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時空を超えるという事は 4

 地平線が夏の蜃気楼に揺らめいているようだ。水田地帯のざわめく稲穂がさわさわと音を立て、大きな入道雲が連なっている。

 眩しい、夏だ。

 厳重に管理されている電気柵がなければ誰もが抱く七月中旬の理想だったろう。


『立ち入り禁止』と何カ国もの注意書きが添えられたそれは、向こう側にある瓦礫の山を閉じ込めているみたいだった。看板には見たことの無い、アッカド語やシュメール語のように、それらとはまた異様な楔形文字に類似した文字もある。

 辰美がいた時代にはなかった文字だ。


 かつて大都市と(うた)われた東京と呼ばれた歪んだ塊のシルエットが、青空の下で(そび)え立っている。ビル群の割れたガラス窓が太陽光を反射して煌めいていた。

「私、初めて見たかも。ずっと昔はあんなでっかい建物あったんだ」

 見水(みみず)が車内から言う。

「辰美はあそこに住んでたんだよね」

「まあ、あそこまで中心部じゃなかったけど」

「なんか夢の話みたい」

「私は、─…私も夢を見てるみたい」

 絶望に似た寂しさが喉から込み上げる。飲み込んでぼんやりとつわものどもが夢の跡を眺めた。

「ビル、崩れるのも近いでしょうね。ここ数年で何棟か倒れたようですし」

 緑が冷たいお茶を飲みながら、片手に大きめの弁当箱を持っていた。

「わ!昼食ですか?」

 それを見た見水が目を輝かせた。

「ええ。皆で食べましょう」

「お〜〜緑さん、やるぅ!」


 その時だった。


 急ブレーキを踏んだ車が隣に停車した。豪快な登場に三人は驚いた。

「今すぐ越久夜町に帰りなさい!」

「ギャッ!」

 車から越久夜町の神にして人間の有屋(ありや) 鳥子(とりね)と使いのネーハが降りてくる。どうして場所を特定されている?


「うわ、うるさいのが来た!」

「聞こえてるわよ!山の女神が怒る前に帰りなさい」

 怒った様子の有屋が二人を車内に押し込んだ。

「な、なに?!別に旅行したっていいじゃない!」

「貴方が町の人間に与える悪影響は計り知れないのよ!?女神の精神干渉が解けたらどうするの?!」

「は?精神干渉?なんですそれ?」

 緑が理解不能の冷たい声音で問うた。


「一般人間は黙りなさい。─そうね、ミヨシパーキングエリアで昼ごはんでも食べましょう。近くに関越自動車道があるでしょう。そこからすぐよ」

「ミヨシパーキングエリア?なにそれ?」

「あら、二千十六年にもあったはずよ」

「へー」

「と言っても現在使える技術は限られているから、大半は廃墟に近いわ」

楔形文字をネットで調べました。

めちゃくちゃ楔形文字博士でないので、よく分かっていませんが学生時代に楔形文字は勉強しました…ような。

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