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開闢のミーディアム ~人ならざる者が見える辰美の視点~  作者: 犬冠 雲映子
(1) 瞑瞑裡の鼠《パラレルワールド再分岐前夜》
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瞑瞑裡の鼠「大学生兼占い師」

「探検していればいいんですか?」これまで町をぶらついたこともなかった。観光スポットはあるらしい(寺のお姉さんから聞いた)がなんせ小規模な田舎町だ、でかでかと目印がある訳ではない。ゴーストタウン化した偽の「町」を探索したら面白い発見があるかもしれなかった。


「乗り気だねえお嬢さん。」 

「夢、だからですかねぇ…。あの、気になっているんですが、悪い魔法使いの目的はなんなんでしょう?」

「では、あなたはどう思っているのかね?」


 肉体の魂は消失していても思念は残っている…、ヒロミは直感的にそう感じた。ゾンビはウォーキングデッドと呼ばれるように肉体だけが生きている。ウイルスや呪いやら原因は様々だ。人を人たらしめる自我が消失しているだとか、そうではなく臓器自体が死滅しているのだとか、理由も多岐に及ぶだろう。

 幽霊になるはずだった残留物が肉体に閉じ込められている…魂を捕食されたことにより、外へ出る媒介が消失してしまったのです。だから外ではなく内へと没入していく…。

 リネンの前でそう推測したのは、寺での予備知識があったからだ。

 例のネズミに会うとボケてしまう、魂が抜けたようになってしまう。跡取り息子の姉の言葉を聞いて、そう考えた。

 魂を取り、人を腑抜けにさせ、あまつさえゾンビの如く徘徊させる-後者はヒロミを痛めつけるための操作かもしれない。悪い魔法使いは無差別に魂を奪う。


「人の魂で…何かをしようとしてる?…お寺で聞いたんです、ネズミに噛まれるとボケてしまった人がいるって。魂だけを奪って、かき集めて何かに利用としてる?」

「ふむ。そうかい。」もう一匹の狸は頷いた。


「やつは君が言ったように魂だけを掠め取ろうとしてる、霊魂は体に収めるには変幻自在な存在だから掠め取りやすいんだ。」

 夢の世界を移動する獣どもは様々な場所からヒロミを監視している。きっと悪い魔法使いの行いもお見通しなのだ。


「そ、ソレは人間なの?」

「そう。やつは人間だ。実に人間らしい理由で魔力を貯めようとしている。ズルはどう足掻こうとプラスにならない。」

「魔力、魂をエネルギーに変換するつもりなのね…、何でだろう…。あなた達はわかっているのですか?」


 獣どもは答えない。愚問だったのかな?ヒロミは眉を下げ、所在なさげに前髪をいじくった。

「私たちにはお互い立ち入ってはならない世界があるんだよ。いや、もう遅いか…。お嬢さん、これだけは覚悟してくれ。永遠を彷徨う事になっても気を確かに持つんだ。」

「え、永遠を…」

「じゃあ、私はこれで。」

 紳士はそれだけ言い、そろそろと夜闇へ消えていった。


―――

「何かあったら俺達が向かうから。またどこかで会おう。」 

 狸とお別れし、町をウロウロする。田舎だと思って不便そうだと決めつけていたけれど、当たり前だが信号機もコンビニもあるし、小さな小さな老舗な雰囲気のあるスーパーもある。画一化された風景を見つけては町について詳しくなる。


「悪い魔法使いさんは記憶力がすごいですねぇ…。」どこかで見ているであろう悪い魔法使いに語りかける。ここまで再現できるなんて感心した。

「私なんてよく知らないですもの。」 


 車輪が擦れる音が背後からきこえ、反射的に振り返った。人の気配すらしない奇妙な田舎町に突如響きわたる―人の気配に、内心奇跡だと感謝した。

「で。私の夢に入って、また私を助けようってわけ?」

 成熟するにはまだ幼く子供にしては大きすぎる―エネルギッシュな年頃の女性が自転車を止め不機嫌そうにこちらへ話しかけてきた。

 落ちかけた金髪に部屋着に近い服装。ボロボロのサンダル。だらしのない身なりにやる気を失った女子。錆び付いた自転車を止めて、ズカズカとこちらに歩み寄ってくる。


「知ってるよ。あんた、確か夢野 ヒロミさんでしょ?何かを届けて町にきてるとか」

「よくご存知で。」

「新聞紙で見た。行方不明になってるって。それと──」


 それに、と彼女は自信あり気に胸をはり

「超能力者なんだから。」

「……。そ、そうなんですか。」

「ええそうよ。人の心が読める、とてつもないエスパーなんだから。」

「はあ…。なら、私が何を追っているかお分かりで?」

「さあ?」


 はぐらかされ苛立ちを覚えた。前回彼女と出会っただろうか?もしかしたら未来の出来事なのかもしれないし、起こらなかったお蔵入りのお話しなのかもしれない。夢なんてそんなものである。

 彼女から特異な雰囲気は感じられない、生意気な田舎娘。そんなところだ。

「…わたし、行方不明になってるんですかぁ?」

 何気ない言葉の中で、気になったものがあった。


「知らないわけ?とにかく前回はよくも訳の分からない難癖をつけてくれたわね。」

「覚えがないんですがぁ…。」

「はぁっ?あたしの単位返しなさいよっ!」察するに彼女の本学は勉強。学生さんみたいである。

 自称超能力者はさらにズイッとヒロミに詰め寄り、じっと観察した。


「人間違いなんかじゃないっ!」

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