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山の女神と幻像の巫女 《まぼろし》12

「私に再び遭うなんて、運がよっぽど悪いんだね」

 月世弥が薄ら寒い笑いを浮かべ、眼前に佇んでいた。彼女は魔筋(ますじ)を見渡す。ちぎれた注連縄だらけの道はやけに静まり返っていた。

 二人しかいない路地で、辰美は必死に息を整える。


「私を調べても何も良い事なんてないよ。前も言っていたはずだよ。でも一泡吹かせてやりたいのも本心だ。そうだ、この際やってしまおうか」

 一人合点した月世弥。彼女はこちらに腐敗した手を差し伸べた。

「辰美、私と共同作業だ」

 理解できないと後退るも、あちらは気にしていない。

「信じていた人に裏切られるってどんな気持ちだと思う?」

 今まで仕えていた生涯、時間はなんだったのだろう。

「──春木は、山の女神は私を覚えている。春木が永遠にこの地に──私に縛り付けられ、狂うように。そんな気持ちになった事はある?」

 ないと辰美は首を振る。すると月世弥は一歩前に出た。

「私にその体をよこせ」


 咄嗟に逃げようとしたが一気に視界が赤くなる。金縛りになり、腐乱死体が徐々に近づいてくることだけが感知できた。辰美は死を覚悟した。


 項がカッと熱くなり、ひょこっと細長い人ならざる者─イヅナが顔を出す。視界をイヅナが横切るや体躯は巨大化し、辰美の前でとぐろを巻く。牙を剥き、威嚇すると月世弥の喉に噛み付いた。

 血しぶきが上がり、彼女の首がもげ転がった。

 悲鳴をこらえ、辰美は月世弥の胴体の先を行く。


「辰美、私を調べろ!余すことなく──全てを暴いてみせろよ!」


 事切れたはずの女性の喚きにすくみそうになりながらもイヅナの後を追う。辰美は出口に出ろ、と念じながら走り続けた。

「地球の神よ、私を輪廻へ導かないくせに!」

 迷宮のような路地を走り、ひたすらに前を向く。後ろを振り返るな、そう誰かに言われた気がした。

 息を切らし、出口が見えた。イヅナがひょい、と光の先へ行ってしまう。あのイヅナは─いつの間にかなりを潜めた、不思議な個体だった。


「待って!」


「そうさ、待つんだ」

 出口付近に巫女式神がいた。「お久しぶり」

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