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オッサンが一人・・・!  作者: 顔面要塞
第二章 オッサンの異世界
11/25

対話

長くなりました・・・。なかなか異世界に行けませんで申し訳ありません。でも、次回は『異世界』いきたいなぁ~。

 それと・・・ブックマーク『三人目』ですよ・・・・!?イヤッホウ!!!ありがとうございます・ありがとうございます!!イカセンプクしている場合ではないですな!では、『対話』楽しんでくれるとイイデス!では、また。

 朱い荒野に巨大な構造物が横たわっていた。全長は150m程度、全幅40m。10輪の全環境対応タイヤが、慣性制御サスペンションと全領域対応ヴァリアブル粘性ジャッキによって、全高27mのその巨体を支えていた。

 

 『大型機動装甲輸送車タウルス』・・・。輸送車と呼ぶには、あまりにも大きかった。ほぼ、動く『砦』だった・・・。まぁ、それもそのはずで。『タウルス』の作戦運用目的は『移動する前進拠点』とゆう、何処をどう間違ったらそんなものを運用するんだ?と、言われかねない物だったからである。


 最初に『計画案』を受け取った連邦軍車両局では、あまりの大きさに皆、頭を捻ったとゆう・・・。当然だった、車両局が要求していたのは『地表』のある惑星に於いて、『歩兵』である『空間降下兵』が機動力(勿論、それなりの防護力も必要だったが)を確保できればいいだけの、せいぜい一個小隊が戦場で困らない程度の補給能力を備えたものだったからである。


 だが、設計局が提出してきた計画案は。 旧時代の海洋で縦横無尽に活躍していた『駆逐艦』と同程度の大きさをほこり、その巨体を巨大な10輪の全環境対応タイヤが、慣性制御サスとヴァリアブル粘性ジャッキの補助を受けて、動力である四基の『熱核融合エンジン』の有り余るパワーによって、地表の存在する惑星に於いて、恐るべき機動力を発揮する『モンスター』になっていた。


 単体での運用では、完全編成の空間降下兵一個中隊が一か月の作戦行動が可能な、まさに『砦』と呼ぶにふさわしい物だった。

 さらに、有り余る動力エネルギーが。様々な増加装備を、作戦によって車両ごと連結・牽引することが出来た。その増設装備も、戦闘に特化したものから、災害被災地での救援拠点。挙句には研究機関用の長期研究・探査・調査装備まで網羅していた。


 流石に、車両局では許可を出していい物かどうか迷っていたのだが。設計局が工作部と共謀して『試作段階』まで進めていたことが判明。その予算は、戦線から離れた『退役艦』の処分費用を多めに見積もり。その予算を流用していた。

 ここまで来てしまったら、官僚組織の悪弊か。全部の責任は『そっち持ち』で決着が着き、『タウルス』は完成し、実戦に送られることになるのだが。運用する空間降下兵からの評判と評価は、かなり高かった。

(その代り、タウルスに搭載する一個分隊用の装甲機動車を4車両程搭載しなければならなかったが)



 その巨体の居住区画の一区画。給食区画にて、頭の薄いオッサンと。机を挟んで対峙する、長身の銀髪の美女の会話が繰り広げられていた・・・・・。


 「で、どうでしょうか・・・・?」

 頭の薄い・・・、いや・・・・、寂しいオッサンが、机を挟んで対面している美女に話しかける。他の人に見られたならば、『絶対に間違えている!』と叫ばずにはいられない構図だった。


 「うん・・・・?ああ、出汁・・と、ゆうのか・・?この汁と絶妙に混じり合った鳥の生卵を解き混ぜ合わせた物が固まりきらない半熟程度で、このサクサクした口ごたえを作り出す衣を覆い尽くしていて。口に入れた瞬間に旨みが炸裂する。さらに噛みしめると、それを超えて、豚肉にたどり着き、肉の旨みがたっぷりと口内に染みわたってゆく・・!これほどまでに美味しいモノは初めてだ・・・。」

 オッサンの問いかけに、カツ丼を貪り食らいながら答える美女・・・・・。


 「いや、そうではなくて・・・・・・。」

 銀髪の美女・・・ベルミナ・フォン・ハイデルスンの答えが、自分の想定した返答では無い事に嘆息しつつ、本題に話を戻そうとする、寂しいオッサン・・・いや、髪が寂しい・・オッサン・・。ヒデト。


 「ああ・・・・。すまない・・。この肉の旨みと、出汁で溶き混ぜ合わせた味だけでは少々しつこくなってしまうのだが・・・。玉ねぎの細切り・・?とゆうのか?これがまた絶妙な味わいだ!それに、この白い穀物・・・?!ご飯か・・?これがまた、素晴らしい相性だ!カツの旨み・出汁溶き卵・玉ねぎ・・・それらの旨みを、口の中で混じり合わせる・・・?!もう、言葉もない・・・・。」

 よっぽどカツ丼がお気に召したらしい・・。ヒデトの質問を、全てカツ丼の感想を尋ねていると思っているベルミナ・・・。

 先割れスプーンで、丁寧にカツとご飯を口に運びながら、丼物の醍醐味。程よい硬さのご飯との相性について答えていた・・。


 「ええっと・・・。だからですね・・・?」

 質問の本筋が微妙にズレてきていることを感じながらも、根気よくベルミナに尋ねるヒデト。


 「そうか・・・!『味噌汁』の事を忘れていたな・・!味噌とゆう調味料を使った素晴らしいスープ・。ちょっとした塩気を感じるが、舌をそこまで刺激しない絶妙な味わい・・。海草と『豆腐』とゆうのか?この具材もまた素晴らしい・・・。カツ丼を食べてる合間に味わうと・・さらに食欲が増す!なんとも喋る時間すら惜しい!」


 「その件は・・その、置いておいてですねぇ・・・・。」

 ベルミナが『カツ丼』を食べ始めてから、何度目になるかも分からない質問を繰り返すヒデト・・その表情は諦観の念を現わしていた・・・・。


 「おっと、この『漬物』も忘れていた・・・・!それに、食の合間に口内と咽喉を潤す『お茶』の事も。これら二つも『カツ丼』には重要だな・・・!特に、『お茶』だ!わが国でも『茶』はあるが・・・、雑味が多くてな・・。それに渋みも強すぎる・・。それに比べて、この『お茶』は『カツ丼』の旨みを邪魔せずに、清涼感をもたらしてくれる・・。程よい苦みも、その奥底に隠された甘味を引き出している!」

 もう、禿げたオッサンの事など忘れているに違いないベルミナ・フォン・ハイデルスン。まぁ、大体の人が『旨い物』に出会ったらこのような事態に陥るであろう・・。


 それが分かっていたから、ヒデトも待っていたのだが・・・・。ベルミナ・フォン・ハイデルスンの前には、既に5杯目の『カツ丼』が中身をカラにしていた・・・・。6杯目で・・(今現在、残り2割程度だが・。)

 そこに至って初めてヒデトの問いかけに答えてくれるようになっていた・・・。

 6杯目に残っていた、最後の二割をたやすく平らげそうだったため。湯呑に『お茶』を注いでやるヒデト。


 「いや、ありがとう。最後に『お茶』は素晴らしいな・・!」

 六杯目を食べ終えて、ヒデトの注いでくれた『お茶』の入った湯呑に手を伸ばし、ゆっくりと飲み干してゆく・・・・。


 そして、湯呑を置き。美しく透き通った声で呟く。

 「この身を作り出している、全ての食べ物に感謝を・・。」そう発しながら、豊かに隆起した美しい胸の前で両腕を交差し、『カツ丼』に一礼していた。



 ベルミナ・フォン・ハイデルスン。ヒデトに対してそう名乗った存在『クィーン1』


 地球連邦がヒデト二等軍曹に命じた『友好親善』は、対象であるベルミナ・フォン・ハイデルスンが『空腹』だったため、食事の提供による『友好醸成』に切り替えられた。

 まぁ、辺境星系の。まだ開発すら終わっていない星で起きた出来事(いくら変調現象とはいえ)も手伝って地球連邦本部では、あまり真剣に取り合っていなかった。

 大体、エルフィリア皇国との同盟関係を維持しながらエルフィリア皇国と敵対している諸勢力とも向き合わなければならなくなった地球連邦に、『異世界』とか『ファンタジー』とかの文字に対応している暇などなかった。

 確かに、変調現象が起きて。その空間から異形の者が現れる・・!とゆう状況は対応しなければならない事であったが。

 単体で『現世界』に顕われただけで、しかも、『空腹』の状態で、且つ、友好的な態度を維持している存在を。如何こうする気は無かった。(たとえ、それが駆逐艦級のE波を単体で出せる存在だとしても)

 簡単な話、脅威を感じる存在になるならば。接触している人員・機材ごと軌道上からの艦砲射撃で消滅させてしまえばいい事柄でしかなかった。

(勿論、任務に就いているヒデト二等軍曹は了承済みだった。まぁ、気分はあまり良いモノではなかったが)



 カツ丼の六杯目を制覇したことで、ひと段落したのだろう。『お茶』を啜りながらヒデトの方に顔を向けるベルミナ・フォン・ハイデルスン。

 「ああ・・・・!至福の時だった・・・・。『異世界』にこのような『食』があるとは・・。帰還が叶ったならば、是非にでも持ち帰りたいものだ・・・・・・。」


 満ち足りた表情のベルミナを、和やかな目線で見るヒデト。自らも幼少期に『食』に困り、空腹で過ごした事を思い出していた・・・。

 あの頃はアジア全域で紛争中で。その余波で、住んでいた東京近郊も被害を受け。安全が確認されるまでは『救援物資』も届かなかった・・・。

 生き残った者同士、肩を寄せ合いながら『救援』を待っていたが。助け合うことを忘れた者達から自分達を守るのに必死だった・・・。

 『ヒデ兄ちゃん・・・・・。お腹が空いたよ・・・・・。お母ちゃんとお父ちゃん・・・元気かな・・?じ~じとば~ばも一緒に居るといいなぁ~・・・・・。あ~あ・・。お腹すいたなぁ~・・・・。』

 そう呟きながら、自分の背中で徐々に声が小さくなってゆく近所の幼い女の子・・・・。


 あの頃の自分にもっと『力』があれば・・・・!あの子にあんな思いをさせずに済んで・・・!みんなで一緒に『美味しいね、ご飯・・!』といわせてあげれたのだ・・!『力』があれば・・・・!


 過去の思いに囚われていたヒデトに声が掛けられる。

 「ヒデト殿・・・?聞いているのか・・・?ヒデト殿・・・・。」

 食事の感想を一とうり述べたベルミナが、考え事に浸っていたヒデトの様子を伺っていた。


 「え・・?ああ、申し訳ありません・・。カツ丼に、そこまで感激していただけるとは・・・。どうやら、先程分けて頂いた血液の検査結果は間違えていないようでしたね・・。私達と若干の差異はあれど、基本構成は同じ・・・。味覚も・・程度の差はあれ、問題なさそうです・・。」

 過去の思い出を振り払いながら、食事の前に一とうりの生理検査を受けてもらっていた。その検査結果に間違いはない様だ。

 

 「ああ、先ほどのヒデト殿の申し出か・・・?まぁ、説明をじっくりしてもらったし。それに何より、お腹が空いていたから・・・。だが、血を調べたいとゆわれた時は驚いたぞ・・!我々、魔族の間では『血を分ける』行為は婚姻の為の儀式なのだから・・・。初めは、『異世界』でいきなり求婚されるとは思っても見なかったからな・・・。」


 どうやら、ベルミナにとって『空腹』の状態は、かなりの緊急状態らしい・・・。ファースト・コンタクト時のベルミナの状態は・・・勇者や真龍・・・・。いや、ベルミナに対する敵性勢力との戦闘で、ほぼすべての衣服が損壊していた。

 本人は、そのことを意識していなかった為。あえて、尋ねていないが・・。『異世界』の人間に対して『恥じらい』など抱かないのだろう。私だって、『動物』に裸を見られても動揺などしないしな・・。

 だいたい、三十路のオッサンが『裸』って・・・。考え自体が恥ずかしいわ・・・!


 「ベルミナ殿の健康状態を、いち早く知り。適切な処置を講ずるためでした・・。いささか、無理な事柄があったことを謝罪致します。」


 「いやいや・・。そのような事は気にせんでくれ。私だって、いきなり目の前に『異世界』の住人が現れたら警戒ぐらいする・・。それに、どのような『病魔』を持っているか分からんしな・・。当然の処置だと思うよ・・。」

 ヒデトの謝罪を受け入れ、理解を示すベルミナ。


 「ありがとうございます。ベルミナ殿。では、ひと段落着いたようですし。先程尋ねた案件について詳しくお聞きしても宜しいでしょうか・・?ああ、お疲れの様なら後に致しますが?」

 カツ丼を二杯平らげたところで、落ち着いた雰囲気になった様に見えたから、詳しい話を聞こうとしていたのだが・・・。結果は6杯になっていた。


 「うん?ああ、先ほどの、私の身の上話だな・・・。何も面白い話などないのだが・・・・」


 「いえ、お互いに知らない事が多いですから。ベルミナ殿も質問があれば聞いてください。聞かれてばかりだと退屈でしょうから・・。そうだ。食や気候はどうですか・・?」

 まずは身近な話から信頼関係を結んでゆこうと、ベルミナが興味を持つであろう事柄から聞いてゆくヒデト。だが、『女性』相手の経験が絶望的に低いヒデト・・・。どの様な事を話していいのかさっぱりだった。

 クソ・・・!こんなことは情報部の担当だろうに・・!血液検査や『タウルス』に入るときに受けてもらった精密検査で、こちらに影響のあるウイルスや細菌は確認されなかった。

 『イオージマ』に居る、深部探査隊研究班が降りてきてもいいはずなんだがなぁ・・?何故、オイラだけ貧乏くじなんだ・・?

 しかも、『女性』ばかり・・・。いや、別に女性が『嫌』なんじゃない・・・。『苦手』なんだ・・。そりゃ、『性欲』を抱くし『いいなぁ~』なんて考えたりするが・・・。

 なして、『異世界』の方なのか・・・・?


 そんなくだらない事を考えているヒデトに、ベルミナから答えが返ってくる。


 「わかった、そんなに食料生産に興味を持つ魔族は少ないのでな・・。私が珍しい部類だろう・・。気候などは、温暖な天気が多いな・・。他国に比べれば雨が多いか・・。総じて過ごしやすい。風土などは緑に覆われたカウド大森林や、5000メノを超える巨大な龍鳳山脈などがあり。我らの首都『ドランガーナ』はそのほとりの『黒龍の湖』中心にある島に、城郭都市として威容を誇っている・・・・。」

 

 成るほど、フムフムなど適度に相槌を打つヒデト。勿論、給食区画に設置されたカメラが、その情報をダイレクトに『イオージマ』や連邦本部の解析室に送っていた。

 

 「うん・・。ちょっと話過ぎたな・・。咽喉が渇いたのだが・・。」

 ベルミナから気候や、風土・政治形態・経済・通貨・民族の構成・公用語など・・多岐にわたって聞いていたヒデト。

 情報が多かったため、こちらも地球連邦の同様の情報を包み隠さずベルミナに伝えていた。確かに、長く話過ぎたせいで。ヒデトの肉体も咽喉の渇きを訴えていた・・。


 「そうですね・・。何かお飲み物を用意いたしましょう。」

 喋りながら、机に浮かんだホロジェクターに飲み物や、デザートなどの画像メニューを呼び出す。


 「どうしました・・?」

 見れば、ベルミナがメニュー表の一部分を凝視していた・・。


 「いや・・・、このプリン・あ・ら・もーど・・か・?それに、チョコレートパフェ・・しょーとけーきなどの絵から目が離せないのだ・・・。食べたこともないのに・・本能が要求してくる・・」

 恐ろしい程の目つきでメニュー表と睨めっこしているベルミナ・・・。時折チラッとこちらに、子供の様に催促の視線を送ってくる・・・・。


 「あの・・・・。食べれるなら、全部注文しても大丈夫ですよ・・・食べれるな・・・・」


 「いいのか!!!それでは、ここから、ここまで・・・ぜ~~~んぶお願いする・・・!!!」


 ヒデトが言い終わらないうちに、喜びを爆発させながらデザートのメニュー全てを頼むベルミナ・・。


 やれやれ・・。この状態から抜け出すにはベルミナの胃袋が破裂するまで続くんじゃないのか・・?ヒデトが諦めたように呟く言葉は、ベルミナの黄色い歓声にかき消されるのであった・・・。




 「どんな感じに纏まりましたか・・?ベルミナへの対応・・。」

 デザートの山と格闘しているベルミナをそっとしておいて、『タウルス』の司令塔の指揮コンソールに映し出されているチャン・グリュッケン大佐に尋ねるヒデト。

 上官に対して、何とも不遜な口の利き方だった。階級はそのままなのだが、深部探査隊は研究・調査機関だったために。そこまで厳密な上下関係は求められなかった。

 加えて、幼馴染みのダイスケ少将とチャン大佐は士官学校の同期で。ヒデトとも付き合いが深かった。世間一般の『イロイロ』な事を教えてくれたのもチャン大佐だった。


 「ああ・・・。深部探査隊の予算内で対応しろとのお達しだ・・。要するに、適当に誤魔化しておけ。ちゅう意味だな・・。まぁ、当然か。いくら人外といってもE波以外は普通だしな。食は凄まじいが・・。異世界の存在は論理的に確認されている。お前も聞いたことがあるだろう?並行世界の存在・・?」

 近所の知り合いの旦那が不倫しているのを見たかのような、どうでもいい口ぶりで答えるチャン大佐。


 「ええ、生体量子思考回路群の規模が大きくなるにつれて。人類では知覚できない感覚を持つようになり次元を超えて、並行世界を発見したことですよね・・。まぁ、あくまで知覚しただけであって、観測は出来ていないようですが・・。」


 「そうだ。我々の使用している『超時空間ジャンプ航法』は、われわれの存在している時空間より『高位』の次元に『跳び上がり』その高位次元を航行した後、通常空間に戻る技法だ。惑星上の飛行機と同じだな。その次元が、どうやら我々の時空を取り巻くように存在しいるらしい・・。」

 喋っているうちに眠たくなってきたのか、だんだんとチャン大佐の瞼が下がってくる・・・。


 「で、ベルミナが飛ばされてきた並行世界もそのうちの一つ・・。とゆう訳ですか?」


 「学者共は、そう結論した様だ。まぁ、事実を確認する為には『アッチの世界』に行かなければならないが・・・。」

 自分の説明していることに、嫌気がさしてきたらしい・・。さらに、ヒデトの方を向いていた顔まで明後日の方を向いている・・。


 「彼女の処遇はどうするんです?このまま放り出すわけにも行かないでしょう?」

 ま、チャン大佐の反応も当然だよな。俺だって、あの立場だったら同じようになるだろう。だが、行く宛ても無く、一人ぼっちの『人間』をあのままにはしておけない。

 チャン大佐を咎めるように、語尾に力おこめていた・・・。


 「そのとうりだ。今、外交商務省と内務省が協議している。一応、保護を求めてきた難民の身分になる。本人が望めば、連邦の市民権が発行される。その後は・・・。まぁ、本人次第だが・・。」

 

 連邦市民の身分を得られたならば、『生活に困らない程度』の生活費が援助される。勿論、個人で持つ住宅も手にできる(3LDKの立派なもの。連邦では『人』が何よりも重視される)

 その間に、本人の意思と資質に沿って『就業』の相談や教育が行われる。最終的には自立した連邦市民となってゆく。


 「今のところは、そこまでは考えていないみたいです。帰還の為の『魔術』・・・・。いえ、技術も自分で開発した訳では無いみたいですので・・・。」

 自分自身の発言に、『危ない!』語句が入っていたのを瞬時に訂正し答える。


 「そのようだな・・・。しかし、あれだけ食べて『腹』が膨れないとは・・・。羨ましい・・・。そうだ、あそこまでの『異形の美女』ならば、芸能デビューもあるかもな・・!それに、あの食いっぷり・・惚れ惚れする・・。『食』の番組のリポーター・・うん!絶対いける!!」

 

 自らの考えに余程自信があるらしい・・・。確かに、あの容姿に『食』に対するこだわり。悪くないアイデアだと思うが・・・。

 そういえば、チャン大佐の御実家は。連邦でも有数の芸能プロダクションだったな。まさか、軍を退役して自分で売り込もうとしているんじゃないだろうな?


 「いやいや・・まだ早いか・・。それに、変調現象も収束していないしな。彼女の言葉が本当なら、その『異空魔法』とやらも未完成品で、安定しないらしいしな。まだ、何があるか分からん。ああ、『ガーゴイル』も新編成で偵察させてる。それと、『コウノトリ』に『ガーゴイル』の装備一式を載せて送っておいた。他に新型の戦闘車のテストも頼む。『ギガント』なら乗るだろう。そっちで面倒見てくれ。」

 芸能の話に行きそうになっていた所を、強引に引き戻し。変調現象の話に持って行っていた。


 「了解いたしました。でも、正直人手が足りません。せめて整備関係に強い奴と、研究・生産に強い者がいないと・・・。それと・・ですねぇ・・・・。女性の下着を何種類かお願いしたいのですが・・?」

 恥ずかしさを押し隠しながら、三十路のオッサンが頼むモノ・・・・。状況が許しているが、普段ならとてもじゃないが口に出せない。


 「それも、ウチの女性クルー達が作成したものを送っておいた・・・・。ベルミナの身体データを見て、皆呆れかえっていたがな・・。オレか?見てない・・・見てないぞ・!」

 妖しさ抜群、ウロタエ度マックスな反応が返って来ていた・・・・・。



 『ガーゴイル』を受領し、新型の戦闘車両『12式戦闘車』の実験訓練を行いつつ、ベルミナとの情報交換を行う毎日・・。

 ローテーションされた仕事をこなしていると、どうしても生来の不真面目さが覗いてくる・・。ミヨナやサクヤから頼まれている基地建設・開発・生産・農業試験・バイオプラントも稼働させようとしているのだが、規模が小さくなったといえ、変調現象が続いている影響も無視できず。『ギガント』に載せたままになっていた。(毎日、定期的に装備・機器のチェックを行っていたが)


 『タウルス』司令塔の外部ハッチの上で、惑星地球化技術によって大気成分は地球と同じようになっているオメガ04の朱い荒野に沈もうとしている第三恒星系の二重太陽を見ながら、座り込み少し呆けているヒデト。


 任務中なので『スーツ』を外していない。ミヨナが持たしてくれた『100式大型狙撃銃』と近接専用装備の『武士』を専用のメンテナンス装備(索敵・侵入用大型バックパックに入っている)を使って手入れをしていた。


 「どうしたのだヒデト殿・・・?何か考え事かな・・・・?」

 気の抜けた風に見えたのか、ベルミナが地球連邦航宙軍の女性士官制服で佇んでいた・・。


 「これは・・・・。ベルミナ殿・・。どうですか・・?こちらの習慣に慣れたようですね。」


 「うん・・・。頂いている衣食住・・・、全てが予想を大きく上回っている・・・。素晴らしいの一言だ・・・。まぁ、この星・・?の風景は味気ないがな・・・・。」

 纏っている制服を誇らしげに見せながら、沈みゆく太陽光を受けて立つ姿は、古代の女神像を思わせた・・・・。


 「『イオージマ』の女性クルー達も、その言葉を聞いたら喜ぶでしょう。何せ、特注ですからね。」


 「そうなのか・・?確かに、我が身は『人』に比べると特異な箇所があるからな・・・。」

 ちょっと恥ずかし気に身を捻りながら、ヒデトに見せつける様に背中にある美しい翼を広げ。腰と臀部の間から、艶のある尻尾をくねらせていた・・・。


 「まぁ、『人』それぞれですから・・・。それに、評判がいいですよ。ウチの上司なんか『市民権を取ったならば私がプロデュースする!』と息巻いていましたから・・・。」

 航宙軍制服から、妖しくも美しいモノが生え出でている背徳的な雰囲気に耐えられずに、目線を朱い荒野に向けるヒデト。


 「『人』か・・・・・。元の世界ではこのように振る舞うとは思いもしなかったぞ?それに、この『星』が天空の遥か先に『無限』に広がっているのだろう・・・?とてつもない話だ・・。」


 「『連邦市民』の件・・・。まだ、悩んでおられるのですか・・?」

 憂いに染まったベルミナの美しい声に反応しながら、尋ねる。


 「そうだな・・・。申し出は有り難いのだが・・・な・・。やはり、自分の世界に帰りたいな・・。だが、服と食は持ち帰りたい・・・。いや、すまない・・詮無い事だな・・忘れてくれ・・。」

 美しくも哀しい笑みを浮かべながら、視線を沈む太陽に向けながら思いを零していた・・。


 「なんか、イイ雰囲気を醸し出している様ですが・・・?ヒデトさんは・・『私』のモノですから・・・!!!ベルミナさんと出会う前からの、なが~い、なが~い付き合いですので・・!」

 哀しみに染まりそうな雰囲気を、軽く異次元まで跳ばす口調でミヨナが通信回線で割り込んでくる・・。しかも、強制侵入で自らの映像もホロジェクターに映し出していた・・・。


 「ヒデトさんも忘れないで下さいね!今回の任務はあくまでも『臨時』ですからね!ヒデトさんの正規の『任務』は、私と一緒に補給廠を管理する事ですから・・・!!分かっていますね・・!!!」

 ホロジェクターに映し出されているミヨナは。少女漫画宜しく。美しい顔に青筋を浮かべ、なおかつ可愛らしい仕草で頬を膨らませ怒りと嫉妬を滲ませていた。っか、今時『頬を膨らます』って・・・・・・。どうなん・・?


 「あ~~~・・。ミヨナ・・。俺、ミヨナの『モノ』になった覚えがないんですけ・・・・」

 

 「ヒデトさんは黙っていてください!!これは、ベルミナさんと私の話ですから・・・!!」

 冷静にツッコミを入れようとした所・・。見事なカウンターを決められてしまう。そんな二人のやり取りを口に手を当てて笑うベルミナ。


 「そうか・・・・?!ミヨナ殿にはそう見えるのか・・・。では、その期待に応えるとしようか・・。」

 そう言って、笑いを噛み殺しながらベルミナは座り込んでいるヒデトの横に並び、美しい両手を広げ抱き寄せようとする。


 「あぁぁあぁーーーーー!!!ダメです!!其処は私の場所なんですからーーーーー!!!」

 

 夜の帳が降り始めたオメガ04に、ミヨナの絶叫が響き渡っていた・・・・・・・・・・・。








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