世界の指示には従わない!
勢いで書きました。連載開始しました。
今から10年前、ある預言者が言いました。
『明日、この国の一番東にある村を焼き尽くさねばこの国に絶対的不幸が訪れるだろう。』
と。当たるか当たらないかもわからない預言、しかし国王はその預言を信じ、最東端の村を焼き尽くしました。
その村で生き残ったのは一人の少女、白銀の髪と濃い黒にも見える紫の目を持った少女。
7歳の少女は嘆きました。
「王でもない…預言者でもない…、私の親を、私の家族を殺したのはこの世界だ!!」
と。
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10年前、私は地獄をこの目で見た。
私の住んでいた村は田舎だったけれども、みんな優しく穏やかな日々が過ぎていた。
そんなある日、ある預言者が言った。
『明日、この国の一番東にある村を焼き尽くさねばこの国に絶対的不幸が訪れるだろう。』
と。その預言者は偉大だった。予言は6割は当たり、国の危機を何度も予言していた。国王もそれを信じた。
次の日、私が見たのは親の死体だった。隣の家の家族の死体だった。いつも遊んでいた友達の死体だった。そして、それを焼き尽くそうとする赤赤とした炎だった…。
昨日まで友達と遊んだ公園も、パンを買いに行くと少しオマケしてくれるパン屋も、すべて無くなっていた。そこにあるのは炎だけ。
夢だと信じて目を閉じても、まぶた越しにわかる明るさのせいで、これは夢じゃないと現実が突きつけてくる。
不思議だった。
『なぜ預言者はこんな預言をしたのか』でも『なぜ国王はこの預言を信じたのか』でも『なぜこの村が選ばれたのか』でもなく、
『なぜ私一人が生きているの?』
ということだけがただただ不思議だった。
預言者の言葉、国王の命令、死んだ村の住民、一人生き残った少女、
この事が私の頭の中を満たした時、激痛が走った。
まるで別の人間の記憶が頭の中に入ってくるような痛み。頭をかち割るような痛みはすぐには引いてくれなかった。
死ぬかもしれないとわかったときは、みんなと同じ所に行けるかもしれないと思うと気持ちが楽になった。やっとこの現実から逃げられると思うとこの痛みを感謝したいくらいだった。
しかし、頭の痛みはピークを過ぎる急速に引いてゆく。
期待を裏切った痛みが残していったのは、望んでもいない置土産だった。
そこに残るのはある記憶。こことは全く別の世界、機械の馬車が走っていて、薄い板の中にたくさんの文字や人が写っていたりする信じられない世界。
そんな世界で目にしたのは、大きな板のような箱のようなものを前に暗い部屋の中ひたすら手元にある操縦機のようなものを操る少女。
箱の表面には人が写っていたり、夜景が写ったりと様々な模様の絵が切り替わるように写っていた。
記憶の中の少女は言った
『もぉ!なんでこんなにこいつは邪魔してくるかなぁ!!!』
と。そういって苛立っている彼女が睨むのは箱に写った一人の女性だった。
白銀の髪に、濃く黒にも見える紫の目をもった女性。
村でも一人しかいなかったこの色彩とおなじ色彩をした女性だった。
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何時間がたっただろう。目の前の少女は疲れきったように、しかし、満足したように言った。
『よっしゃ!これでぜんくりキター!!!』
と。それと同時にその記憶の中から私ははじき出される。
目を開くとそこにはかすかに燃え続ける炎と、焦げて黒くなった建物の残骸だけが写った。
まだ少し痛む頭を抑えてさっきの記憶を整理する。
さっきの少女の言葉を借りると、
ここは『乙女ゲーム』と同じ世界で、私は全ルートに現れる『ライバル役』だという。
『ライバル役』は幼い頃に村を焼かれ天涯孤独の身になった女性だ。
そして、『攻略対象』の6人の『ルート』を進めていくたびに性格を変えて出てくる存在だ。
『王子』のルートだと天涯孤独でさまよっていたところを偶然拾ってもらい有能の召使として現れ。
『騎士』のルートだと今度は大切な人を殺させはしないと女性ながらに昇格した女性騎士として現れ。
『賢者』のルートだともう国に、住んでいた村と同じような村を作らせないと頭脳派エリートとして現れ。
『神官』のルートだと争いを無くしたいという願いを掲げ多くの人に愛される巫女として現れ。
『国王』のルートだと国に復讐するために国王の愛人として国王の命を狙う刺客として現れ。
『預言者』のルートだと自分の村を焼きつくした償いとして有りもしない預言を言うように脅す女性として現れる。
その時の私が感じたのは世界の理不尽さでもライバル役としての存在でもなく
私の家族たちが死んだのは誰か一人の『ヒロイン』の恋愛なんていうくだらないものを進めるためだということに対する怒りただけだった。
私は怒りのあまり叫んだ
「王でもない…預言者でもない…、私の親を、私の家族を殺したのはこの世界だ!!」
と。
現状が理解できてからは早かった。
私の中に残ったのは復讐の怒りだけだった。
誰が悪いわけでもない。ただこの世界が悪い。
そうわかると私は世界に復讐することを決めた。
といっても、世界に復讐なんてどうすればいいのかもわからない。
だから私はまずこのシナリオを壊すことに決めた。
中途半端ですみません。
つづくかもです。