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オッサンが一人・・・!  作者: 顔面要塞
第二章 オッサンの異世界
12/25

事故

スイマセン、やっとこさ『異世界』に逝っちゃいます・・・wwそれと・・驚いたことにブックマークが・・・『4人目』って・・・・素晴らしぃいいいいいぃぃい!!ありがとうございます!ありがとうございます!!モチベ急速に上昇中!!!待ってろよ『異世界』待ってろよ・・ps4!!仕事頑張って、飲み会をゼロにするぜ!!では、『事故』宜しくお願い致します・・・・。

 惑星地球化技術によって、日々朱茶けた空が徐々に青みを帯びてくるように見えるオメガ04。エルフィリア皇国から譲渡される以前から、エルフィリア皇国によって生存環境を整える整備が為されていたのだが。

 地球連邦がこの星系に進出してからは、急速に開発が進んでいた。


 もともと、母星系を離れ宇宙に進出し、生存圏を拡大することを目的とした資源開発や環境適応技術に優れている地球連邦。かたや、自らの教義の範囲を拡大させる事が目的のエルフィリア皇国・・。

 講和を結ぶにあたってエルフィリア皇国から戦時賠償として譲渡されたカリオン方面星系群。お互いの目的の違いが為せるものなのか、エルフィリア皇国にとっては教義を拡大する生命体が存在しないため必然的に開発の優先度が下がっていた。

 逆に、人類の生存範囲を拡大することに目的を置く地球連邦にとっては貴重な宝石箱だった。未開発の星系群・・・それだけで価値は鰻上りだった。未発見の鉱物・植物・生物・・それら全てが、人類をさらなる高みに到達させる貴重で重要なモノになり得た。

だが、開発・生産・研究が本業でないヒデトにとっては。物珍しくはあるが、心躍るものでは無かった・・。


 

 変調現象から現れた『異世界』の『魔族』ベルミナ・フォン・ハイデルスン。こちらの世界の常識が通じない存在と思われていたが、ヒデト二等軍曹との接触では『友好醸成』が成功し。

 お互いの世界の情報を交換する毎日が続いていた。


 「うん。我が世界での『魔術』理論に近い物があるな・・。確かに自分の存在する世界を、直線だとするならば、並行に多数の世界が存在することもまた、頷ける・・・。我らが行使する『魔術』は世界に存在する『魔力』・・・『マナ』を集め、それを使って『上位存在』に働きかけ、『下位世界』である我々の世界に対して影響力を行使してもらう事なんだ。そして、それらを効率的に運用するための『論理』として『魔法』があり、『魔術』を効率的に使用するために『術式』としての『呪文』などがある。形の違いこそあれ大体がその理論に沿っている・・。」


 ヒデトが苦手とする、『魔術』についての話が今日の話題だった。ベルミナが『異世界』より来訪し、『魔力』を『魔術』にそって自分に使用し肉体の損傷を回復した場面を見ているのだが・・・。どうにも納得が出来ない・・・。

 ベルミナの『魔法』に関する講義・・・この『魔法』の講義に関しては、どうしても気分が乗らなかった・・・。


 「・・・・・の様にそれぞれの魔法系統によって、必要とされる『マナ』の質が違ってくる。例えば最も一般に普及している『回復魔法』。傷を治す、毒を取り除く病魔を払うなど生活一般に於いて最も需要がある『魔法』だが。この『魔法』に必要な『マナ』の量は治したい症状やケガの程度によって違い、単純な『術式』を用いた簡易な物から、使用する者の『生命』を『上位存在』に捧げる方法まである。

 この場合の『マナ』の『質』は『純粋』な願いが重要になってくる。ま、その願いも信仰する『上位存在』によっても違いがあるがな・・・。」

 ベルミナの『魔法』講義は続く・・・・・・。


 ベルミナの講義の解釈を自分なりにしてみるヒデト。

 要するに、この世界の物理法則や生命・精神などを、『高次元』の『存在』に『魔法』によって渡りをつけ。「これこれこの様に干渉していただけますか?」とお願いする事なのだろう。

 より、強力に『現世界』に干渉してもらうには、さらに『上の』『存在に』頼み込む。この際の頼み込み方の違いが、様々な『魔法系統』に分別され。行使する『呪文』も違い、捧げる『供物』も違ってくる。


 簡単な話、自分たちは『現世界』とゆう『箱庭』に存在する『キャラクター』であり。『上位存在』は、『箱庭』を見ながら『キャラクター』達の願いを聞き入れて、『箱庭』の世界に影響力を行使する。ゲームでゆうと『チート』や『MOD』の様な物か・・・。

 『勇者』や、『真龍』。ベルミナの様な『魔族』は『上位存在』によってボーナスを貰った『キャラクター』とゆう訳だ・・。

 なんとも愉快な話じゃないか・・?自分自身で人生を切り開いてきたつもりが、『上位存在』に干渉された結果かもしれないとは・・・・。はは・・・なんと面白き世界・・・。

 馬鹿野郎。そんな事が受け入れられるか・・・。『高位』の存在によって操られるだけなど・・・認めてたまるか・・・!

 そんな事が出来るならば直接的に『永遠の平和』なんぞを作り出してみやがれ・・・!畜生・・!



 ヒデトの顔に暗い影が浮かぶのを見逃さなかったベルミナ。『魔法』講義を受けた者なら最初に考え付くであろう結論が、ヒデトの脳内で暴れまわっている事を見抜いていた。

 なにも、考えを読んだ訳では無い。自らの『力』で生き抜いてきた『誇り』を持つモノほど、赦されない事実であり。自分もまた、そうであったから・・・・。


 「その考えは少し違うな・・・ヒデト殿。確かに『上位存在』は恐るべき『力』を持っているが、『現世界』に『干渉』するには手続きが必要なんだ。『現世界』のモノに『力』を貸し与える事しか出来ない。それに、『現世界』に存在するモノ全てを『上位存在』が作り出したわけではないんだ・・・。

 そして、この『異世界』では『上位存在』の『力』がとても弱くなってしまう・・・・。そうだな・・『上位存在』が存在する世界を『頂点』とした円錐・・その体積部分が『上位存在』の行使出来る『力』の範囲なんだ。

 だから、ヒデト殿の歩んできた人生・・私が歩んできた人生・・それぞれ『上位存在』が作り出したものでは無いんだ・・・。まぁ、俗に『運』と解釈される要素は解明されていないがな・・・ww」


 少し困った表情で、諭す様に話すベルミナ・・・・。普段の彼女から想像もつかない程の、美しくも優しい微笑みを浮かべていた。


 ベルミナが向けてくれる『優しい』『配慮』に、自らの考えを恥じ入るヒデト。

 そうだ・・・・。俺が『知覚』出来ないモノに惑わされるとは・・・。こんな状態で『戦場』の戻ったらいいマトだ・・・。

 自分だけでなく、他の者まで危険に晒してしまう・・・。まったく・・・・ヒデト!!気合が足りんぞ!どうした・・?あまりにも『暇』な為、自分を見失ってしまったか・・?

 畜生!!ここまで腐って来るとは・・・『平和』とは侮れんな・・・。


 自分自身でアホな考えに染まった癖に、『平和』のせいにするヒデト・・・。恥ずかしさを隠すためのモノとしては、あまりにも幼稚な考えだった・・・。


 「いや、タメになるお話・・・ありがたくあります。ベルミナ殿・・・。どうです・・?お互いの理解も深まりましたし・・・ここは一つ、ベルミナ殿の『興味』を満たすもので休憩に致しませんか・・・?」

 無理矢理に話題を方向転換させるために、ベルミナの『興味』を満たす話に持ってゆこうとする。そして、二人が向かい合って座っているテーブルの上にホロジェクターに映し出されたデザートメニューが、様々な彩を持って映し出される・・・。


 「うん・・・・?!ヒデト度・・?『めにゅう』に今まで見たことが無い物が・・・・多数見受けられるのだが・・・・?」

 そう言ってメニュー表を食い入る様に・・・それこそ、『目からビーム!』が出るような勢いで、熱い眼差しを送るベルミナ・・・・。


 「・・・・・?あれ・・?こんなメニュ―あったっけ・・?なんで、和菓子関係まで入っているんだ・・?こんなの需給品目の中にあったかな・・・?」

 いつものベルミナの反応を見て、和んでいたのだが。西洋デザートが中心の内容に変化が見受けられた。季節の色とりどりの和菓子・ぜんざい・お汁粉・あんみつ・お団子・大福・どら焼き・鯛やき・信玄餅・もなか・などなど・・・・。

 日本全国の銘菓などを網羅していた・・・・・。だが、中には『要、取り寄せ』などと注意書きが書いてあるものもあった・・・。


 そう、疑問に感じ首を傾げるヒデト・・・・・・。


 「ふっふっふ・・・・・・。驚きましたかヒデトさん・・。そこに表示された数々の至高の品々を・・。私が、この世に生まれ出でてから味わった物から『厳選』した、最高のメニューです・・・。」


 聞き覚えのある・・・・凛とした美しい声音が、二人しかいないはずの給食区画に響き渡る・・・・。


 そして、二人とも声に聞き覚えがあった・・・・。同時に声の響く方向に顔を向け、対象の存在を同時に知覚し、声を出す・・・!

「「ミヨナ・・?!」」

「「師匠・・・?!」」


 二人同時に、その存在の名称を叫ぶのだが・・・・呼び名がそれぞれ違っている・・・・。


 ここに居る筈のない存在が給食区画の入り口から、ある種のオーラを纏いながら二人の居るスペースに向けて近づいて来る・・・。


 「ミヨナ・・・・・?!えっ・・・何でここに・・?それに『師匠』って・・・?」

 あまりの状況に、脳内で情報が飛び交い過ぎて。シナプスとかニューロンとかが仕事を放り出しているヒデト・・・。当然、肉体も状況についていけて無い・・。


 「ヒデトさん・・・。説明は後程させていただきます・・・。今は・・!この『至高』のメニューをベルミナと共に味わうのが先です・・・・。」

 なんか・・・・。どこぞの世紀末覇者や、金色の髪を逆立てている異星人と・・同じような気迫を発しながらベルミナに迫るミヨナ・・・。そんでもって、なんで?呼び捨て・・?


 「さぁ・・!不詳の弟子よ・・!選び、食すがイイぃいいいいぃいいいぃー!!」

 何処の歌舞伎役者・・・?と、思わずにはいられない程の迫力と、鬼気迫る声量で叫ぶミヨナ・・・・あの・・・?本当にミヨナ・・・?


 ミヨナの凄まじいオーラに劣らない程の、裂ぱくの気合を込めて『至高』の『めにゅう』に視線を走らせる・・・・・・。

 『めにゅう』に己のありったけの熱情を込めて・・・・自らの『一品』を選び出す・・・。今まで得た知識・経験・味覚・・・全てを掛けて『一品』を選び出す・・・。


 「これです・・・・・。これが・・・ベルミナ・フォン・ハイデルスンが選び出した『一品』です。」

 デザート、和菓子などが輝きながら自らの存在を主張している中で選び出した一品とは・・・・?


 「そう・・・。『豆大福』です・・・。」

 普段なら、給食区画の全自動調理器具からタッチしたメニュー表に従って作り出されるのだが。何故か、給前ロボットが運んで来ていた・・・・。


 「成長したわね・・・・。ベルミナ・・・・。そう、この輝くお菓子たちの中で・・『豆大福』を選ぶとは・・・・。いいでしょう・・・。貴方に、和菓子マスターの称号を与えましょう・・・・・!」

 満足げに『弟子』の成長を喜び、『師匠』としての『威厳』を保ちながら『称号』を与えるミヨナ・・。

 

 「ありがとうございます・・!!『師匠』・・・!」

 ミヨナに対して、頭を下げ。感謝の気持ちを表すベルミナ・・・・・。


 「ベルミナ・・・。もう、私は『師匠』では無いわ・・・。これからは、共に『至高』の一品を探り続ける『同志』。お互いに『切磋琢磨』し、高みを目指すのよ・・。あの星のように!いいわね・・・。」

 

 頭を下げていたベルミナの肩を取り、給食区画の天井を二人で見上げながら、熱血スポ根のヒロイン二人組の様に肩を寄せ合い、目を輝かせる二人・・・・・・。


 「え・・・・・?何が、どうなってんの・・・?」

 何処かで見たことがあるシチュエーションに唖然とするヒデト・・・。ミヨナが『タウルス』に来るなんて報告を受けてないし。二人がここまで『信頼関係』を結んでいるとは考えていなかった・・。それに師弟関係まで発展しているなんて・・・・。


 「アハ・・・!依然、ヒデトさんの事で揉めた時に『イロイロ』お話ししまして・・・・。その時に『デザート』の話をしたら・・・その、かなり盛り上がってしまいまして・・。私も、需給品目に和菓子が無いのを不満に思っていた所。ベルミナさんの『要求』としてサクヤ様に伝達したところ、先ほどのメニューが出来上がりました・・。サクヤ様を始めとする生体量子思考回路群の『生体ユニット』は『デザート』に目が無いそうで・・・、すぐに需給品目に追加してくださいましたww」

 ちょっと恥ずかし気な仕草で、ヒデトの疑問に答えるミヨナ。


 だが、何故ここにミヨナが来ているのかが分からなかったのだが。ヒデトの考えを先読みしたかのようにベルミナが答える・・。

 「うん。その件に関しては私が要請した・・。私も『女』である以上、ヒデト殿に相談出来ない事柄が多少なりともあるからな・・・。まぁ、そこでミヨナ殿に相談に乗ってもらっていたのだ・・。まさか、『デザート』の中に『和菓子』なるモノまであるとは・・・ますます、帰るのが惜しくなってくるな・・。」


 「さぁ、ここからは私達『スィーツ女子』の探求が始まりますので・・・。殿方はご遠慮なさってください・・。勿論、カメラによる監視行動も全てシャットアウト致しました・・。録画は出来ませんよ・・?」

 何故か、二人そろって胸を反らし。ヒデトに向かって『外』を指し示す二人・・・。


 『スィーツ女子』の意味が、微妙に違うんじゃないのか?ミヨナに日本の文化を教える為に漫画やアニメを初めに見せたのは間違いだった気がする・・・。

 だが、いくら代謝が良いとはいえ。あの量を二人で・・・?

 「ああ・・・。わかった・・。だが、食べ過ぎると『太る・・・・!!』うおx!!やめろ!なんで二人そろって・・・いてぇ!!ふご・・・!?グァ・・・!・・・・・・・ゴフゥ!!!・・・」


 ここ最近鈍っていたとはいえ・・・生体強化を受けた『空間降下兵』をいともたやすく『制圧』するミヨナとベルミナ・・・・一人は『魔将』・・もう一人は遺伝子レベルで『強化』された『生体ユニット』・・あまりの惨状に、これ以降『太…』は禁止用語に指定された・・・・。




 二人に追い出されたヒデト・・・肉体の損傷がかなり深く、回復ユニットのお世話になっていたが。つい先ほど治療が終了し、いつもの様に『タウルス』司令塔の上で自分の装備を整備していた。


 今回は『索敵・侵入用大型バックパック』に付属して付いている、大型コンパウンドボウの整備をしていた。(勿論。傍らには『100式大型狙撃銃』と『武士』装備も置いてあったが)

 現在用いられている『漂流者』の技術を使用している、このコンパウンドボウ。新素材である超弾性ストリングと、弓の部分に多用された超弾性可変素材。リムとストリングの接合点に超電導モーターのアシストを行う事によって、従来の弓では不可能な貫通力を可能にしていた。

 更に、照準システムも。超小型超電導バッテリーに超電導モーターを接続することによって、大電力を使用した弾道計算器が精密な計算を可能にしていて。直線で800m程度ならば、誤差1cmでターゲットを射抜くことができた。(ただし、弾道計算器を使用した場合。計算機の放熱によって射手の存在が隠蔽出来ないため。存在を秘匿したい状況では使用できず、それなりの修練を必要としていた)


 もともとは、サバイヴァル専用装備で。敵地に於いて通常装備が破損、若しくは紛失した場合に使用されるもので。静粛性・隠密性・取り回しのし易さ・などが気に入られ、空間降下兵の標準サヴァイバル装備として常用されていた。

 また、使用される矢も。矢じりの部分を変更することが可能で、状況によって使い分けが出来る様になっていた。


 回復ユニットのお世話になるなんて、ここ最近全くなかった為。どことなく身体が鈍っているんじゃないかと思ってしまう。

 確かに管理業務ばかりで肉体を『虐め』切れていない事は感じていた。そのせいか、先ほどの出来事も自分の『弱さ』が招いた結果と考えていた。


 「ま、くよくよ考えても仕方がないか・・。久しぶりに『スモウ』でもやりますかな・・・。」


 『スモウ』日本古来から行われている、神事に則った『格闘技』・・・。なのだが、『空間降下兵』の解釈では全く違うものだった。

 本来名称は『極限損傷状態での行軍訓練』。空間降下兵の代名詞でもある『スーツ』機動強化装甲外骨格の身体補助機能に損傷を被った状況を想定し、バックパックや武装を保持したまま。およそ、5kmの移動を行う過酷なものだった。

 『スーツ』本来の重量は凡そ30kg。それにバックパックや、標準武装である13mm強化電磁レールライフル・肩部多用途ミサイルポッド・両腕部収納近接専用チタノタイトブレード。これらが凡そ60kg

 さらに、特殊兵装の『100式大型狙撃銃』に近接格闘特化兵装『武士』を含めると。総重量は120kgにもなってしまう。

 

 いくら、軍用『生体強化』を受けている空間降下兵でも。この重量を保持しての行軍は過酷極まりない物だった。

 この状態では、歩くことさえ困難で。足を地面に擦りつけながらしか進むことが出来なかった。誰が言い出したのか、その姿を見て着いた名前が『スモウ』だった・・・・。


 ヒデトとしては変調現象の状況も確認しなければいけなかったし、中心点の丘までの距離が片道ちょうど2.5kmだった事も手伝って。肉体を『虐める』には適していた。

 

 それに、久方ぶりに『独り』になれる・・。雑念を振り払い、空っぽになって来てみれば。少しは気合が入るだろう・・。

 そう思いながら装備を整え、訓練計画を上申するために頭脳が回転し始めていた・・・。


 


 朱い荒野を、朱茶けた土埃に塗れた鎧を纏った男が歩き続けている。見るからに重量を感じさせる鎧に、大きな箱を背負い。更に右手には大きな銃を持ち。背中の箱の右側には、手に持つ銃に比べ更に大きな銃を装備し、箱の左側には反りをもった刀剣が備わっていた。


 ここまでの大きな物を背負っているにも関わらず、男の歩みは全くぶれることが無かった・・。だが、微かに呼吸の間隔が早まっていた。


 「くそ・・・・。確かに鈍っている・・・。日常の訓練計画も見直さなければ・・。こんな状態を仲間に見られたら笑われる・・・。いや、下手したら隊の中にも入れてもらえんぜ・・・。」

 少し荒くなってきた呼吸の中で、自分自身の不甲斐なさを罵りながらも、男の歩みは止まることが無かった。


 「どうですか・・?ヒデトさん。『スモウ』。上手く行ってますか・・・?」

 鈴の音色の様な美しい声質を持った声が通信機から響いて来る。


 「ミヨナ・・・・。訓練中の通信は厳禁な筈ですけど・・・・?」

 自らの肉体が、徐々に悲鳴を上げて来ているのを抑え込みながら。規定を無視したミヨナの通信に嘆息しながら、若干非難じみた答えを返す・・鎧の男・・ヒデト二等軍曹。


 「ええ、規定ではそうなっていますが。『生体ユニットのパートナーの任に着いた者は、いついかなる場合に於いても、生体ユニットと相互連絡を欠かしてはならない。』・・・生体量子思考回路群マニュアル、一条の項目一に規定されてますからww」

 前顔に落ちる、癖のある美しい銀髪を優雅な手つきではらいながら。勝ち誇った顔が、ヘルメットディスプレイの通信項目欄に映し出される・・。さらに、先ほどのマニュアルの規定項目が次々に映し出される・・。

 『スモウ』訓練中の肉体と頭脳に与えるには、十分すぎるほどのダメージだった・・。


 「で・・・・・?なんで・・?『イオージマ』に居るの・・・?」

 昨日まで、『タウルス』の給食区画でベルミナと散々『デザート』と『和菓子』を食い尽くしていたミヨナ。何故かディスプレイに表示されている通信先が『イオージマ』の艦橋になっていた。


 「ええ、ベルミナさんに合わせる服が制服しかないのが女性陣と、一部の男性陣に不評でして・・。ならば、『イオージマ』で作ってしまえと!と、ゆうことになりましたwwあ、私がここに居るのは『任務』の一環ですよ・・。本来ならヒデトさんが行う、補給施設の設営状況の報告です・・・。」

 美しい顔に、小悪魔的な笑みを加味し出しながら答えるミヨナ。


 「え・・・?状況報告は三日後だった筈では・・?訓練計画を提出した時も、日時に変更は無かった筈だけどな・・・?」

 『イオージマ』で行われる定時報告。その報告は一週間に一度、連絡艇で『イオージマ』に赴き。オメガ04開発最高責任者のチャン・グリュッケン大佐に直接話すものだった。


 「アハ・・w先ほどの『一部の男性陣』の中には、チャン・グリュッケン大佐も入っていまして・・。ヒデトさんよりも、二人の麗しい『美女』が来てくれた方が良いとゆう方向になりました。で、ヒデトさんも訓練があるから・・邪魔をしない様に・・・。との事で・・・ww。」

 小悪魔的な笑みから、魔女の微笑みに変わるミヨナの表情・・・いつからこんな状態になってしまったのだろう・・・?

 生まれたばかりの生体量子思考回路群に、『ヒト』の思考や感情を実地で学ぶために。『生体ユニット』には半年間『パートナー』を宛がうことになっていた。その間に『ヒト』について学び、生体量子思考回路群としての完成度を高めるのだが・・・・。

 ベルミナと接触してから、ミヨナの行動が俗っぽく成って来ているのは何故なのだろう・・・?その背後にチャン・グリュッケン大佐の影がチラついているが原因かもしれない・・。


 「わかったよ・・。もうすぐ中心点だ・・。ここまで『スモウ』をしながら調査もしていたが、変調現象も収まってきているんじゃないか・・・?先程過ぎたマザードローンポッドも正常に稼働して、地走・飛行両方のドローンも正常に稼働していた・・・。データも特に変わりは無いぞ・・?それと、『タウルス』の管制業務はどうなっているんだ?」」

 ミヨナやベルミナ、チャン大佐がどの様な事をしても停止権限などないヒデトは。話題を変える・・とばかりに変調現象の状態を報告していた。


 「そうですか・・・。何にも無くて何よりです。ベルミナさんの人気が凄いので、今帰られちゃうと・・・(チャン大佐と私と『イオージマ』女性クルーの計画が・・・・・。 )

 ああ、『タウルス』は自立制御モード・自己防衛にセットしてあります。ヒデトさんから200m圏内に隠蔽モードで停止しています。『ギガント』から『補給ユニット』と『重兵装ユニット』を連結しておきました。『12式戦闘車』も補給・整備ユニットを付けて、『タウルス』の格納庫に入っています。訓練も兼ねて、試験宜しくお願い致しますwそれと、ミヨナは定期検診の為長期休暇に入ります。2週間ほどですので、重ね重ね宜しくお願い致しますwww」

 魔女から、悪魔の女王にレベルアップしたミヨナが下僕に命じるような態度で連絡を返してきていた。


 おかしい・・・・。あんなに素直だったのに・・・?何があったとゆうのだ・・・?解せぬ・・・?!


 ミヨナの話も終わりそうなので、返事を(やる気のない・・・)返して終了しようとしていた所。ベルミナが慌てた様子で通信コンソールに飛び込んでくる・・。


 美しい銀髪を後ろで纏め上げ、空色のパンプスに、深い蒼いベルボトムのジーンズ。胸元は黒のチューブトップとゆう・・・・いったい誰を悩殺するんだ・・・?といった出で立ちだった・・・。

(事実・・。艦橋に居る男性陣は、軒並み『目がハートww』になっていた・・・)


 「ヒデト殿・・!!直ぐに其処から離れてくれ・・・!!『魔力』が急速に高まって来ている・・!!『異空魔法』かもしれん・・・!」


 ベルミナが言い終わらないうちに、調査機器群から警告音が鳴り響き始めていた。通信コンソールに映る艦橋も、忙しく動き回るクルー達で溢れていた。


 警告音を聞くや否や、『スーツ』の全機能を開放するヒデト。ヒデトの生体パルスを受け取ったパワーユニットがその力を開放し、凄まじい運動力で走り出すヒデト。


 しかし、自らのディスプレイの後方外部映像が。ヒデトの努力を嘲笑うかのように、急速に拡大する変調現象の暗黒を映し出していた・・・・・。




 「E波急速に拡大・・・・!初期変調現象中心点より球形上に展開しています・・!!」


 「変調現象、拡大止まりません・・!!ヒデト二等軍曹、および『タウルス』『ギガント』の反応ロスト・・・・?!」


 「ヒデト二等軍曹との通信切れました・・・?!軌道上からの観測でも半径1000km以内に反応なし・・・?!」


 「変調現象・・収束しつつあり・・。反応消えました・・・・。」


 「変調現象中心点を重点的に探査!!『ガーゴイル』発進準備・・急げ!!ヒデトへのコールは続けろ!観測データを地球連邦本部に電送しろ!!」


 突発的に始まった変調現象は、ベルミナをこの世界に送り込んだ規模とは比較にならないものだった。艦橋で様々な機器を用いてヒデトを探し出そうとする『イオージマ』クルー達。その雰囲気は戦時の時と何ら変わることが無かった。

 

 指示を出すチャン大佐も張りのある声でクルー達を動かしていた。その合間に、通信コンソールをクルーに譲ったミヨナとベルミナを見る。


 ベルミナは両目を閉じ、何かを考え込んでいる様であった。転じて、ミヨナを見れば『生体ユニット』ととは思えない程冷静さを失い、涙を流しながらヒデトの名前を呟いていた・・・・・。その様子を見ながら、ヒデトの捜索を命じるチャン大佐・・・。


 だが、変調現象はヒデトと『タウルス』『ギガント』を巻き込み。その存在を消してしまった後、急速に収束し。まるで何事もなかった様に消えていた・・・・・。



 この事件の二日後、地球連邦・深部探査隊所属・高橋 秀人・二等軍曹のMIA(作戦行動中行方不明)が確定した・・・・・・・・・。



 


 






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