悪い魔法使いと越久夜町 26
そう答えた時だった。
空が奇怪に薄暗く輝いたと思えば、真っ暗闇がポッカリと開き始め黒い空間が現れ始めた。虫食いのように現れたそれから不気味な軋む音が響き渡る。
地鳴りのような怪音に電線が揺れ、仰天した鳥が飛びだっていく。
「な、なんスか?!何が起こってるんスか?!」
童子式神が空を見上げて狼狽している。
「おやおやぁ、時空が壊れ始めたようだ。」
今までの様相と異なり、リネンがどす黒い笑みを浮かべた。
「リネンさん…?」
「何をしたの!」
次の瞬間、グイッと首を掴まれて辰美は呻く。テレポートしたかの如く出現した春木が、眼前で黄緑色の双眸をギラギラと燃えさせていた。
(かみさま……?)
苦しみに喘ぎながら、辰美は確信する。狸や狐たち、そして有屋 鳥子──彼女たちは皆、黄緑色の瞳をしていた。
「天道さん、落ち着いてください。なぜ私に問い詰めないのですか?」
リネンの横槍に彼女は手の力をわずかに抜いた。
「貴方は誰?知らないし、見た事もない。…辰美さん、貴方がやった訳ではないのね?」
「彼女は先程加わっただけです。私というか、私たちがやりました。」
「……そう。時空を不安定にするのはルールに反しているわ。」
「ゲホッ」地面に手を付き、酸欠で苦しくなった肺が苦しい。辰美を見下ろした春木は、先程よりは冷静に言い放った。
「エラーが起きてしまったみたいね。負荷がかかりすぎた。」
「負荷って」
「貴方たちが起こした予想外の行為が、越久夜町を壊そうとしているのよ。…そこの式神も。」
何も出来ず唖然としている童子式神を睨みつけると、カツカツとヒールを響かせ歩み寄った。
「あっしは何もっ!」
再び間があくと思いますが、必ず「悪い魔法使いと越久夜町」を完結させたいです。
がんばります!