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開闢のミーディアム ~人ならざる者が見える辰美の視点~  作者: 犬冠 雲映子
ツギハギの町と憐憫たるスナッチャー編
263/349

ユートゥー・ノーモースター・スアヲルシィとかわいそうな迷子の犬 1

 睡眠中、違和感を感じ、恐る恐るまぶたを開けると見慣れない場所にいる。いつもの天井はなく、果てしない空間が広がっていた。

 漠然とした何も無い空。この光景は一度目にした事がある。宇宙だ。

 言うなれば布団ごと月世弥に連れられ、目覚めると宇宙にいたのだ。


「な、な!なんて事してくれんのよぅ?!」

「夢を介して接続したからしょうがないでしょ。人間の夢じゃ集合的無意識くらいしか行けないんだからな」


 シラーッとした巫女にイラつくが、真の辰美の容姿を借りた誰かも、集合的無意識の話をしていた。

 この場に到達するのは人ならざる者にとって楽なのかもしれない。


「感謝しな。これから太虚の近くまで行こうと思う」

「え、この前のお願い、覚えててくれたんだ?」

「私も太虚に興味がある」

 悪戯っぽく笑ってみせると、彼女は何もない漠然とした景色を指さした。右も左もないこの場では方向など意味が無い。


「太虚へはあの方向へ行けばたどり着くに違いない」

「分かるんだ」

「シャーマンだからね」

 シャーマンという生業がそこまで万能だとは思わないが、稀代の巫女だった女性が言うのならば信じてもいいだろうか。

 仕方なく布団を畳み、殺風景な宇宙を見渡す。


「百年かかるとかはないよね?」

「バカか?すぐにつくよ」

 巫女に呆れられながらも辰美は歩く事にした。




「なんか、何もなくて不安になって来たんですけどぉ」

 歩き疲れ、しゃがみこむと不平を漏らした。


「宇宙のデフォルトがこれなんだ。地球は良くも悪くも物が溢れてる」

「はあ…デフォルト、ね」

「この宇宙ができた神話を教えてやろう。人ならざる者なら誰でも知っているよ」


 宇宙創成の神話の始まりは、かつて数多くの宇宙の一つに双子がいた所から始まる。

 彼らは太陽の子と月の子だった。二人は協力しながら世界は均衡を保ち、宇宙は完璧に回っていた。

 しかしある時二人は仲違いし、それぞれに、しかしよく似た世界を作り出した。

 月の子が支配する宇宙と太陽の子が支配する宇宙。

 密接に、類似して、異なる宇宙が存在するようになってしまったのだ。

 やがて寂しくなった太陽の子は、双子になる金星を作り出した──。

 数多の中の、些細なお話である。


「わたしたちは、この中にある月の子の宇宙にいる」

 月世弥は概念的な宇宙の景色に溶け込み、言い放った。

「前から気になってたんだけどさ、月の子?月の神さまなの?」

「さあ、知らないね。わたしは聞いただけだ。顧兎(こと)に」


 月なんて、どうにでも想像できる。天体望遠鏡から望める月か、概念的、または神話に登場する月か。

 月の子が、月の子供なのか──はたまた異なる、何かなのかも。


「宇宙兎と深く関わるだけ無駄だよ」

 遥か遠い場所に月に似た輪があるのを見つけた。何も無い世界に、それだけがあった。

「あれは何?」


「月の現象だ」


「え?」

 輪廻(サンサーラ)──月の現象を辰美は目にする。月に似た輪は何かの集合体であり、とてもゆっくり回っているのだ。遠すぎて正確に可視できないが、見たくない気がして目を逸らす。

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