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山の女神と幻像の巫女 《再開》1

 圧倒されてしまい条件反射で肯定したはいいが、気がかりではある。

 円墳の存在や月世弥の功績──歴史を町に忘れるようにしむけた山の女神である春木。

 ──辰美、私を調べろ!余すことなく─全てを暴いてみせろよ!

 絶叫に近い、横暴な言葉が鮮明に甦る。

 やはり月世弥を調べるのを止めたいのではないだろうか?


「悪い予感がするよーな…」

「怖気付いたのですか?」

「い、いや、アタシの第六感(シックスセンス)がそう言ってるんだよね」

「それには賛同できませんね」と言われてしまい、苦笑いするしかなかった。

「怯んだのなら、それこそタヌキ野郎の思惑通りになってしまうのではないですか」

「そ、そうだよね…」

「祖父の残した行いが町に歪みを生んで居るのなら…私が…」

「えっ?」

 か細い声音でもらした言葉に、辰美は思わず聞き返した。

「なんでもありません。…スイカ、まだありますから食べましょう」



 寝苦しい夜が明け、灼熱の昼間がやってくると思うと憂うつだ。体を起こし、寝ぼけていると玄関の郵便ポストがカパカパと悪戯されているのに気づいた。

 不審者か、ワルガキか。

「何の用ですかあ?」

 怒りを含みつつ、玄関に向かう。「おはようございま〜す」


 悪戯の正体は成人男性に"限りなく近い"形をした人ならざる者──天津甕星だった。ざわざわと蠢き、呻く、夜色の髪と同化した触手たち。腐敗し、死人めいた土色の肌。怪物じみた牙や裂けたような目がこちらをゆうに見下ろした。「ちょっと…!ひっ!」


「ああ?ごめんねえ、月世弥の真似をするのはやめたンだぁ」と彼は言った。

「アンナ奴の真似をしても必要とされない、ってのが分かってさぁ。まぬけみたいだろ〜?」

「は、ははは」

 無理やり愛想笑いをしてみるも、悪神は気にもとめてなかった。神とはそのようなものなのだろう。

「鬼神ッテ奴のいる神社に来て欲しいんだがねえ」

「鬼神さんに何かが?!」

「ナンデモ、神社に遺された魂呼(たまよ)ばいの呪法が記された書物が見つかったんだと。鬼神が接触してきたンだ」

「はあ…」

「あの巫覡は相変わらず愚直なヤツだねえ」

「あの人の事、知らないって前に言ってたじゃない」

 訝しげに見つめるも、かえってカラカラと笑われた。

「異国の巫覡を覚えていないけれども、魂は記憶している。だから分かるのさ」

「都合がいいなぁ」


「さあ、行こうぜ。ドレスコードはナシだってよぉ」

「当たり前でしょ?神社なんだから」

「神前でそりゃーねえだろ」

「ま、まあ」

 言いくるめられ、地主神のいた神社に向かう事になる。

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