表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/349

越久夜町の偽神話 2

 越久夜町から離れた隣町─蛭間野町は学園都市として栄え、二つの大学がある。辰美が通っている文系大学と医療系の大学。医療系の大学の方が世間では有名だ。

 この町は田舎で寂れた越久夜町とは違う。大都会とまではいかないが適度に発展し、長閑な住宅地が広がっている。連なる山々から開けた平地に近いためもあるだろう。

 正午に近い晴れた夏日。越久夜町を抜ける四ツ岩トンネルを経由して、隣町にやってきた。

 夏休みが近く、はしゃいでいる大学生たちが行き交う中、辰美は自転車を駐輪場に停めると、大学病院に向かう。星守がどこに入院しているか全く分からないが、運良く有屋 鳥子がいるかもしれないし、受付に聞いてみたら何とかなるかもしれない。何より病院に名前が書いてある。

 ずばりノープランだ。

 分からなかったらまた来れば良いのだ。

 病院の待合室を通過するとフロアガイドを眺める。小児や老人専用の階より上に居そうだ。大学病院は大きな施設だ。知らない部外者が紛れ込んでいても、不審な素振りをしなければ大丈夫だろう。


 早速エレベーターに乗ろうとした折、現代社会では見慣れない姿の子供を見かける。

  異国の少女がぽつんと通路を歩いている。メイド服をきた年端もいかぬその存在は浮いていた。

 小麦色の肌をした四歳くらいの女の子。華美でないメイド服は彼女に合わせて作られたのだろうか。

(あ、あの子)

 人ならざる者だというのは一目して分かる。奇抜な格好をしていても、誰も見向きもしないからだ。ナースも医者も患者も。そして辰美はその子供を知っていた。


(ネーハちゃん、どこにいくんだろう。まさか)

 ネーハという人ならざる者に、辰美は慌てて後をつける。階段をのぼり、予想通り向かおうとしていた階まで上っていった。

 探偵の真似事のように後をつけたがさすがに息が上がる。ヘロヘロになりながら通路を歩いていくと、ネーハはある病室の前で立ち止まった。


「ネーハちゃん!」

「え…辰美さん、どうしてここに?」

「星守さんのお見舞いに」

「えっ、なぜだい?悪い行いをした者に見舞い?」

 心底驚いた、と目をまん丸にしたネーハに苦笑を浮かべるしかない。確かに彼は町をめちゃくちゃにした悪者ではある。情けなどかける対象ではないと、彼女は言いたいのだろう。


「ま、まあ。ネーハちゃんはどうして病室に?」

「式神の動向を探っていたんだ」

「ああ、あの童子式神っていう」

 星守の式神である──名前付きの式神。童子式神。

「彼は何故か主となる人間の護衛を放棄している。今、どこにいるかも分からないんだ」

「えっ?な、なんでだろ?」 

「ああ、怪しい動きをしている。普通の式神ではありえない、奇妙な…」


 ハッと辰美の後ろを見るとネーハは硬い顔になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます。

こちらもポチッとよろしくおねがいします♪


小説家になろう 勝手にランキング


ツギクルバナー


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ