夏休みの花火大会 6
「え〜~わたしぃ?」新品の点火棒を渡されて、渋々ロケット花火と共にしゃがみこむ。
「こーゆうの苦手なんだよね。音とかさあ」
着火線に火をつけ、筒を支えながら片耳を塞いだ。
ロケット花火が音を立てて空に向かって飛んでいく。小さな、不格好な花火の光が空に散る。あまりにも呆気なさに辰美はそっと耳から手を離した。
「先輩、残りのロケット花火はどうします?」
「打っちゃいましょうか」
「それアタシがやるんですかあ?」
「私も手伝いますよ」
静観していた緑が名乗り出る。「ありがとう〜」
「調子いいんだから」
ロケット花火を打ち上げ、仲間内の花火大会は終わりを告げた。春木以外はペンションに泊まる事になっているため、まだまだ時間はある。
「あー、林間学校に来てるみたいで良かったよ」
「ね、またしようね」
「ロケット花火はナシで」
「えーっ」
花火を片付け、ペンションの入口で話していると、春木が自家用車に乗り込もうとしている。それを有屋と緑が見送っていた。
「私たちも見送った方が良くない?」
「そうだね」
階段を降り、車まで歩み寄ってみると妙齢の婦人は何やらしんみりしていた。
「──人の一面を見て善悪を決められはしないわ。前代を食べたのは変わりないけれど、あの人も存在を食べられてしまったのだもの」
「…先輩」
「私を騙し続けたあの人も、きっとそうなのでしょうね」
寂しそうに山の女神は零した。
「わ、私は騙したりしません!何があろうとも先輩の味方です、だから──」
有屋が熱烈に詰め寄り、潔白を誓う。
「先輩のことが大好きなんですっ!付き合ってください!」
「まあ」
(い、今?!どさくさに紛れて告った?!)
驚愕していると、その気色から逃れようと、イズナ使いが気まずそうにこちらに歩いてきた。
「はぁ…、二人とも。お邪魔のようなので部屋にいきましょう」
「わ〜ロマンチック〜」
恋バナ好きの見水がキラキラした目で二人を見ている。
「いやー、なんかズレてるよ。アレ」
「ほら。私には、あのような嗜好はないので早く部屋に入りたいんですが…」
「はいはい…」
冷めた様子の緑に連れられ、ペンションへ戻る。
夏休みなのだから何でもありだろう。
(夏休み、なんだから…か…)




