ひどいネタあかし 6
「座視しているだけでは、時空のためにはなりませんでしょう?指をくわえて、高みの見物をするのが最善ですか?わたくしは嫌ですわ──時空は破壊するとしても、わたくしのやりたいようにねじ曲げてやります」
「アンタも勧誘?!」
「まさか!わたくしは坐視者が嫌いなんです」
「貴方は…誰ですか」
「最高位の女神のために、町は一度滅びるべきです」
緑の問いかけに答えず、彼は続けた。麗しいまつ毛が影をもたらす。不思議な色味の瞳には意思が宿っていた。
人間みたいだ。
「終わりは始まり。また種を蒔いて、育てていけばいい」
「う、うん」
希望的観測に頷くしかない。彼は意外にも前向きだ。
「山の女神は単に山神という意味もありますが、越久夜町においては森羅万象を支配し管理する者・最高神を指しますの。全世界的に──最高神に選ばれた神霊は○○の女神と呼ばれます。わたくしは、いえ、越久夜町の神々は考えています」
「…」
「小林 緑。貴方は次の女神になるのです」
「な、何を…言っているんですか?」
理解できない、と狼狽える女に、チー・ヌーは言う。
「これは倭文神として言います。天道 春木に会いに行きなさい」
「だ、だから!」
「選ばれたのです。小林 緑。予言しましょう。貴方は最高神になる」
ポカンとした女子大生に、彼はズイッと顔を寄せた。
「愛していますよ。辰美さん」
「は、はあ?!」
「では!」
可愛らしくクルリと回転すると、不思議な力で眼前から消えてしまった。二人はただ沈黙して気まずそうにしていた。
「そ、そうだ…体調、大丈夫だった?」
「ええ…」
ひと騒動あり、やっと会話を交わす事ができた。内心ホッとしつつ、骨董屋店主の手を握る。温かい。まだこの世界に存在している。なんと、喜ばしい事か──。




