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山の女神と幻像の巫女 《はじまり》2

久しぶりとす

 道中、行く宛ても分からず少女についていくが、やはり不信感は拭えなかった。

「どこに行くのよ?」

越久夜間(おくやま)神社」

「えっ!」

「このマジカルステッカーがあれば、謎が解けるかもよ?」

 そう言うなり、スカートのポケットからこの前作ったハリボテの"護符"を取り出した。

「まだ持ってたんだ」

「気に入ったからねっ」


 二人は神社に向かう途中、コンビニエンスストアの駐車場で有屋 鳥子と緑が話し合っているのを見つける。狭い駐車スペースに停まっているのは一台の軽自動車のみで、二人が立ち話しているのは浮いていた。

「辰美さんは…」


(アタシの事?)


 何やら辰美自身の話をしている様子で、恐る恐る近づいた。

「おやおやぁ?何か不穏だねえ?」

 天津甕星に茶化されつつも、無意識に呟いてしまった。

「…どうして私のことを?」


 有屋と緑は辰美を見ると途端に口を(つぐ)んだ。疑問に思うが、二人に問いただした所で明かしてくれないだろう。

「ああ、噂をすれば」

 緑が今こちらに気づきましたと、わざとらしい会釈をしてきた。

「なんでアタシの話してんですかあ?」

「いいじゃない、別に。」 なあなあにされ、ムスッとする。

「それこそ辰美さん。これからどこへ行くのかしら?」

「越久夜間神社に行く予定で…」

「何故?」

「何故って」

 鬼気迫る様相で彼女は問うてきた。タジタジになりつつも、話を逸らそうと考えあぐねる。


「あー、えっと…ある巫女、すごい昔にいた巫女の話を知らない?それを春木に聞きたいとも考えているんだ…」

「ああ、タマヨリメの…あの神話ね?」

「たまよりめ?何ですかそれ?」

「…。あれは確かに、実際の出来事よ。けれど貴方が怪しげなバケモノから話された内容は少し違うの。それを先輩は知らないわ。だから考慮して」

 有屋は子供にいいつけるように言う。はて、何故に巫女式神から話を聞いた事を知っているのだろう?


「記憶を改ざんしてしまっているのよ」

 あの妙齢の女性の危うい気色を少し理解した気がした。人間らしい神ではあるが、何かが欠落している。

「彼女は巫女の死へのショックが大きすぎて、自らの記憶を改ざんして生き延びてきた」

「そ、そっか…」

 気まずくなり言葉を濁す。有屋はため息をつくと、気を取り直した。

「常人が彼女へ──山の女神に辿りつけるとは思えないけれど」

「そうだよね。春木さんが働いてる場所とかに行けばいいかな?」

「彼女は、春木としてなら町役場にいるけれど、応じてくれないでしょうね。神として会うのならば越久夜間山の神社の社務所へ行きなさい。たまに業務をしているから」

「えぇ〜神社に行ったけど前もダメだったよ。」

「じゃあ無理ね」


 キッパリ言い切ると有屋 鳥子はアイスコーヒーを飲んだ。

 常人が彼女へ──"山の女神"に辿りつけるとは思えないけれど。確かにその通りだ。

 もし天道 春木と出会えても人間として振る舞われるかもしれない。

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