疑問は増える
どれだけ叫んでも、私の心には気付かない。
「気付いて!私はヒトゴロシじゃない!」
私は壊す。けれどそれは、故意じゃないのよ。
アイリーンはまだ気付いていないけど、いつか気付いてくれるよね?
だって、貴女は私、私は貴女なんだから。
知らないから私をワルモノにするけど、本物のワルモノは…………貴女よ、アイリーン。
私はここにいていいの?
ううん、よくない。
でも、アルフとユーリなら、大丈夫かもしれない。
ううん、それは私の思い過ごし。
もう一度。もう一度だけ、賭けてみたい。
それで終わりにするからさ。
「私、ここにいていいんですか?」
「「もちろん」」
2人の声が重なった。
その顔はあまりにも真剣で。
「ふふっ」
私はおもわず笑ってしまった。
「うん、アイリちゃんは笑ってるほうが可愛いよぉ」
そんなことを言われたのは初めて。
だって私は、恋愛経験なんてないから。
“気付いて、アイリーン”
「!?」
声がした。
私の内側から聞こえる声。
誰の?
でもすぐ分かる。私の内側から話しかけられる人は、1人しかいない。
「マリア」
ユーリやアルフに聞こえないように、彼女の名を呼んだ。
でもそれっきり、何も聞こえない。
貴女は何を気付いて欲しいの?
「どうしたのぉ?アイリちゃーん」
ユーリは私の顔を覗き込む。
「な、なんでもないです」
ならいいけど、とユーリは笑った。
「問題はそのマリアだな…」
アルフはなにやら考え込んでいる。
「え?」
「マリアをどうにかすれば、アイリーンは殺さなくて済む。まず、何故マリアが人を殺すか、だが……」
私の為に考えているのだ、と思い至る。
「私、マリアに話しかけてみます」
さっきはマリアから話しかけてきた。
という事は、私からだって話せるかも。
マリアと話したのは、さっきが初めて。淋しそうな声だった。
ねえ、マリア。貴女はどうして幸せを壊すの?
私はマリアに問い掛けた。
でもマリアは、
“お願い、気付いて”
としか言わない。
私はアルフに、黙って首を振った。
「気付いて、としかいいません。何を気付いて欲しいのでしょう?」
さっぱり分からない。
「俺はさ、マリアちゃんが故意でやってると思えないんだぁ」
ユーリの発言に私は、故意じゃない?と首を傾げた。
なら何故、マリアは壊す?
私の意思、なんて馬鹿げたことを言うんじゃないよね?
「何らかの理由があるんじゃないかってこと。その様子じゃ、心当たりは無さそうだね」
理由。マリアが殺人を犯す理由。
ね、マリア。貴女は何を気付いて欲しいの?
そんなの、分かり切ってる。
マリアは、壊す理由を気付いて欲しいのだ。
私と私が別の意思を持っていようと、同じ私。
だから私は、貴女を救いたい。
私は貴女、貴女は私なんだから。
何故、貴女は壊すの?
“なら何故、貴女は治すの?”