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オッサンが一人・・・!  作者: 顔面要塞
オッサンの宇宙戦争
8/25

遭遇

ブックマークのお二方。本当に申し訳ありませんです。この話を持って第一章は終了です。話を大きくしてしまいチョット爆発しました。

 次話より自分が書きたかった物語になってゆく予定です。また遅くなるかもしれませんが、宜しくお願い致します。

 貴方はラーメンと名の付いた食べ物を知っているだろうか?


 いやいや、何を今さら尋ねるんだい?知っていて食べたことがあるから、ラーメン日記などと書き記しているアンタのブログを覗きに来たのじゃないか?


 そう誰だってこの書き始めを見ればそう思うだろう。書き記している私だって、こんな文章を見ればそう思うだろう。

 では、何故今さらこんなことを書き記しているのだろう?こう、疑問が頭の片隅に浮かぶかもしれない。


 いや、そんな前置きはいいから今回のラーメンの紹介を早くしてくれ!新しいラーメンの味が知りたいんだ。と・・・・。本題はラーメン日記なのだから。


 以前の私だったら大多数の読者の皆さんと同じ感想を抱いただろう。このラーメン日記を始めるにあたり、それこそ何千杯のラーメンを食してきたものとして「新しい発見」の連続の日々、「衝撃の味」、「未知の食感」、「食欲をくすぐる匂い」、「衝動を抑えきれない光景」・・・などなど・・・。


 一杯のラーメンを愛するものとして、自らが味わってきた事を纏めるためだけに始めたこのブログ。初めはラーメンに対する自分なりのこだわりと思いを書き記すだけの物だったが、アクセスが伸び読者の皆様から多種多様な意見や、感想をいただき。

 ラーメンを評価するブログの中でもそれなりの評価をいただいてきた「ラーメン日記」などと表記してラーメンの「味」を評価する慢心を・・・・いや、傲慢さに染まっていたのかもしれない・・。


 ここまで読んできてくれた皆様に敢えて、先ほどの疑問をぶつけたい。いや、自分自身に尋ねたいがために。こんな回りくどい文章を書いているのかもしれない・・・。


 そう、私にとってのラーメンとは一体何なのだろう?


 その答えが見つかったかもしれない。


 「日ノ本ラーメン 虎頭要塞店」「薄口醤油らーめん」


 なんだ、「日ノ本ラーメン」のメインじゃないか。私だって食べたことがある。これを食べていないなんて「モグリ」もいいとこだ。なんで主は今さらこのラーメンを答えなんて言うんだ?


 エルフィリア皇国との戦争が行われていた時には軍関係者や報道機関関係の者しか立ち入ることが出来なかった「虎頭要塞」。

 ラーメンにしか興味のない者でも「虎頭要塞」の名前は知っているだろう。地球連邦とエルフィリア皇国との不幸な遭遇が始まった場所であり、今日ではエルフィリア皇国との協和が始まった場所でもある。


 この虎頭要塞に終戦の三日前に開店したのが「日ノ本ラーメン 虎頭要塞店」今なら誰でもが訪れることが出来る場所になっている。


 日ノ本ラーメンが札幌以外に唯一開店した支店。読者の皆様には札幌の本店に訪れた方も多数いられるであろう有名店。


 あれ?「日ノ本ラーメン」のメインは「濃口醤油チャーシュー麺」だったはずでは?


 そうなのである。虎頭要塞店でメインを張っているのは「薄口醤油らーめん」なのである。


 私が訪れ食した「薄口醤油らーめん」・・・・。なんの変哲もない、本当に昔ながらの「らーめん」


 だが、その昔ながらの「らーめん」から立ち上る湯気に乗って漂ってくる匂い。昔ながらの見た目ながら薄い琥珀色のスープに浮かぶ程よいうねりを持った麺。さらに見ただけでも肉汁と旨みが漂ってきそうなチャーシュー。麺の小島に程よく盛り付けられた香味の葱。ひっそりと存在感を示しながらもアクセントを効かせるナルト・・・・・・。


 そして、晩秋の朝明けか、夕暮れの日の長さの色を感じさせるスープの上に、目を休ませるかの様なワカメ。


 そうだ・・・。何の変哲もないのだ。だが、食欲に訴えてくる見た目、どこか郷愁を引き出される。その懐かしさに引き寄せられるように蓮華にスープを入れ口に運んだ・・・・。


 私に中で何かが壊れ、そして五感すべてが塗り替えられた。だが、破壊的なものでは無い。そう、心の奥底から温まってくる感じなのだ。

 私の中にあった慢心や傲慢、ラーメンに対するこだわり・・・。一切が優しく押し流され、まるで大河に注ぎ込む支流の様に一つにまとまってゆく・・・。


 ああ、私がこだわってきたもの。形作ってきたもの全てが、この一杯によって纏められ心の奥底に落とし込まれてゆく・・・。


 ここまで読まれた方ならわかっていただけるかもしれない。そう、ラーメンとは考えるものでは無く、味わい感ずるものなのだと。


 今回の旅は私にとっての終着駅でもあり、また出発点でもある。まるでエルフィリア皇国と地球連邦における虎頭要塞の関係の様に・・・・・。


 虎頭要塞 日ノ本ラーメン 「薄口醤油らーめん」


 是非味わっていただきたい。貴方の「原点」を思い出させてくれるかもしれない。



                   ラーメン日記 



 「はぁ・・・・・・・」

 美しい黄金色の豪奢な髪を持った人物から漏れ聞こえてくる溜め息。全てを手に入れながら、それだけはまだ手に入れていない物に対すかのような、深い憧憬の感情がこもっている。


 「またブログをお読みになっていらっしゃるのですか?グリネリア大使。」

 高い身長に引き締まった肉体をもった人物が、これまた美しい豪奢な金髪を持った女性に話しかけていた。


 「しょうがないじゃないか・・・!虎頭要塞に居れたのはわずか三日間。講和が結ばれると同時に親善大使として月に行かなければならなかったんだぞ!まさか、「薄口醤油らーめん」が虎頭要塞にしかないなんて思わないじゃないか?ザルハス。」

 豪奢な金髪に包まれた美しい顔立ちの女性は、可愛らしい不満顔で食に対するこだわりをぶつけていた。


 「ええ、講和が決まった後に収容施設に居た貴女が親善大使になるなんて誰も思わなかったですからね。まさかグリネリア大使がエルフィリア皇国皇位継承第五位にいらっしゃる方とは・・・。」

 鍛え抜かれた肉体の上に鎮座している凛々しく整った顔に優しげな微笑みを浮かべながら、親善大使個人護衛官ザルハス・ヴァイツルが相槌を打つ。


 「それは言わないでくれザルハス!皇位継承権といったところで母上は皇主の第三寵姫だったし、私が生まれてからは皇室を出ている。私自身そんな身分だと知ったのは収容施設で連邦の文化に触れている時だったのだから・・・。そんな身分でなければもっと楽しめたはずなのに・・・!」

 ザルハスの返答に頬を膨らませながら子供の様に答えるグリネリア。本人は不満を大いに表に出し、ザルハスを困らせるつもりだったのだが・・・・。

 美しい者が行うと、可愛らしくしか見えないから、何とも言えないところではある。


 「あら?そんなことを言っていますけど、「「ザルハスと別れたくない・・・!」」といって私に相談してきたのは誰だったかしら?しかも、あれだけお互いを必要とした存在なのに・・・?」

 うねりを帯びた腰までの金髪の妙齢の女性が、地球アジア系の顔つきのモデルの様な優男を従えながらグリネリアの会話に飛び込んでくる。


 「ズラヴィー一等教神官・・・・?!」

 かつて、恋人の関係だった人に話しかけられ心拍数が上昇するグリネリア。しかし、恋人を裏切ったとゆう感情ではなく、過去の気恥ずかしい忘れたい思い出を、思い起こさせる事が心拍の上昇に繋がることを感じていた。


 「あの時は、すでにズラヴィー一等教神官もグウェン個人護衛官と付き合っていたではないですか!振られたのは私の方ですが!」

 思い人に聞かれたくない親友同士の秘め事を暴露され、気恥ずかしさをごまかすために声を荒げてしまうグリネリア。


 「ええ、そうでしたわね。でも、しょうがないじゃありませんか。あの戦闘の後、漂流していた私達を助けてくれたのが彼らでしたしね。主転換炉を破壊され、後続の駆逐艦四隻と宙域を漂流するだけしかなかった私達を見つけ、救助し、介抱してくれた・・・。敵である私達を・・・。そうですね、グウェン?」

 自らの傍に影の様に付き従う長身の美男子に話しかけるズラヴィー。


 「はい。ズラヴィー文化親善大使。おっしゃるとうりです。もともと地球連邦は多文化との協和を根底に敷いております。更に言えば。あの宙域における戦闘は、ライネシア皇女を確保した時点で戦略目的は達成されていましたし。あれ以上の戦闘は無意味な事でした。」


 ズラヴィーの疑問に、すらすらと答えるグウェン。だが、その澱みの無い回答に不満を覚えたズラヴィーが憂いに満ちた瞳を向けてくる。


 「あら、いつものようにツレナイお言葉・・・。私を救助し、介抱してくださったあの日の事をお忘れになったのですね・・・?」

 絶妙な角度の上目づかい。更に、止めとばかりに胸の下で両手を合わせ自らの胸を押し上げての「お願い」ポーズ!


 「いや、ズラヴィー殿・・」

 

 「ズラヴィー」

 グウェンが困った顔で丁寧に応対しようとするのを遮って、敬称を省いた名前で呼べとの追い打ちをかけるズラヴィー。


 「ズラヴィー一等教神官・・・。グウェン殿も困っているようですよー・・・。それに衆目の面前でそのような痴態はいかがなものかと・・・?」

 困っているグウェンに対して助け舟を出すグリネリア。しかし、本音は空間に満ち溢れてくるズラヴィーの「好き好き!ラブラブ!」空間が嫌になっただけであったが・・・・。


 「グリネリア。人の恋路を邪魔するものでは無いですよ?あなただって昨夜はザルハス殿と・・・?」

 冷静な返しにグリネリアの弱点を突く攻撃。


 「黄、機き、昨日はザルハスとの打ち合わせがあったからで・・・・。」

 慌てふためくグリネリア。誰がどう見ても狼狽している・・・・。


 「ええ~~?その割にはお肌がテカテカしていて、羨ましいですわ。」

 弱点を自らさらけ出したグリネリアに対して、更に会心の一撃を叩き込む。言外に二人が昨夜ナニを行ったかを指摘する。


 「そそそ・・・そんなに変わってななななないでしょうに・・・・・?!だいたい、ズラヴィー一等教神官もお肌がつやつやじゃないですか!それにその『胸』!いったいどこまで大きくなるんですか!」

 顔を真っ赤にして反論するグリネリア。その態度そのものが昨日ナニがあったのか示してしまっていた。


 「さぁ?グウェンに介抱された時から微熱と、胸の疼きが止まらなくなりまして・・。気が付いたらこのような状態に!」

 以前のズラヴィーでは考えられない様な、前屈みになりながら胸を押し上げるように両腕で挟み込み両手を膝の位置に置く・・・『雌ヒョウ』の様な破壊力抜群のポーズ!

 「これも全ては『交感』のお蔭なのでしょうか?」

 明らかに「優越感」を感じさせるズラヴィーの言葉に、眉間に皺を作るグリネリア。


 そう、「大きい」・・・「形もイイ」・・そして私の上を行ってしまっている・・・・・?!

 

 「感度なら私の方が上です!肌のきめこまやかさでは私が上ですから?!」

 必死に自分の優れた点をあげつらうグリネリア。それに対して更に挑発的なポーズを取りながら言葉を重ねるズラヴィー・・・・




 「いつまで続くんですかね?グウェン伍長?」

 端正な顔に苦笑を浮かべながらグウェンに尋ねるザルハス。


 「この前は一時間程かかっていたなぁ~」

 呑気に答えるグウェン。


 「じゃ、まだ続きそうですね。それにしても、あれほど女性との浮名を流したグウェン伍長が、こうも易々と『撃墜』されるなんて以外でしたね。」

 まじまじとグウェンを見ながら、心底驚いた表情で語りかける。


 「ま、気の迷いとかじゃないのはたしかだねぇ~。ズラヴィーを救助し、介抱を命じられたあたりから『何か』感ずるものがあったんだよね~。電気が走るって。ま、在り来たりな言葉でしか表現できないけどね。」

 ザルハスの言葉から、当時の自分の感情の変化を思い出していた。色々な女性とお付き合いをしてきたが『これは!』と思う出会いが無かった・・。

 それが、ズラヴィーと出会ってから自分の脳内を支配したのは彼女の事ばかり。(当時はまだ両性を維持していたから『彼女』ではないが)

 そして、ズラヴィーもその様に感じていたようで、両種族間の垣根を超えるのには、そんなに時間を必要としなかった。

 ズラヴィーの肉体に顕われた変化は二人をして驚嘆に値するものであった。


 「そうゆうザルハスも、グリネリアのアタックに随分簡単に『沈んだ』よねぇ。」

 からかい含みの気分をのせて、質問をやり返す。


 「ええ、自分でも驚いています。ヒデト伍長・・・いや、今は昇進されて二等軍曹ですね。ライネシア皇女を俘虜にし、その後にヒデト二等軍曹の指揮下でグリネリア達を救助した時から、私の中ではグリネリアは唯一無二の存在になっていました。それこそ、先ほどの『電気が走った』ではありませんが・・・。」

 グウェンのからかいを気にする事無く、自らの心境を語るザルハス。


 「私達以外でも、あの戦闘でエルフィリア皇国人と関わった兵士達は多かれ少なかれ『男女』の関係になっているみたいですねぇ。連邦側の兵士が『男』なら相手は『女』に変わり。逆の場合はエルフィリア皇国人が『男』になる・・・神秘ですねぇ」

 相も変わらずの口調で話し続けるグウェン。人類の変革の事柄なのだが、緊迫感が全く伝わらない。実際問題としてお互いの肉体に訪れる変化に戸惑う所なのだが、パートナーを得た両国の人々は、それが人類普遍の事柄かのように全く受け入れていた。

 両国の人類学・医学・宗教にかかわる者たちを困惑させつつ、両国国民間の『協和』と『交感』はますます拡大していた。

 (種族間の寿命は、変化した者が相手の寿命に沿うようになっていた。これまた、まだ研究段階で仕組みが分かっていなかった。エルフィ人・オークリ人・ゴブリート人全てに共通していた。また、この『交感』によってエルフィリア皇国における人種間階級は事実上崩壊を迎えている)


 「ライネシア皇女強奪作戦」の成功によって両国間での休戦、そして講和が結ばれた。


 作戦自体は突入した『第七空間降下兵師団』がライネシア皇女を俘虜にした事で成功を見た。だが、これほどまでに簡単に休戦・講和の流れに行くには理由が存在した。


 長引く両国間の争いによって軍備・国力を衰退させていたエルフィリア皇国。広大な領域を支配・維持するためには地球連邦だけに構ってはいられなかった。

 自らの価値観と違う考えを持つ者たちは地球連邦だけではなかった。他の『強国』と呼んでいい国家との国境紛争が少なからずあり、そちらを抑えるためにも皇国内での穏健派が、主戦派であるライネシア皇女の発言力を低下させ、且つ地球連邦と講和条約を結び皇国内の安定を取り戻したがっていた。


 しかし、皇国内におけるライネシア皇女のカリスマは以前強大であった。であるならば、『軍神』と崇められている皇女を引き落とす必要があった。その為には『敗戦』と『俘虜』が絶対条件であった。


 事ここに居たり地球連邦にも動きがあることが分かった。エルフィリア皇国にとっては宇宙に進出を始めたばかりの新興国家。勢力規模にしてもエルフィリア皇国にかなうべくもない存在だったが、計算だけでは導き出せない強さを持っていた。

 事実、ライネシア皇女が担当する地球連邦方面は、序盤こそ多数の得点を挙げていたが、終盤に入り皇国絶対防衛圏にまでの侵入を許すほどまでになっていた。

 だが、勢力規模の小ささによるものなのか、はたまた彼らの信条とする『協和思想』によるものなのか。何度も使者を寄越し『講和』『協商』を願い出ていた。


 エルフィリア皇国の穏健派はこの案に光を見出していた。地球連邦と協力すれば皇国内の安定を取り戻せ、且つ妙に粘り強く戦う地球連邦を味方に引き入れることが出来る。ライネシア皇女の発言力を低下させることが出来れば自分たちの思い描く皇国運営が出来る。


 何のこともない。強大な皇国に巣食う『寄生虫』の考えに他ならない。だが、『寄生虫』は宿主が壮健で強大でなければならない。『安定』と『繁栄』があってこそ初めて『美味しい』思いが出来る事を理解していた。

 要するに、自分たちの『利益』に悪影響を及ぼしているライネシア皇女を、地球連邦と一緒になって表舞台の主役から『観客』になっていただく謀略を展開したのだ。


 そして、この案件をエルフィリア皇国皇主ルファミリアに極秘に伝えたのである。


 ルファミリアにしても、ライネシア皇女の暴走ぶりが目に付き始めていた。自らの子であり皇位継承の件もあるから傷ついては困る。だが、この計画ならばライネシア皇女を傷つけずに『頭』を冷やす効果が望める。戦闘によって亡くなる者たちが少なからず存在するだろうが、ライネシア皇女が成長するための犠牲と考えれば如何程でもない。


 ライネシア皇女が俘虜とされた時点で戦闘を中止し、即座に両国間で休戦・講和となるように両国間で極秘裏に進められた計画が発動した。


 両国の軍人たちは、まさに国家の繁栄のために自らの命を差し出さなければならなかったのである。


 この戦闘における両国間の損害人数。


 地球連邦      戦死・行方不明 5743名


 エルフィリア皇国  戦死・行方不明  213名


 圧倒的に地球連邦の損害が多い。戦後の講和の為にも、未来の同盟国には世論を沸騰させるほどの損害を与えてはならないためであった。

 数字だけを見るならば、どちらが勝ったか分からない数字だった。しかしながら、この損害によって両国間の『協商』『文化交流』『未踏星系の星図』『科学交流』などを手にしたのである。


 まぁ、死んでいった者たちに対しては、かなりの額の戦死見舞金が給付されていた。それでも、未来の可能性を奪われた者にしてみれば、なんの慰めにもならないが。



 自分たちのパートナーの言い争いは、まだまだ続きそうだった。これだけ言い争いをしているのに、二人の顔には何処か満ち足りた笑みが浮かんでいた。

 その二人の様子をグウェンとザルハスは穏やかな笑みを浮かべながら見つめていた。


 「そういえば、ヒデト二等軍曹はどうなさっているんでしょうね?」

 二人の様子を眺めつつグウェンに話しかける。


 「あの作戦の後、各師団から抽出された精鋭で構成された『対ゴリウス共和国遠征派遣軍』に編入され。何回か軌道降下戦で戦果を挙げた後、エルフィリア皇国から譲り受けた星系の、調査・開発を担当する地球連邦本部直轄の深部探査隊に配属されたみたいだよ~。この前のメールでそう書いてあったよ。」

 満足そうな笑みを貼りつかせたまま、答えるグウェン。以前から交友のあるものが見たら驚倒するレベルでの『愛情』を浮かべた笑み。

 ヒデトさんが見ていたら何てゆうかな?この俺が『愛情』を覚えるなんて・・・。驚くだろうか?いや、あの人はちょっとした人の悪い笑みを見せながら『お?遂に陥落ですかな?グウェン上等兵殿w』などと言って祝福してくれるだろう。


 思えば同じ班に配属された時は、おせっかいなハゲたオッサンだとしか思っていなかったが・・・。戦闘を繰り返すたびに信頼が深まっていったなぁ。

 心に傷を負った子供の様に、見境もなく女性に手を出していた荒んだ時期。其の都度、食事の席で対して強くもない酒を飲みながら不平や不満、愚痴を聞いてくれた。頷きながらも、ちょっと微妙な表現で諌めてくれたっけ。

 そんな心に傷を負った者たちが配属される班になっていったっけ。


 ユーリーは自分の才能を生かすために漫画家の道を歩もうと思っていたけど、公共交通機関で痴漢として扱われ、夢を絶たれて軍に入って来ていた。ウチの班に配属された時は誰にも心を開かない無口な奴になっていたっけ。

 それで、配属祝いでヒデトさんと一緒に無理やり官舎に侵入し。そこで彼がまだ夢をあきらめていないことを知ったんだ。

 ヒデトさんとユーリーは殴り合いの喧嘩をして、『自分で自分にピリオドを打つな!』と青臭いオッサンの言いように切れたユーリーが『じゃあ証明してやる!』と、これまた単純に漫画をWEB上に描き始めたのが始まりだっけ。

(その後官舎に忍び込んだことが担当憲兵にバレて、ヒデトさんが暴れて独房にぶち込まれたんだよな。)


 我が班の四人目ジョーに至っては、私ですら目を見張るほどの美人でしたね。班に配属された時の私を含めた皆の慌てっぷりが凄かった。

 地球連邦では珍しい『両性具有者』その生い立ちからいろいろな目にあってきたんだろう。軍に入らないで放っておいたら何をしでかすか分からない目つきだった。

 (教育隊で助教を担当しているヒデトさんの同期の話だと、もっとひどい目をしていたみたいだけど)


 四人揃って初めての軌道要塞攻略戦で少し投げやりだったジョーが、単身飛び出し。班全体を危地に陥れた時は、逆にユーリーと私が殺意を覚えたぐらいだったが、負傷したジョーのスーツの内部応急装置が故障したために、ヒデトさんがスーツを脱がし、敵と味方の射線が交錯する中で説教していたっけ。

 ジョーの美しい鍛え抜かれた肢体が目に飛び込んできて、ヒデトさんが前屈みになり。治療しながら説教している姿は、今でも班・・いや、師団の笑い話になってる。

 

 ジョーも毒気を抜かれたのか、それ以降は徐々に打ち解けてきてくれた。ユーリーと歴史と漫画でよく話し合うようになった。

 あれ以来、ヒデトさんにも周りにも分かるくらい『好意』を持ち始めているみたいだ。(ま、ヒデトさんは『あんな綺麗な子が・・・?在り得ないよ。』と全く気付いてないが。)


 うちの班の共通点はヒデトさんに『人生』を救ってもらった点だな。勿論、戦場では幾度となく『生命』を助けてもらっていたが、あの人の昇進が遅い理由も皆分かっていた。

 班や分隊、小隊の連中がトラブルを起こす前に駆けつけもめ事を片付ける。ま、だいたいその時に憲兵と『仲良く』して独房にぶち込まれているのだけれども・・。


 ザルハスに答えながら記憶の彼方の思い出にたどり着いているグウェン。



 グウェンの答えを聞きながら、深い思いに沈んでゆく横顔を見ながらチョット髪の薄いオッサンの事を思い出すザルハスであった。

 同じ小隊に配属されライネシア皇女を俘虜にした時の事を思い出す。


 敵艦に突入する段階になって防御砲火に掴まり、突入軌道からズレてしまい。ままよ!と突入した先に、お姫様ご本人がおらっしゃるとは・・・・。


 あまりの事態に、お互いが固まっている時に流れ弾が揚陸艇に命中し、破片が飛び散る中皇女を押し倒し爆発と破片から身を挺して守っていた。

 まぁ、ここまでなら敵味方から称賛される行動なのだが。現状の場所が危険と判断。即座に皇女と御付の人々を『不定形救助救命装置』通称『スライム』に放り込み。負傷した小隊長に変わり小隊の指揮を引き継ぎ、『スライム』を護衛(まぁ・・。小隊で引きずりながら・・。)しながら師団突入本部にお運び差し上げたのだけども・・・・。


 (この『スライム』中に入った人物の外傷を直すために、簡単な衣服を溶かして治療に当たるため、一部の人間からは『ヘンタイ』と呼ばれている代物である。しかしながら、高温・高圧・低温・耐火・耐衝撃などの機能を備え簡易な治療も受けれるとあって、前線の兵士たちには、すこぶる好評であった。)


 だが、流石に一国の皇女と御付の者たち全てを全裸にして。衆目の中を本部に持ってゆく手法が問題視され、査問にかけるかどうかとなった。

 しかし、作戦行動中の皇女に関する命令は簡潔明瞭。『身体の安全を優先し、全力で保護せよ』であったために、作戦参加の高級将官全てが査問には反対を表明。


 臨時ヒデト小隊は、両陣営の損傷艦艇乗組員の救助を命じられた。


 それによって、ザルハスもグウェンも運命の人と巡り合うことが出来たのである。


 でも、ヒデトさんは講和時にエルフィリア皇国の『非公式』の要請によって隊を離れ、エルフィリア皇国と長年紛争を行っている『対ゴリウス共和国遠征派遣軍』に編入されるのである。一種の『報復処置』なのかもしれない。

 もう一方の当事者であるライネシア皇女は自分の全裸になんら価値を見出していなかったが、御付の者たちの要請もあり。さらに『気を使った』地球連邦の官僚が、ヒデトさんの人事に口を挟んだのだ。


 自分の運命を『良い』方向に持って行ってくれたヒデトさん。確かに、特撮ヒーローの様なスマートさやカッコよさは無いけれど。僕の中では『ヒーロー』なんだ。そう感じながらグウェンと一緒に、愛する者たちの喧騒を止めようと足を踏み出すのであった。

 

 


 

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