290/349
九月の初めは 1
(見水は…何者なのよ)
緑の骨董店に向かう際にソッと紙切れを拾う。気づかれていないようで、彼女は歩いていた。
「ねえ、見…あれ?見水は?」
さっきまでいた見水の姿が忽然と消えていた。
「見水?…。誰ですか?それ」
「え?!緑さん…だって、さっきまで見水といたじゃん!」
「は…?」
訝しげにこちらを見てきたイヅナ使いに絶望する。
「あっ、…それ」
紙切れを奪い取られ、俯く。「見たのですか?」
「うん」
「貴方と見水 佳幸は無関係ですよね?」
見水 衣舞の容姿をした人物の切り抜きを見て、涙が滲んだ。
「うん…佳幸って人なんて、会った事ないよ」
「…そうですか。辰美さん、ハンカチありますよ」
無表情のまま、彼女はハンカチを渡してきた。「ありがとう」
「見水 衣舞はさっきまでいたんだ」
「探すのです」
「えっ…」
「まだどこかに居るかもしれないじゃないですか」
彼女は単調な、しかし芯のある声で言う。
「探してくる!」
最終章が始まりました。がんばります!




