表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壊す少女と治す少女  作者: 破壊創造
2/7

幸せを壊したくない

アルフに連れて来られたのは、小さな一軒家だった。

「あの、ここは……?」

恐る恐る、中に入る。

「俺の家。救急箱は─────っと、あった」

棚の上から、アルフは救急箱を取ってきた。

それから、私を座らせる。

「怪我、見せて」

私は服を軽く持ち上げ、負傷した脇腹を露出させた。赤黒い痣になっている。

「痛む?」

私の顔色をうかがいながら、問われる。

「はい」

正直に答える。

「鎮痛剤、射つから。少し我慢して」

アルフは、救急箱から透明の液体が入った注射器を取り出す。

鎮痛剤が注射されれば、少し痛みは楽になった。

その後、ちゃんと治療してくれた。

「あくまで応急処置だから」

他の怪我も治療してもらい、礼を言う。

「にしても、何故あんなところに居たんだ?家は?」

アルフが、救急箱を片付けて問う。

「家はありません。私、この辺初めてきたので、何処に何があるのか分からなくて」

全てを見透かすアイスブルーの瞳から避けて、俯く。

「何処かに行くのか?」

「いえ、ただ彷徨っているだけです」

何度も何度も幸せを積み上げ、何度も何度もそれを壊していく。

壊したく、ないから。

私は幸せを築くことなく彷徨う。

「なら、ここに住む…か?」

壊すことに怯えている。

だから、私は首を横に振る。

幸せを拒否して。

「そう、か」

その声は、少し残念そうだった。

罪悪感で胸がいっぱいになる。

「ごめん…なさい」

涙が、零れそうになる。

「アイリーンは悪くない。謝るな」

「でもっ!」

顔を上げて反論しようとする私の唇に、アルフは人差し指を当てた。

遂に、涙が頬を伝う。

「訳あり、なんだろ?」

彼は、私の唇から指を離す。

「その訳が、涙を流す程のものなら俺に教えてくれないか?どうもお前は、何かに怯えてるようだ。一体何に怯えてる?」

私は黙秘権を行使し、黙り込む。

教えてはいけないような気がした。

どれ位経っただろうか。

沈黙を破ったのは、アルフだった。

「教えたくないなら、それでいい。だが、少しの間、ここに泊まることは出来ないか?」

その優しさが、辛い。

壊してしまいそうで、怖い。

でも、私は。

この人なら大丈夫かもしれない、と思った。

何の根拠も無いけれど、アルフを信じてみたい。

「少しだけなら」

この人となら、幸せを掴めるかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ