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開闢のミーディアム ~人ならざる者が見える辰美の視点~  作者: 犬冠 雲映子
ツギハギの町と憐憫たるスナッチャー編
237/349

太虚の虎 3

「リネンさんは町の外れに住む医者で、人ならざる者が見えて、よく狩りをしてて──」

「アイツは医師免許も持っていないし、猟銃も使わねぇよ」


 見車 スミルノフは──人ならざる者より人類が最良の、真の地球の支配者だと信じてやまず、人ならざる者や上位の存在である神に対して嫌悪感を抱く、そんな人物だ。

 "本来の世界"では未確認生物排斥派の上層部の一人であり、未確認生命物体愛護団の有屋 鳥子と対立していた。

 竹虎はその思想が心底嫌いだと吐き捨てる。


「人ならざる者には容赦しねえ。アイツならこの町の人ならざる者をミナゴロシにするだろうヨ」

「じゃあ、リネンさんって…」

「アイツのこたぁ、なんか小細工してるんだろ。いけ好かなねェ」

「うーん」

「アイツはティエン・ゴウなんじゃネェか?ってね」

「てぃ…?なんて?」

「ティエン・ゴウ──元いた者のガワを被っているナニカさ。ヤツらは食神鬼とも呼ばれ、特定の神霊、種族を食らうンだ」

 最初に食した種族などに対し異常な執着を持つ。

 その影響力は惑星を脅かす危険な存在と伝えられている。

「麗羅に執着しているのは間違いねェ。どうやら、この時空にいるのもそれらしいしな」

「えっ。何で?知ってるんですか」


「寝ぼけてるようだナ。目え覚ましてやるか」

「えっ、あの、起きてます」

「オラッ!麗羅、やるぞ!」

「いや、やめて!」

「歯ァ食いしばれヨ!」


 酷いビンタをかまされ、地面に倒れ込む。何をするの、と反論しようとしたが、己もこれをやった事がある。


(確か…ビルで)

 記憶が混乱する。

(──私は)

(──せんみょう)

 仙名(せんみょう) 麗羅(らいら)


 屋上の辰美に出会った時の、麗羅の記憶が蘇る。

「人畜無害な悪目立ちするだけのUMAだ」

「都合のいいUMAですね」

「当たり前でしょ。被害がでたら、私達打首獄門(うちくびごくもん)だよ」


 平和な国を脅おびやかす存在を生み出したら、確かに非国民として爪弾きにされてしまうだろう。あらゆる方面からおぞましい結末が待ち受けるのだ。魚子は一体全体、人畜無害な生物が地球上に存在するのだろうかと思いを巡らせる。

 やはり人が創造しなければ生まれやしないのか。

 ──人畜無害な悪目立ちするだけのUMAだった。……なのに。


 廃れたビルがある。■■はこのビルに馴染みがあった。遥か昔妖獣人(ようじゅうじん)が教えてくれた夕日の絶景ポイントである。その妖獣人が今何をしているかは謎だけれど、暇になればここに出向き町並みを見つめる。暇つぶしの拠点であった。

 この場に来ると不思議と気持ちが凪いで、ぼんやりした頭が冷静になる。それと同時に悲しくて切ない、辛い過去を思い出しそうになる。けれども「ソレ」を思い出そうとは思わない。


 階段を登り屋上に行くと焼け付いたコンクリートと錆さびつく手すり、あとは汚れた貯水タンク。なんの変哲もない屋上である。

 霞んだ山のシルエットと遠巻とおまきに佇むビル群。晴れ渡った昼間の柔らかな風が誰もいない空間を漂っていく。


(私は、この場にいた)

 ───麗羅─は暴れる髪を押さえつけ、無心にかえる。

(え…麗羅さん?)


「ねえ」蚊の鳴くような声が不意に屋上を制した。二人は顔を見合わせ、発信源をさがす。

「おねぇさんたちなにしてんの?」


 女子高生──と思わしき──がひとり、ぽつんと階段に座っていた。そこいらの私立高校の子だろう。その制服の学生が何度か町を歩いているのを目撃している。いかにもお嬢様とまではいかないが、お家の良さそうな娘さんであった。


 ──佐賀島(さがじま) 辰美(たつみ)


(私は…?)

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