時空を超えるという事は 1
「東京か…」
東京、という名称がまだ残っているのだと感心する。日本の中心であった東京都。辰美の家族が住んでいた場所。
異なる世界の佐賀島 辰美の近辺は、どうなっているのだろう?検討もつかない。
──明後日、朝八時に骨董屋で集合しましょう。
緑からの電話に頷くしかなかった。きっと緑は返答を望んではいない、そこまで彼女は優しくはないのだから。
ベランダに座りながらお酒を飲む。親戚から送られてきた物だと、大家さんにもらったビールだった。
飲酒は久しぶりだ。あの苦い記憶はカウントしないでおく。生ぬるくなったビールをすすりながら、無心で景色を眺めていた。
「東京だと、そろそろお盆だよね…」
ふいに携帯をポケットから取り出して、カレンダーを選択する。
携帯のカレンダーなんて何ヶ月ぶりに確認するのだろう?シンプルな表示を期待して、辰美は指を止めた。
そこにあったのは、想像を絶する光景だった。人ならざる者の文字に似た難読な文字がカレンダーに踊っている。よくある文字化けではなく、あの不気味な文字。
「ヒッ」
携帯のカレンダーが"バグ"だらけなのを今更知り、辰美は床に投げつけた。気づかなかった。いや、逃げていたみたいだ。
その場にいるのがとてつもなく気味が悪くなり、急いでサンダルを履くと、夜中の町へくりだした。