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開闢のミーディアム ~人ならざる者が見える辰美の視点~  作者: 犬冠 雲映子
未確認思惑《パラレルワールド分岐点》
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未確認思惑「呼び出し」

久しぶりに投稿です。


 ただし内容は書いていない。集合時刻と場所が指定されているだけ。

 もちろんそれはうって変わった出来事じゃあない―神経質なバディーなら怒りを買うだろうが幸いにもズボラ組である。


 嫌な夢を見た気がした。取り留めない過去の記憶が、夢となって嫌味を言ってきた気がした。

 麗羅は思い出そうとはせず、なかった事にした。


 枕元にストックしてあった菓子パンの袋を雑に開封し、無理やり胃に流し込む。味覚のない寝起きのパンはただの固形物だ。ぼんやりと咀嚼(そしゃく)していると騒がしいパトカーのサイレンが鼓膜(こまく)をつついた。

 外で何か騒がしい事件が起きているのだろうか?

 カプセルホテルは良くも悪くも利便性が命なのでくつろぐには少し足りない。見知らぬ人が未だいびきをかいて惰眠を貪っている。素性も知れないしヒトであるのかも怪しい。ココはそういうトコロなのだ。


「いってらっしゃい。麗羅(らいら)ちゃん。」


 妖獣人がにこやかにフロントから見送ってくれる。彼女はくたびれたカプセルホテルのフロントマンに似つかわしくない程の良人だ。


「あ、おじちゃん。おはよ!」

 こじんまりとしたロビーで老人が新聞を読んでいる。いつもよくしてくれる優しいおじいさんである。


「やあ今日も寝坊助だねえ、ライラちゃん。」彼は指を舐め新聞をめくる。ほがらかな日常を感じさせるその仕草を麗羅は気に入っていた。新聞の一面は平常通りであり、どこかの政治家がなんやら、学校で自殺が起きただの、暴動事件があっただの。ネガティブな情報で溢れているのだ。


 挨拶をし外に出る。もう世間は昼になっていた。

 生憎の晴天に顔をしかめ彼女はアスファルトを踏みしめる。

 最近の気象はアテにならず、例にかなってスコールの爪痕がそこら中に残されていた。この国が随分前に亜熱帯地域に属したとき、人々は不安ばかり漏らしていたけれど。そんなことをもう嘆く人はいないのである。


 アスファルト舗装のなされた地面は昨晩の雨を吸収しきっていない。麗羅は水たまりを避けながら歩道を歩く。だだっ広い車道は歩行者天国として開放されていた。


 今日は祝日だった。平日なのにおかしいと首を傾げている矢先、騒がしくなった。人々が声を張り上げ何かを見守っている。お祭り?

 パレードが町を回旋するなんていつぶりだろう?

 麗羅は楽しくなって鼻歌を奏でた。CMの、ワンフレーズだけの。


 大通りを抜け目的地であるモールを仰ぐ。なにやらここも人だかりができている。入場制限?そんなに過熱したイベントが開かれているのか。


 すいすいと人混みを縫い、仕事相手である獣人・竹虎(たけとら)の元へ向かう。


 バスで移動したほうが早いけれど節約には徒歩が最適である。健康にもよろしい。もとより交通規制がはられているらしく、渋滞していた。どちみち歩いた方がよさそうだ。


 都市部から少し外れたチープな雰囲気は相も変わらず昭和のまま時間が停止していた。野良猫のように路地を縫って、目的地へ辿り着く。いつもより人気のない変哲のないスーパーマーケットである。


「ひっさ、タケやーん。」


 やぁさんのようないでたちのいかつい男がフードコートでそばをすすっていた。集合場所がショッピングモールなのはこの男の都合だろう。


「待ってたらハラが減っちまったゼ。へへっ。」

「私もアイス食べよ~。」

 アイスクリーム屋は無人だった。ひどい有様だ。正午だからってアイスを休業にしなくたっていいじゃないか。

 麗羅はアイスをやめ隣のラーメン屋のアイスにする。


「いらっしゃい。」

 妖獣人が出てきてごまをする。


「チョコレートアイスひとつ。ねぇ、今日はお祭りかなニカ?」

「へい、きっとお祭りでしょうね。人たちが集団で動くもんですから。」

「やっぱり。」


 広告もなしに催し物なんて世も末である。


 妖獣人もこれには首をかしげているのであるし、伝統的なお祭りではなく何かのフェスティバルなのかもしれない。どちらにしろ今の麗羅には関係のない行事であった。


「パレードやってるなんてさ、景気あがったりだねっ♪」

 人だかりを思い出し麗羅は上機嫌になる。なんだって楽しいほうがいいに決まってる。


「パレード?ンなモンやってたっけなぁ?」

「うんっ、凱旋(がいせん)パレードかなっ?」

 目じりを下げ浮き立っている麗羅を彼は複雑そうな趣で眺めた。


「アンタってのは人生得してるよなァ。」

「え?なんで?」

「イイよ。あんたはココがやられちゃってるからなあ。」コメカミに指を当て彼は意地悪く笑ってみせる。

「え〜?だから何が?」

 答えてはくれず、とりあえずアイスクリームを貰う。席に座ると仕事の要件に移ろうと頭を切りかえた。 


「で。今日はなんの仕事?UMAの運送屋?それとも駆除?」


 すると竹虎は全部首を横に振り、食べ終わったそばのトレーを横によけた。

未確認(ゆーま)生命物体愛護団の団長サマだトヨ。」

「げっ。トリネかあ。」


 お叱りの呼び出しに麗羅がとんずらしないために内容を伏せたのだろう。とはいえいつも通り。内容確認なんて意味を為したことがないのだから。


「逃げんナヨ。怒られるはゴメンだぜェ。あんたが電話番号変えたせいで鬼電食らうのはこのオレなんだ。」

「げえ、相変わらずヤバい性格してるや。アタシ何もしてないよ?なにを怒られるのかな?」


 未確認生命物体愛護団の団長サマと麗羅はお知り合いである。経緯はたわいもないもので腐れ縁というやつであった。


「それは行きに教えてあげるカラよ。」

 早くアイス食っちまえよ、と妖獣人はこちらを急かしてきた。

嵐の前触れの穏やかなどうでもいい感じが漂っていればいいな〜って思ってます。

読んでくださりありがとうございます。

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