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開闢のミーディアム ~人ならざる者が見える辰美の視点~  作者: 犬冠 雲映子
ツギハギの町と憐憫たるスナッチャー編
260/349

心中 2

 巫女式神に触られたり、関わると何か悪い方向に向かっている。


「哀れな娘だ」

 表に現れた月世弥が吐き捨てる。何でもないように、くだらないと蔑むように。


「叶わぬ望みに囚われるなど」

「……哀れかな」

「どこまでも間抜けで、どこまでもアホだ」


 巫女式神。あの娘は、間違った方向へ向かってしまったのか。

 最初の、パラレルワールドなど知らない巫女式神を知らない。端からああだったのかもしれないし、性悪だったかもしれない。

 辰美も、他の辰美を知らないのだから。


 夜明けが本格的に町を暴いていき、今日も暑苦しい一日が始まる。

 辰美は気を取り直し、ベランダでタバコをふかし、日が昇るのを見ていた。




 午前十一時。昼のチャイムがなる前に、小林骨董店に到着し安堵した。コンビニで昼食を買って出向こうかと思ったが、もう体力の限界である。

 暑い。体に熱がこもり、何もする気がしない。


「辰美さん、その腕。包帯はどうしたんですか?」

 ガラス戸をスライドさせると、冷たい風が吹き当たる。談笑するために用意してある椅子に座っていた緑がジッと左腕を見つめてきた。


「半分ぐらい天の犬になってるから、隠す気も失せちゃって」

 恥じらいながらも、涼しい室内に安堵する。

「掃除するから、涼ませて欲しいな〜。昼寝とか」

「はあ、そうやって」

「おや、辰美さん。奇遇だ」

 廊下から店先にリネンが出てきた。手にはカットメロンを盛り合わせた皿をして。

「…」

「そう睨まないでよ。辰美さん、一緒にメロン食べるかい」

「辰美さん、一緒に食べましょう。リネンさんが持ってきてくれたんです」

「分かったよぉ…」

 虚勢をはるも全く相手には効かず、諦めて用意された椅子に座った。


「夏が長引くってのは体に悪いね。秋にドッと疲れがでる」

「リネンさんは、八月が繰り返されているのを自覚しているのですか?」

「もちろん」

 リネンはカットメロンを口に運びながら、平然としている。

「私は除け者だから、影響を受けにくいんだよ。中心に居る奴らほど山の女神のマインドコントロールを被弾しやすい」

 メロンは旬ではないため味がぼやけていた。ただし、冷たくて体を冷やしてくれる。

 麦茶を飲みながら、古時計の振子を眺めていた。

 セミの合唱が小さく聞こえてくる。ウトウトしてきて、辰美はこのまま寝てしまおうかと目を細めた。

 二人が何やら話しているが、頭が理解しようとしない。だが、内容が明瞭になった。


「再三言うが星守の祖父と私で、君の祖父である光路を助けようとした。光路は宇宙狩猟の猟犬群になり、今はもう、我を忘れているだろう」

「ええ」

「君の祖父はミームを汚染するきっかけを撒いてしまったんだ」

 ──ミーム汚染により、首都・東京は壊滅した。 ミームが現実世界に及ぼす影響を、世界は目の当たりにした。人間は、得体の知れない現象を危惧した。

 最善策の結果は、戦争だった。


「君の祖父は多大な影響を及ぼした"余波"に怯えていた。一つのピースを変化させただけで、こんなにも世界は壊れてしまうのかと」

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