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幻像の気配 9

「いやぁ〜〜っ!怖いよぉっ!」

 大きな岩の前でしゃがみ震える辰美(たつみ)にため息を着いた。

「貴方の行動の方が怖いですよ。山裾は雷が落ちやすいんですから…」

「だって!あんな近くに落ちた事ないもん〜〜!あんなだだっ広い場所にいたら直撃だって!」

 錯乱した様子に耐えかねて、隣にしゃがみこみ視線を合わせ緑は言う。

「なら、ここで体力を温存しましょう。下手に動いて遭難したりしたら、それこそ愚行です」

 深呼吸をして頷いた辰美を見やると、滝のような雨が葉にあたりほとばしるのをうざがった。


 山の入口というよりは山へ侵入してしまっている。木々が鬱蒼(うっそう)と生い茂り、完璧ではないが粗末な雨宿りはできた。轟く雷鳴にいちいちびっくりしながらも、辰美は水浸しになった地面を眺めるしかない。ゲリラ豪雨が必ず去るのは分かっている。それまでジッとしていればいいのだ。


「私も反省しなければなりませんね。こうなるのは容易に想像がついたのに、好奇心が勝ってしまって」

「好奇心は猫をも殺す、ってヤツ?…私も少し気になってたし、緑さんのせいじゃないよ」

「…。そうですか」

 濁った瞳を陰らせた緑に、辰美はあわてふためいた。


「でもさ!ここに岩があってよかったよ!なんか守られてるみたいじゃない?しかもなんか雨弱まってきた、し…」

 振り返り岩を見やると、ただの自然の岩ではなく人面か、または獅子のような──人工的な石像だった。


「な!なにこれ?!」

「…なんだか、石仏にも見えますね」

「えっ……あ、大丈夫かな。霧が出てきたんだけど」

 どこからともなく濃霧が漂い始め、辺りを白く染め上げてしまった。二人は尋常でない出来事に身を固くする。

「…人ならざる者の仕業かもしれません。天狗か…例の魔神とか」

「やだー!もー!逃げよう!」

 再び抱きついてきた辰美をひきはがし、シッと黙らせた。

「落ち着いて」

「ウッ…ウッ…怖い…」あれほど土砂降りだった雨が小雨になり、風も凪いだ。ポタポタと木々から雨粒が零れ地面にぶつかる。

 辰美は向こう側にもう一体、同じ岩があるのに気づいた。「さっきまでなかったのに…」

「…これは門神か、守護獣…?」

「え?なにそれ?」

 立ち上がった緑に目をぱちくりさせたが、彼女は同行者には既に眼中にないようだ。


「辰美さん」

「どうしたの?」


 数歩離れ、なにやら唖然としている。辰美は恐る恐る隣に来ると言葉を失った。

 無限に続く階段が、出現しているではないか。

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