表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
201/349

山の女神と幻像の巫女 《まぼろし》13

「…何の用?」

 警戒心をむき出した様子に子供は苦笑いし、おどけてみせる。

「そう怖がるなよ。魔筋は、人ならざる者には優しい側面があるんだ。あたしを外敵…神霊どもから守ってくれる」

「…ならアタシを引き止める必要なくない?」

「山の女神は…天道 春木は我を忘れ、時空を歪めたんだ。自分勝手なヤツなんだよ。アイツを信じちゃダメだ」


 釈然としないまま、腕を組んだ。

「今ねえ、命からがら月世弥から逃げてきたワケ」すると巫女式神は表情を曇らせ、ブロック塀に寄りかかった。

「邪悪なる者モドキに遭ってよく生きてるな…。()()()()()()()()()()、ってワケか」


 月世弥は魔筋に迷い込んだ人間を呪殺するという。そうなると人間は生きて帰れない。また彼女の通った道は魔筋となる。神聖な道や封魔の道を千切り、呪詛していく。越久夜町に魔筋が多いのはそのため。

 巫女式神は永遠に続く魔筋の奥を見渡していう。


「この町は崩れかけているんだよ。なあ、あたしに任せてくれないか?あたしなら、いつでも、どこにでも行ける。始まりの場所にも行ける。月世弥の苦しみも無かった事にできるかもしれない」

 力説する怪しい人ならざる者に、こちらは気圧され困惑する。

「辰美、あんたが持っているものをあたしによこしてくれよ」


 ──私にその体をよこせ。


 人ならざる者の薄気味悪さを実感し、構わず辰美は歩き出した。早く陽の当たる場所に逃げてしまいたい。

「人ならざる者ってそればっか」



 翌朝、腰まで天の犬の毛皮が進んでいるのをみてショックを受けた。包帯ではやりきれなくなり、やるせなさにしゃがみ込んだ。以前より取り乱さなくなったが頭がぐるぐるする。

 天の犬化が進み、やはり自分に時間が無いと焦る。巫女式神と出会うとなぜ必ず進行するのだと、不思議に思う。

 巫女式神は"バッドエンド"を望んでいるのではないか?辰美が、幸せになれなかった未来を望んでいる─なぜだ?

 山の女神を殺め自らが主人公に成り代わる。それは大切な人を、失いたくないから?

(大切な人って─)

 思考を遮るかのように携帯が鳴った。見ると非通知だった。

「もしもし?」恐る恐る出てみると、「三ノ宮です」と男の声がした。

明日(あす)十一時に、緑さんの自宅へ来てくれませんか?私も向かいます」

「えっ、さ、三ノ宮さん?」

「では、また明日会いましょう」

 プツリと通話が切れ、辰美は唖然とする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます。

こちらもポチッとよろしくおねがいします♪


小説家になろう 勝手にランキング


ツギクルバナー


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ