表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/349

越久夜町の偽神話 1

 星守 健速(たけはや)が越久夜町を荒していた悪い魔法使いだと露見し、あれから数週間が経った。事件が解決した町は至って平和である。

 悪い魔法使いの事件に振り回された辰美も、やっと日常に馴染み始めた。

 大学に通い、親友の見水 衣舞と遊び、たまにアジトである骨董屋へ向かう。──なんと平穏な日々だろう。

 夏が本格的になり始め、夏日が普通になった。日差しのくっきりとした路地が眩い。蝉時雨の中、辰美と衣舞(いま)は今日も骨董屋を訪れた。理由はない。ただ店主である緑と他愛もない話をするためにやってきている。


 冷房の効いた店で二人は一息付きながら、アイスを食べている。暑くて通学がきつくなったと愚痴をこぼしている衣舞を横目にソーダ味のシャーベットを頬張っていた。

「あのさー、知ってる?」

「何?」

 衣舞が緑が用意してくれた麦茶を片手に言う。

「星守の人、隣町の大学病院に入院してるんだって。町中で噂になってるよ」

「ああ…そっか。あれじゃあねえ」辰美の住んでいるボロアパートの大家さんもその話題で住人と立ち話していたのを知っている。

 田舎という小さい社会で星守家の人が大きな病院に入院したのは衝撃的だったみたいだ。


「なんか夢見てたみたいだよね。魔法とか、結界とか……今考えると不思議」

「確かに〜」あれから犬人間や人ならざる者は接触してこない。まるで嘘だったかのようだ。

「何を話してるんですか」

 緑が台所からやってくる。皿にはスイカが乗せられていた。

「あっ!スイカだ!やった!」衣舞が目を輝かせスイカに釘付けになった。


 二人がスイカについて話しているのを眺めながら、辰美はぼんやりと屋上での出来事を思い出す。助けてやれなかった。もし、あの時手を離していなければ──何か変わっただろうか?

 彼が悪事をしたのには変わりはない。ただもう少し平和的解決や成敗が出来たのではないか、と。

(お見舞いくらいは許されるかな…)

 ここから離れた隣町─蛭間野町(ひるまのまち)に辰美が通っている大学がある。用事があるフリをして秘密でお見舞いにいけないだろうか?


(よし、明日病院に行ってみよう) 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます。

こちらもポチッとよろしくおねがいします♪


小説家になろう 勝手にランキング


ツギクルバナー


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ