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開闢のミーディアム ~人ならざる者が見える辰美の視点~  作者: 犬冠 雲映子
ツギハギの町と憐憫たるスナッチャー編
287/349

スナッチャー 8

 チー・ヌーの瞳が際どくネオン管の如く発光し、いきなり天の犬が吐血した。

「ぐっ!」


「弱いですね。命乞いでもしたらどうです?」

 三本の指で左胸を確かめると「幻覚みせやがったな」

 心臓を突き刺される幻覚を見せられたのだろう。エベルムは血を舐め取り、平然と取り繕う。


「うすぎたねえ干渉者め」


 彼はグッと体に力を込めると山並みに立つ鉄塔を念力で切り裂き、チー・ヌーへ投げる。轟音を立て山肌に食い込む鉄屑が土埃りと土砂崩れを起こした。

 少年は潰される前に瞬間移動をくりだし、軽々とエベルムの前に現れた。


「わたくしや仲間を侮辱するのは、おやめになって?」


 得意の蹴りをお見舞する。天の犬は吹っ飛ばされるも体勢を持ち直して、崩壊した山肌に着地した。衝撃でクレーターができ、破片が飛び散る。

 三本の指を握りしめると、周りに幾重にも鉄塔が現れた。コピーアンドペーストされた鉄塔は皆、ノイズにやられながらも浮遊する。


「お前も坐視者を見下してるだろう」

 手のひらを開くと亀裂がはいり、破片となりチー・ヌーに降り注いだ。

「あら?その力は、坐視者ではないでしょう?」

 巧みに避けながら鈴を鳴らすと、破片を止めた。


「着ぐるみの子犬ちゃん。次は用意周到に計画しなさいな」

 ザワザワと銀色の髪が怪しげに逆立ち、銀糸となり様々な場所に取り憑く。木々、空、地面、取り憑かれた箇所から色を失い、穴が開き始めた。


「お前…」


 喉から唸り声を鳴らし、エベルムは四つん這いになった。


 肢体を形作る組織が軋みをあげ、見る見る内に大きな猟犬になる。天に届きそうなほどの巨犬は遠吠えをあげ──毛並みが妖しげな燐光を放った。


 遠吠えと呼応するように時空の崩壊が止まり、一時干渉が止まった。

(あ、あれ)

 加えて誰も彼も止まり、風さえも停止している。辰美の隣にいる有屋 鳥子さえも。


(辰美、早くトドメをさせ)


(は?どうやって?)

(その剣でチー・ヌーを刺し殺すんだ)

(…わ、わかったわよっ)


 新聞紙と包帯をとり、剣を手に奇襲を仕掛けた。草原を走り、一時停止しているチー・ヌーを確認する。

 春木のように投擲したいが、上手くいかないのは目に見える。しょうがなく天の犬と化した腕を頼りに銀糸をよじ登り、チー・ヌーの胸に──


「ハアハアッ」

 人を殺すのだ。この剣で一突きされたら誰だって死んでしまうだろう。



「ごめんなさいっ!」

 ──剣を深く突き刺した。



「いたい、いたいよお」

 時間が動き出し、辰美は焼けた地面に叩きつけられた。


「もういいでしょ?言う通りにしたから、嫌わないで──」


「え?」

 息も絶え絶えに絞り出した命乞いに、春木は驚いた様子でエベルムを見る。

 エベルムに、なにか言おうとした際──彼はチー・ヌーにトドメを刺そうとした。


「ぐあ!てめえ!何すんだ?!」

 脳天に鋭い針が刺さり、彼は呻いた。天津甕星の頭部から生えた触手だった。


「アンタから月神の力もらうぜ!」

「ぐああああ!」

 断末魔が結界内に響き渡り、辰美は反射的に耳を塞いだ。胸を貫かれたチー・ヌーが勢いをなくし、隣に落下してきた。胴体には口のついた触手が心臓に似た臓器を食い荒らし、皮膚は水分をなくしミイラ化している。星神の触手にやられたのだ。

 悲鳴をあげそうになったが、それよりも倭文神が気がかりだった。


「…シンシアさん!倭文神を解放してあげて…!」

「な…ら…」

「えっ…」


「貴方を次の住処にしてあげる!」

 辰美へ憑依しようと目論まれ、精神を乗っ取られた。

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