小さな村、おくやまち 2
「こんにちは。それは?」
イズナ使いは多数の獣の中から鳥の方が気になったらしい。
「ああ、変に騒がしい鳥とアライグマがいたから駆除したんだ。ほら、駆除すると賞金が貰えるだろ。金になるし、不思議と動物らもソワソワして捕まえやすい。八月が繰り返されたから浮かれているんだね」
(リネンさん、じゃない…あの人はどうして)
平然としていられるのだろう?
「辰美さん、そんなに怖がらないでくれよ」
ハンティングベストからはいけ好かない火薬の臭いがする。あの鳥以外に人ならざる者を撃ち殺してきたのだろう──
──見車・スミルノフ。
この世に存在する─人ならざる者をなによりも嫌い、撃ち殺すトリガーハッピー。
──おとなしいUMAなんているものか。理性と文化を完全にコントロールしているのは、今のところ、我ら人間しかいないわけだけど。やはり彼らは獣だ。そうじゃないか?ライラ。
蘇る白昼夢に、頭が警鐘を鳴らしている。辰美はむせかえる過去の幻臭に苦しんだ。
「…いや」
「リネンさん。辰美さんになにかしたのですか?」
尋常ではない反応に緑は片眉をあげ、訝しそうに警戒した。
「なに…最愛の人に再開しただけさ」
寒い、軽薄な唇の笑みに辰美は怖がる。だが彼女はあっけらかんとしていた。
「そういえば緑さん、エベルムに会ったのかい?」
「はい」
「なら話は早い。坐視者になるのなら愛が必要だ」
「そぞろみるもの?」
「知らないのかい?」
「なるほど。天の犬って言うのは"宇宙狩猟の猟犬群"を指すんだ。坐視者じゃない」
「エベルムは宇宙狩猟の猟犬群でしょ?」
宇宙を駆ける猟犬に似た宇宙生命体たちの総称。
別名「宇宙の猟犬」や「宇宙創成の神の猟犬」。
彼らはみな猟犬に似た外見をしており、白銀に近い毛並みと赤い耳をしている。燃えるような銀炎の尾をもつ。
坐視者としての側面もあるが、大体は時空が滅びる瞬間や分岐が変わる瞬間に現れるため恐れられている。
どこかへ決まった場所へ駆けていくのか、ただ走っているだけなのか不明瞭な生態系の存在である。
「宇宙狩猟の猟犬群は本来は坐視者じゃあない。アイツはまた違う生き物だよ」




