表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/349

星神と鬼神 10

「殺されちゃ困る。この時空ではイレギュラーな行動だぞ」


「エベルム。遊んであげただけだよ」

 エベルムが立ちはだかり、野犬のような勇猛な唸りを上げた。

「…ふふ、小娘。発言には気をつけな」


 体の腐敗してえぐれた皮膚が修復され、綺麗な肌が顕になる。血にまみれた衣を羽織った巫女は空洞になった眼窩を細めた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「はあ…コイツはお前に耐えられるほど頑丈じゃない。人間なんだぞ」

「これが人間だって?」

「人間ですっ!失礼な!」

 ムッと抗議した辰美に興味を失ったのか、彼女の起伏は平生に戻ったみたいだ。

「笑えるね。…邪魔が入ったからおいとまするか。」

 月世弥(つくよみ)の姿がフッと煙のように消えるや童子式神が現れ、きょとんとしている。


「あ、あれ?なんであっし?あ?」

「…こ、こんにちわぁ」

 挨拶をした辰美にビクリと縮こまって、次にエベルムを見た。

「ひイイ!!」

「あー、怖がんな。なんもしねーよ」

「ギャッ!逃げにゃ!そ、そうだ…み、巫女式神(みこしきがみ)に会いに行かないと!」

 スタコラサッサと脱兎のごとく逃亡した式神へ親近感を覚えるも、どういう状態なのか分からずじまいだ。


「言動には気をつけろ」

 呆然としていると、蔑んだ目付きで叱りつけられる。

「──私は!」

「もういい、帰れ。今日のお前はやらかしすぎてる」

「ぐぬっ」口に肉球を押し付けられ、黙らせられた。「帰れや」

「わ、分かったわよっ!じゃあさ!」

「じゃあさ?」

「い、一緒に帰って…」

 その言葉にエベルムは燐光を発する目玉をまん丸にした。

「お前…ビビってるのか?」

「ちょっとだけっ!」



 無言をつき通し、トボトボと歩きながら見慣れた景色を眺める。恐怖の路地から無事抜け出せたのは良かったが、余韻が抜けない。

「月世弥はいい人そうじゃなかった。…春木(はるき)さんの覚えてる月世弥とはだいぶ違う。けど、山の女神である春木さんを奮い立たせないと…」

「ヒトってのは善悪で説明できやしない」

「分かってるよ…少し、驚いたんだ。」

 童子式神と月世弥はどのような関係なのだろう?それに童子式神は、一体何者なのだ?

(わかんない)

 辰美には思慮する余力すらなかった。


「ヘルプ」

「二回目を使うのか?」

「うん。教えて」

 エベルムは顎の下の毛並みを撫でると、確かな声音で言った。

「神世の巫女について、小林 緑または見水 衣舞(いま)と調べろ。協力者はどちらでもいい。もう一度、月世弥と会うんだ」

「緑さんたちと?何でよ?」

「それは三回目のヘルプかい?」

 まさか、と口にしようとした瞬間ポケットの携帯電話が鳴った。緑からの着信だった。

「もしもし?」


「辰美さん。急ですいません。明日()()の近くまで行きましょう」

「星神と鬼神」はこれで完結になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます。

こちらもポチッとよろしくおねがいします♪


小説家になろう 勝手にランキング


ツギクルバナー


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ