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開闢のミーディアム ~人ならざる者が見える辰美の視点~  作者: 犬冠 雲映子
未確認思惑《パラレルワールド分岐点》
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未確認思惑「非現実の支配」

パニック映画やホラー映画で主人公や周りの人がパニックになりならがらも助けを求めるシーンって見てるこっちもドキドキします。感情移入しやすい体質って言うのもあるんでしょうけれど。

今回は短めになります。

あとSOSは廃止されたのですね。これから魚子はメーデーを組織に要請しますが…。

Maydayもあるからちょっと混乱しますね。

「随分と早いじゃないの。」

「アァ、日本国もトチ狂ったみてェだ。」


 いうが早いか放送がかかる、爆音にかき消され何を言っているかまでは聞き取れない。内容はなんとなく分かる。外に出ないでください、だ。


「泣いてねェでしゃきっとしろいっ!」


 すすり泣き震えていた魚子(ななこ)を竹虎が叱咤する。バイヤーの彼女はこんな事態に適応できないみたいだった、いや、これが普通なんだろう。爆音がなければ阿鼻叫喚が聴けるだろう。状況を把握しないという行為はとんでもない悲劇を産むものである。脳裏にホテルの面々が過ぎる。上手く逃げ延びただろうか?


「ほ、本部に連絡しなきゃ…本部に…」

「この調子じゃあ潰れてるんじゃないかなぁ?連絡するとしたら支部だね。」

「元はといえばあんたのせいでっ!」


 魚子は壊れてしまったようだ。ソニックブームが窓を揺らす、本格的な錯乱が訪れたみたいである。民など二の次になるほどおぞましいものがいるのだろうか?そういえば姿を確認していない。UMAの全貌を読める情報をえていないのだ。


「メーデー、メーデー、メーデー!都市部で巨大なUMAが暴れてますっ!今すぐにハンターを要請してくださいっ!―なんで繋がらないのよ!!」

 パニックを起こし携帯を投げつけている。あれは宥めたら悪化する、しばらく放っておこう。


「タケやんは例のUMAを知ってたの?」

「噂でね。マスコミが取り上げるくらいには有名だったなァ。あんたはホントに知らなかったのカイ?たまにゃテレビ見た方がいいぜ。」

 平然としている竹虎がにやにやしながら小言を漏らした。やつはいつもそうである。チェシャ猫みたいににやけながら世の中を斜めに見ている。今だって。

「あれー……ちゃんと見てたんだけれどなぁ…?」


 だっていつもTVというものはへんちくりんなゴシップしか流れていないじゃないか。目を皿にしていても物事は氷山の一角でしか観測できないのだから。

 なんていうクサイ言い訳を並べながらふと室内が沈んでいるのに気づく。雨雲が頭上にさしかかったのだろうか?それよりもなんだか騒がしい。


「やって来たかぁー?」

「何が?」

「人食いタコさ。」

「タコ?」

「おうよ、こりゃ三流映画のパニックものよりヒデェぜ。」

 竹虎が窓を開け放ち、ボーガンを構えた。

「ねえ」

「あーコリャ、届かんか。もうチッと近くによんねーと…。」


 能天気に「タコ」の実態を確かめようとしている。デカブツを押しやり、割れた窓ガラスから外を眺める。


「…わ。」 

 いつしか描いた下手くそな怪物が現実をさ迷っていた。あのくだらない一日が鮮明に甦る。走馬灯の如く麗羅に押し寄せた。予言通りUMAはこの世に産み落とされた。


「あそこまで成長させるなんて…」


 少女の濁った瞳を振り返る。自殺なんて、とんでもなく七面倒臭いことしてしまったみたいだった。あの時大人面して説得まがいの対話をしてみたところで。運命は変わらなかったのだと。

 運命なんぞロマンチックなものではなく、彼女の意志は最初から死に囚われていたのである。馬鹿馬鹿しいではないか、やっぱり他人と話すという行為ほど無意味なものはない。


「でも、きちんと約束は守ってくれたのね。」

「何言ってるんですか!」不謹慎だと魚子が罵ってくる。

「約束を守る、人として最低限のマナーでしょ?」

「おら、みな。この世の終わりダゼ。」


 妖獣人が二人の意識を逸らす。爆発物が瓦礫を作る合間にそれはまたたく間に環境を汚染する。 

 ビルも公園も野良猫も交差点も、すべてがタコに変換されていく。逃げ惑う人がタコに呑まれたかと思えばそこにはコピーアンドペーストされた下手くそなタコがいた。

 視界がタコに埋まっていく。そんな馬鹿げた展開、どんな現実でもありゃしないだろう。


 タコが発する理解不能な叫びは多分人だったモノから発せられている。

 自衛隊員があらぬ方向へ銃口を向け乱射するや、まだ原型を留める人間へ当たり、血飛沫はタコへ変換された。崩れ落ちるタコを彼は目にも止めず銃弾が切れるまで撃ちまくる気でいる。

 まるでパニック映画だ。想像より人類は弱々しく、流れ弾が多い。


―すごい…。


 天界まで突き破ってしまうのではないかと錯覚するほどタコは増殖していた。どうやら竹虎や魚子にはまた別の「タコ」が写っているようだ。怪獣?それとも宇宙人?はたしてあれがタコなのかは不明だけれど紆余曲折、タコはあそこまで成長してくれたということだ。

 人類は古臭く金物を好む。集合的無意識の皮膜を破り生誕した魔物を無意味な爆弾で挑発している。


「人類ってのはアホだよなァ。武器どうこうで解決できる部類が運良く現れるとしか考えてネェのさ。」

 竹虎が現状を笑い飛ばした。

「と、ともかく!打開策を実行するんですっ!」


 勇猛果敢な戦士であろうとするバイヤーは息巻いた。人は死に直面するとなるとすぐにこうなる。

「いやぁありゃもうだめなんじゃないの?」

 平手打ちをされ、オーバーリアクションに肩をすくめた。

読んで下さりありがとうございます!

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