙狩猟の猟犬群の総統。この瓦礫の都市は我らの縄張り。汝はいかにして我らの領域に来た」


「そ、総統!」

「お前はどうやらバケモノの寄せ集めみたいだな。我らの領域をケガす者は排除する」

「ひ、ひい!違います!人間です!」

「人間でもダメだ!ここは我らの縄張りなのだ!」


 東京都を自分らの縄張りだと主張する彼にチー・ヌーは薄ら笑いを浮かべた。

「貴方たちが人類を滅ぼしたようですわね」

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