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山の女神と幻像の巫女 《再開》6

「…。命令よ、嘘をつかずに正直に答え──」

「精神干渉なら願い下げです。祖父に、いえ、小林 光路(こうろ)に星守 奈木(なぎ)が手伝いをし、月世弥の遺骨を盗掘したのですから」

 それを遮り、イズナ使いははっきりと言葉を発する。


 彼女は淡々と光路と星守のやったことを話しだした。

 祖父・小林 光路は三十代の頃、何か強い理由があり、月世弥を一時的にうつし世に復活させたかった。噂で聞く魂呼ばいを実施したかったのだ。それには遺骨や毛髪など、故人の一部が必須だと考えた。町役場から遺骨を盗もうとしたが、ないのを知った。ならば頭蓋骨だ。

 光路の親友であった奈木も星守一族が古来から所有していたまじないを利用し、魂呼ばいをしたかった。二人は何かを聞き出したかったのかもしれない。そこまでは日記に書かれていなかった。

 ねん密に、内密に、円墳に埋葬されていた月世弥の遺骨を二人がかりで掘り出したのだ。

 しかし何らかの障害が立ちはだかり、計画は無になった。頭蓋骨を隠さなければならなくなった奈木はタマヨリメを祀ってある祠に隠したのだった。


「そう…、月世弥は、死後もなお思惑に弄ばれたのね」

「祖父に代わり謝ります」

 頭を下げた光路の子孫に、影を落とした婦人は静かに言い放った。


「貴方の祖父は、歴史を改変した罪がある。それを償うにはとてつもない年月を要する。それでもいいのなら…」

 その言葉に皆は動揺を隠せないでいた。

「町を調べていたのは、人でないこちらも知っていた。たくさんの人ならざる者がそれを目撃していた。なんせ人の力を逸していた。─彼は天の犬になりかけていたのだから」

 春木の言葉に、彼女は俯いて歯を食いしばった。

「どうして話しちゃうの!?」

 たまらず叱責してしまう辰美に、春木は人ならざる者の顔で平然と、冷酷に答えた。


「事実だからよ」

「先輩、おやめ下さい。脆弱な、脆い生物である人には背負いきれません」

「ならば不死という劇薬があるかもしれない、この椿を食べてみなさい」

「せ、先輩!先程からっ!」

「冗談よ」悪びれもなく微笑んだ上司に有屋は眉をひそめ、肩を落とした。


「では、星守邸に行きましょうか。私も興味が湧いたわ。魂呼ばいを再開する」

「…。ダメです。魂呼ばいはとても危険です」

「トリネ、お黙り」

 ピシャリとはねのけられ、はあ、とわかりやすいため息をついた。


「神々は怒りますよ。どう落とし前つけるんですか?」

「それは私には関係ないわ。秘密にしてしまえばいい。ここにいる全員が口を噤めばいい」

 あまりの暴論に場が凍りついた。絶句する皆を一瞥し、春木は構わず歩き出した。


「ちょっと先輩…はあ、ああなったら一歩も引かない。…これは秘密よ、いい?ネーハ」

 ネーハは渋々頷き、二人は顔を見合わせた。「秘密にしましょう。消されたくはありません」と緑も同意する。

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